全人 ZENJIN 2018特別号
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全人特別号│09とても繊細な動きなので驚きました。岡田 近い将来、一般家庭にもロボットがやってくると考えています。たとえばお年寄りにとって床の物を持ち上げたり、拾う行為はひと苦労。ロボットに任せた方がいい。毎年日本や世界各国でロボット技術の育成を目的とした『ロボカップ』が開催されており、玉川大学からも教育・研究の一環として私たちのチームが出場しています。先ほどの実演のように、家庭での生活支援を競う『@ホームリーグ』で、2008年と2010年に優勝、2016年はイノベーションアワード受賞、昨年度は準優勝しました。村田 すばらしい成績ですね!岡田 片付けや掃除、洗濯はヒトがやりたくないことなので、洗濯機やお掃除ロボットが開発されてきました。「やりたくない」とか「汚い」ことは、ロボット研究のモチベーションになるんです。一方、最近は「会話」をメインにして、いるだけで楽しくなるような「コミュニケーション・ロボット」が注目され、家庭で導入している方も増えています。村田 小さい頃にSF作家・星新一さんの小説を愛読していました。短編小説『オフィスの妖精』では、コンピューターが甘い声で秘書のように仕事を手伝ってくれ、主人公がそのコンピューターに恋してしまいます。小さい頃は本当にそうなるのだと思っていました(笑)。岡田 それは、ちょっと無理ですが……(笑)。私たちは家庭でヒトを助け、ヒトと共生する、理想的な形をつねに追い求めています。そこで、人間の優れた学習能力を応用したディープラーニング(深層学習)で、ロボットが自ら考えてプログラムを変更しながら動いたり会話したりと、より人間に近い思考力を持つAIを開発したいです。村田 文学部の卒業生として、理系の最先端研究が同じキャンパスで行われているのは興味深い。お互いに何をやっているのかなと、興味を持てる、刺激し合える環境だと思います。岡田 これからは、理系や文系といった分野を越えて、AIを使いこなせる人が出てくるでしょう。本学は文系と理系がワンキャンパスで学ぶ利点を活かし、AIを使いこなせる人材を育成していきたいと考えています。村田 昨年の訪問では、大学教育棟 2014の充実した図書館や自動書庫の動きに驚かされましたが、今回は農学や工学の最先端技術を間近で見ることができて興味深かったし、生活に密着していることだけに、未来がどんな風に変わっていくんだろうと創造力をかきたてられました。AIがどのように発達していくか楽しみですね。岡田 研究がどこまで進んだか、また見学にいらしてください。玉川の丘でお待ちしています。撮影:末永裕樹(文藝春秋)■ Special Talk│未来に向けて――❷

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