『全人』2012年3月号 No.759より
東日本大震災から1年。3月号では、玉川大学を89年に卒業後、郷里の気仙沼で小学校教諭となった大内哲夫さんを訪ね、罹災した気仙沼南小学校で津波から逃れた日のことと、それからの日々を語っていただきました。だれもが家や家族、日常を奪われた大災害の中、子どもたちと向き合う教師に何ができるかの言葉には、重みと力があります。
学園ニュースは第34回ミツバチ科学研究会の開催などを報告。研究エッセイでは玉川学園の環境保全施設SEAの取り組みが詳しく解説されています。また、通信教育部の卒業生や資格取得者の活躍を紹介する「生涯学べ」は9回目。今月号は45歳での学芸員への転職を掲載しました。連載「教育連携@K-12」では工学部が中学年生の自由研究「ロボット研究」を支援する様子をルポしています。
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卒業式のときは巣立つ6年生に、「困難に立ち向かって頑張ろう」と伝えたけれど、始業式では震災についてふれませんでした。なぜ? だって、普通じゃないから。幸せであたりまえのはずの子どもたちが精一杯耐えるなんて、普通のことじゃないから。震災で過酷な状況に置かれた子どもたちは、もう十分過ぎるほど頑張っている。せめて学校にいる間は普通に勉強し、普通に遊び、私たちもいつもどおり普通に接したかったのです。(略)
教師であっても、子どもの心の中には入れませんよ。その子が抱えた深い悲しみや不安を解消することなどできるはずもない。できるのは、子どもが“あー、今日も学校楽しかったな”と思いながら帰れるようにすることです。(略)
それでも子どもたちの笑顔を見ていると、現在と未来のことを考えるしかない。震災を経て、あらためて子どもと共にいる教師という仕事への喜びを感じられたように思うのです。「津波に耐えた卒業証書」 玉川の先輩を訪ねて57 大内哲夫 p4
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仕事の傍ら、何か違う分野を勉強したいと考え始めた頃、学芸員の資格取得を思い立ちました。博物館は見るのも好きだったので、資格を取っておけば、いつか生かせるのでは……とも考えたのです。1997年に玉川の通信教育部へ入学。あの頃は自分の足で一歩一歩階段を登っていくような日々でした。自分で計画を立て、レポートや試験に取り組まなければ先へ進めない。こつこつ勉強を続け、ゴールを目指すことで達成感がありました。(略)
現在、私は生き物担当の学芸員として、生命の進化を解き明かす展示の解説をしたり、子どもたちと化石のレプリカをつくるワークショップなどを開催しています。(略)私は45歳で学芸員になったけれど、それまで大学や会社で培った知識は決して無駄ではないはず。少し遠回りしたようでも、ずっと自然科学に携わってきた経験はこれからも生かしていきたいですね。「生涯学べ 9」 相澤 毅 p24
目次
- 玉川の先輩を訪ねて57[特別編]
津波に耐えた卒業証書…大内哲夫 小学校教諭 - 学園ニュース
[大学]第34回ミツバチ科学研究会開催…中村 純
[大学]ニルス・ブック像 除幕式…三橋文子
[K-12]12年生がJICA論文コンクール入賞…硤合宗隆 - 教育連携@K-12 5
中学年×工学部「ロボット研究」 - なるほど! 英語 5
ピーター・バラカン 「ホワイト」って何色? - 学びの時間 9
農学部生物資源学科 山口聰 研究グループ - 玉川の丘めぐり 20
緑豊かなキャンパス「1本を私の木に」…白柳弘幸 - Book Review 89
『食の安全──Is it Safe to Eat?』…竹中哲夫 - 子どもの本で世界をまわる 20
〈ラオス〉安井清子 - 生涯学べ 9
科学の世界を広く伝える役割蒲郡市生命の海科学館学芸員/相澤 毅 - 課外活動訪問 20
女子卓球部=関東学生2部リーグをめざして - 研究エッセイ
学校環境保全施設 SEAの取り組み…小泉嘉一 - 小児科ドクターの診療カルテから 9
ぽっこりおなかの正体は卵巣のう腫! - Career Navigation '11
仕事インタビュー〈食品会社 営業〉&イベントスケジュール - 平成23年度 礼拝献金についてのご報告
- 学外施設定期便 20
ナナイモ市民との「絆」〈カナダ/ナナイモ〉…高﨑宏寿 - 同窓会インフォメーション
全国の教師ネットワーク構築を目指して - 学園日誌…小原芳明
- Photos of the Day│玉川の寒稽古
- 学園スケジュール│玉川大学・K-12のイベントと入試に関するご案内
- 表紙の風景│White Out 浦澤 優 【作】
- 教育博物館館蔵資料紹介 241│泰西訓蒙図解…宇野 慶
- TAMAGAWA HEADLINES 学園近況
- 玉川の仲間たち│アセビ…梅木信一