『全人』2018年12月号 No.833より
2018年12月号 No.833
創立者小原國芳は「実に教育の根本は労作にあり」「真の知育は(中略)、苦しみ、作り、体験し、試み、考え、行なうことによってこそ得られるのです」などと語り、労作教育の重要性を熱心にとなえました。創立89年を迎えた今もなお「労作」は玉川学園の伝統のひとつです。幼稚部から12年生までが取り組む労作の実践を特集します。「研究エッセイ」では脳科学研究所の鮫島和行教授が、ヒトと人工知能をつなぐ「社会的シグナル」の研究における最新成果を報告。体育祭は今年で第90回。児童・生徒・学生の作文や写真とともに、伝統行事の模様を振り返ります。
表紙写真=岩崎美里
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労作教育とは、ペスタロッチー(1746‐1827)の「生活技術から学ぶ」や、デューイ(1859‐1952)の「為すことによって学ぶ」といった教育哲学を実践された先人たちの影響を受けたものでもあります。
学んだものを具現化する。失敗したら改善が必要と分かる。こうした点は最近の文部科学省が重視する点と重なります。学びを生かして新しい価値や製品を創造できるかということですね。
指導者としては教育哲学と捉えています。労作自体は面白いものではないけれど、自発的な創意工夫が生まれる現場でもある。「もう少しやってみよう」「次はこうしてみよう」と。価値や意味を見出すことが重要で、それは人工知能にはない能力。道徳的実践力を身につける、気づきの教育とも言えます。守っていきたい玉川の伝統です。「労作とは教育哲学のこと」石塚清章 p4
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私たちは対象のわずかな動作から他者を自然に認識しています。この種の動作を「社会的シグナル」と言います。社会的シグナルは、ヒトでは視線やうなずき、口調などがあります。
社会的シグナルを通して、ヒトがどう他者を自然に認識するのかがわかれば、それを機械にも行わせることができるでしょう。
ヒューマノイドが、私たちの視線の先をリアルタイムで追いかけたり、こちらから見えていないものをすぐに取ってくれたりしたらどうでしょう。他者を感じ、動物に「心」を見出すように、信頼する気になるかもしれません。研究エッセイ「ヒトと人工知能をつなぐ『社会的シグナル』の脳科学的探究」
鮫島和行 p22
目次
- [特集]労作のこころ
労作教育と創立者のことば
「労作とは教育哲学のこと」玉川学園理事(K‐12担当)…石塚清章
K‐12の取り組み
幼稚部 美化労作/1~4年生 畑労作
10年生(IB) 健康院竣功記念品プロジェクト
5~8年生 男子管財委員会/7年生 ゴミ拾い当番
9~12年生 労作委員会/ペガサス祭装飾
労作の成果をたどる
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- 生涯学べ 57
福山高志 江戸川区立第二葛西小学校教諭 - 研究エッセイ
ヒトと人工知能をつなぐ「社会的シグナル」の脳科学的探究…鮫島和行 - 数字でみる玉川 4
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