『全人』2021年1月号 No.856より
2021年1月号 No.856
肉体と精神は不分離で、心身は一体と説く「心身一如」。創立者小原國芳は、仏教由来のこの言葉を自著や色紙にたびたび登場させました。多くの制約がともなうコロナ禍においても健やかでいられるために、個人や集団ができることとは何か。そのヒントを求めて、精神科医でミュージシャンの星野概念さんと、本学の教員6名に話をうかがいました。「玉川の先輩を訪ねて」には小児神経科医の江川文誠さんが登場。療育に携わる原点となった高等部での経験や当時の思いを振り返ります。
表紙写真=岩崎美里
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もし、友だちとかがいつもと違ってつらそうだったり、悩みを打ち明けてきたときは、たいへんだと思うけど、聞いてあげてほしいなと思います。
聞き方にはいくつかポイントがあって、一つはその人の話を評価しないことです。「それって寂しいだけだよね」とか、「あなたの言っているのはこういうことだから、こうしたほうがいいよ」と訳知り顔で言ったり。悩みを簡単な言葉で片付けられると、本人としてはけっこうキツい。「そういうことしていては駄目だ」と否定するのもやめたほうがいいです。
だからひたすら相手が話すことに耳を傾ける。思いを寄せて、わかろうとしながら聞くことです。すべてをわかることなんて無理なんですけど、わかることを諦めない。そういう気持ちで聞くことを、「傾聴」と言います。「つらい心のほぐし方」
精神科医・ミュージシャン 星野概念 p4 -
障害児の家族にもしばしば話すのですが、療育の世界では、ここにいなければ出会えなかった、美しい花や鳥のさえずりがあります。困難を乗り越えようとする人がいて、助けようとする人もいる。障害があるからといって、人生がネガティブなことで埋め尽くされるわけではないと、多くの人に伝えたいです。
私は健やかさとは、心の持ちようだと思います。身体は千差万別。ハンディの有無もある。でもそれは「違い」です。身体がどんな状態であっても心は健やかでありえるのです。
私が療育をライフワークにしたのは、「ここには何か良い出会いがある」と感じたからです。「療育に携わっていて良かった」と思える出会いがこれからもあることを願いながら、仕事を続けていきたいです。玉川の先輩を訪ねて 88
小児神経科医 江川文誠【高等部1974年卒業】 p18
目次
- [特集]健やかな心身
interview
つらい心のほぐし方 精神科医・ミュージシャン 星野概念
[医学]誰もが役割を担う「公衆衛生」の考え方
保健センター 健康院・教育学部 庭野裕恵
[身体論]外界と自分をつなぐ媒体とは リベラルアーツ学部 佐藤由紀
[メンタルヘルス]心の傷と向き合うセラピーの視点 教育学部 原田眞理
[食生活]きのう何を食べましたか? 食を通して生活を振り返る
農学部 原 百合恵、勝又美紀
K-12保健室・相談室より
[人間関係と社会]相互理解や合意形成から「社会的な健康」に貢献
TAPセンター・教育学部 工藤 亘
故きを温ねて 85 「 汝の若き日に汝の造り主を覚えよ」…白柳弘幸 - TAMAGAWA GAKUEN NEWS
- 玉川の先輩を訪ねて 88
小児神経科医 江川文誠【高等部1974年卒業】 - 生涯学べ 67 大久保秀晃 三鷹市立大沢台小学校教諭
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