大学で学ぶということ

2024.03.01
関畑 崇之

 2023年度に教育学部教育学科に着任いたしました、関畑崇之と申します。通信教育課程では、「日本国憲法」の科目を担当しております。私自身、大学はアルバイトをしながら夜間部に通っておりましたので、様々な事情がありながらも、大学で学びたいとする皆さんのサポートができ嬉しく思っております。
 私は法学部を出ており、法学部では民法や刑法、そして私の専門でもある日本国憲法など、様々な法律を学びました。その中でも、日本国憲法を専攻した理由としては、「答えのない学び」に魅力を感じたからです。一つ例を挙げてみましょう。

 LGBTQに対する理解促進に努める団体は、公営の宿泊施設において1泊2日でミーティング及び懇親会をすることとなりました。しかし、当該宿泊施設の管理者は、団体からの宿泊申請を拒否しました。管理者の宿泊拒否は差別にあたるでしょうか?

 この事例を読んだとき、皆さんは直感的に差別にあたると考えたでしょう。確かに「平等」という理念はとても重要であり、LGBTQであるという理由だけで異なる取り扱いをすることは差別となります。しかし、一方の意見のみを強調するのではなく、もう一方の主張にも思いを巡らせてみましょう。当該施設は公営の宿泊施設であり、部屋割りは「男女別室」で6~8人程度の同室になります。なぜ「男女別室」というルールがあるのでしょう?「男女別室」のルールがある理由を踏まえたうえで、LGBTQの団体を男女別室で宿泊させた場合に「男女別室」のルールはその目的を達成できるでしょうか?このように考えてみると、施設管理者の宿泊拒否にも一理あるように思えます。(もちろん検討はこれで終わりません。平等の意味や代替手段による解決が可能であったかなど様々な検討を行います。)
 このような思考方法は法学に限られたものではないと思います。高校までは正解を詰め込む学習が多かったと思います。しかし、大学では何が正解かを導く学修が大事になります。上記の例題でも、差別に「あたる」「あたらない」の結論はそこまで重要ではありません。「なぜ」差別にあたるのか・あたらないのか、といった理由・根拠が重要となります。そして、この理由や根拠は自分の感じたことや感想を書くのではありません。大学の先生が書いた書籍や論文、公文書や実験データなど、客観的資料をもとに自分の主張を形成していきます。これらの客観的資料の収集では、インターネット上の情報だけでレポートを書く学生がいますが、近くの図書館に向かい、書籍等を積極的に参照しましょう。また、これらの理由・根拠を文字に起こす際には、単に列挙するのではなく、読み手が理解しやすいように整理し、まとめることを意識しましょう。
 単位や資格・免許の取得も大事ですが、たくさん学び、たくさん考え、たくさん書くことで有意義な学生生活を送っていただければと願っております。

プロフィール
  • 所属:教育学部 教育学科
  • 役職:講師
  • 最終学歴:東洋大学大学院法学研究科博士前期課程修了、同博士後期課程単位取得退学、修士(法学)
  • 専門:日本国憲法、表現の自由、ヘイトスピーチ
  • 職歴:
    ・東京都立大学法学部法学科法律学コース・法学政治学研究科法曹養成専攻 助教
    ・国士舘大学法学部 非常勤講師
    ・高崎経済大学経済学部 非常勤講師
    ・東京情報大学 非常勤講師
    ・電気通信大学 非常勤講師
  • 著書:
    ・『憲法入門講義』(一藝社、2021)第10章担当
    ・『法学憲法基礎』(八千代出版、2021)第1部第6講、第2部第6・7・8講担当
    ・『判例アメリカ環境法』(勁草書房、2022)Laidlaw判決担当
  • 学会活動:
    ・憲法学会
    ・日本カナダ学会