全人 ZENJIN 2018特別号
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08│全人特別号岡田 AIBot研究センターへようこそいらっしゃいました。村田 私は文学部生だったので、当時は理系の学部との交流はほとんどありませんでした。数学の授業を受けるために短い休憩時間を使って、工学部校舎までの坂道を必死に走ったことや、農学部で飼っている牛がどこにいるのだろうと、キャンパスの奥まで友人と探しに行ったことは思い出に残っています(笑)。ここは普通の家のリビングのようですが、センターでは具体的にどのような研究をしているのですか。岡田 私はこれまで玉川大学の脳科学研究所で、赤ちゃんを対象に人間の知能が発達するメカニズムの解明の研究と、その成果を応用して、さまざまな状況を推し量ってコミュニケーションできる人工知能(AI)を搭載したロボット開発に取り組んできました。それを発展させて、他大学にはない、玉川大学の独自性を打ち出した、AIとロボットと脳科学を融合した分野の研究を進める拠点として開設しました。そのため、当センターでは、ヒトと生活するロボットの開発をテーマにした研究を行っているんですよ。村田 幼い頃、『ドラえもん』のような「友だち」をイメージするロボットができると信じていましたが、今では、「友だち」は「妄想」かなと思うこともあります。岡田 AIに仕事を奪われるとか、技術が人間を追い越すかのような面ばかり強調されていますからね。AIの研究方法として、ロボットを作って知能を探る方法、数式から解く方法などありますが、玉川大学では赤ちゃんの発達から探っています。赤ちゃんが話せるようになる仕組みを解明し、ロボットでの再現を目指しています。村田 『コンビニ人間』の主人公は他人の服装からブランドを選び、30代の女性っぽい服装をしています。AI的だという批評がありました。岡田 私も読後に、『主人公はAI搭載のロボットだ!』と思いましたよ。AIは周りを観察して、周囲から浮き上がらず、存在が破綻しないように行動しますが、人間は自分で考えて行動していますね。村田 でも、人間にもAI的な部分があります。たとえば、お葬式でマナーを忘れたけれど、周りの人の動作を真似て何とかなる。そういうことはとても多くて、周りを見て合わせているAI的な瞬間がたくさんあると、改めて思いました。岡田 AIの研究でも、『周囲の状況を推し量ってコミュニケーションする』レベルを高めていけば、いつかは人間の知能にたどり着くと考えています。体を持ったAI(=頭)がロボットならば、私たちの研究では体と頭はセットで考え、ヒトとの共生をテーマにしたロボット開発が目標です。村田さんが『ドラえもん』ならば、私は『アトム』ですね(笑)。村田 先ほど、岡田先生と学生さんたちが開発したロボットが、家具の扉を開けたり、床に落ちた紙を拾ったりする実演を見せていただきました。ロボットの動作を見ると、スムーズで人を助け、社会に貢献できること玉川大学が目指す最先端のロボット研究村田沙耶香さんと岡田教授の対談が掲載されました。人工知能搭載ロボットを通して学ぶ未来を拓く力、考える力ロボットとAIが創る未来の社会2018年4月号 掲載

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