自主学習サークル「結いの会」における学び

2017.03.08
湯藤 定宗

玉川大学通信教育部に平成26 年度に着任以来,校務分掌上で言えば私は学生担当であり,学生会を中心としながら,学生たちと関わることが多い。彼らからよく耳にすることとして,通信教育は孤独との戦いだと言う。だからこそ,夏期のスクーリングなどを通して,全国から集う学生たちは講義や各種イベントを通して交流を深め,学習モチベーションの維持に努めているように見受けられる。
通信教育部教員としてできることは何かを考え,昨年度から「結いの会」と称する学習会を有志の学生とともに運営している。当初は10 名にも満たない規模で始めたのだが,次第に参加者が増えて,現在では,140 名以上で構成されている。8 割以上を通信の学生が占め,その他2 割は学部生,現役教員,通信の卒業生,玉川内外の大学教員などである。
その「結いの会」の活動は主に二つある。一つは1 年に6 回ほど玉川大学を会場にして学習会が実施されている。学習会の内容は多岐にわたっている。指定される課題図書を使っての意見交換,模擬授業,参加者によるプレゼンテーション,外部講師によるワークショップなど,基本的には参加者のニーズに基づいてその都度学習会の内容が計画される。この「玉川通信」3 月号が皆さんのお手元に届く頃には,第12 回「結いの会」が開催されるが(3 月5 日),その内容は玉川大学TAPセンター長,難波克己教授によるTAP プログラムの体験である。この企画も参加者からの強い要望によって実現することになった。
もう一つの活動は, サイボウズというSNS のツールを活用しての学びの共有である。毎回の学習会や各スクーリングの気づき,教育実習や介護等の体験の報告,各学会等の情報,また今年度教員採用試験に合格した複数の参加者からの採用試験対策に関する合格体験記など,学習に関する情報共有はもちろん,学校現場における心安らぐエピソードの紹介,新聞を読み意見を言い合う場,おすすめの書籍の紹介,自然をエンジョイした報告など,各人の現場でのボランティア体験や生活体験を共有するトピックも,参加者が自由に立ち上げて,各々が自由に投稿している。それぞれの投稿は実名で行うことになっており,各々真剣に投稿していて,熱気がこちらまで伝わって来る。私自身,「結いの会」の投稿内容を確認することが朝の日課になっている。
教育学を学んでいる皆さんであれば,既にお気づきになっている方もいると思われるが,SNS を使っている「結い」の会の仕組みは,イヴァン・イリッチが『脱学校論』の中で提唱した学習機会の網の目(Opportunity Web)を参考にしている。同じ目的や興味関心を持った参加者が「結いの会」に集い,相互に刺激を受け,各人が自己研鑽を積んでいく。
2017 年度の「結いの会」の目標の一つは,玉川大学で学んだことを書籍として出版することである。この提案も教員の私からではなく,学生さんからの提案で動き出している。

(平成26年4月1日着任)

プロフィール

  • 通信教育部 教育学部教育学科 准教授
  • 広島大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。教育学修士。
  • 専門は、教育経営学・教育行政学・教育制度学
  • 趣味:野菜づくりと読書、そして我が子たちと遊ぶこと
  • 著書に『なぜからはじめる教育原理』(共著、建帛社、2015年)『新・教育制度論』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『教職概論』(共著、協同出版、2014年)、『新教職概論(改訂版)』(共著、学文社、2014年)、『教育制度と教育の経営(改訂版)』(共著、あいり出版、2014年)、『学校評価システムの展開に関する実証的研究』(共著、2013年、玉川大学出版部)、主要論文として『米国チャータースクールにおけるスポンサーによる学校評価に関する研究』(単著、日本教育経営学会論文誌(52))などがある。
  • 学会活動:日本教育経営学会(紀要編集委員)、日本教育行政学会、日本教育制度学会、関西教育行政学会、アメリカ教育学会、中国四国教育学会 会員