少し立ち止まって...

2014.02.05
田畑 忍

4 月7 日(日)、2013 年度・玉川大学通信教育部の「学習ガイダンス」と「教職課程ガイダンス」を聞く機会を得ました。講師は通信教育部の福本みちよ教授(現在は,東京学芸大学に転出)と事務の方でした。これを読んでいる方の中にも、ガイダンスに参加された方がいると思います。前日が荒れた天気でしたので、「どれだけの学生さんが集まるのだろう?」と思っていましたが(例年よりも少なかったようですが)、多くの学生さんが集まり、質疑応答も活発に行われました。

福本教授は教職ガイダンスの中で、「教師としてもっとも問われるものは人間性である」と述べられました。また、福本教授が学生の頃、指導教官から「教師である前に人間であれ」という言葉を頂き、今でもその言葉を大切にされているとおっしゃっていました。だからこそ、例えばレポートを作成する時、安直な方法は考えられるが、それで本当にいいのかを考えてほしいと訴えられていました。

船井幸雄著『13 歳からのシンプルな生き方哲学』(マガジンハウス)という本があります。多感な年頃の子どもたちに向けた本になっていて、「幸せに生きるための成功哲学書」として62 のルールが示されています。例えば、「恩を忘れない」「どんなことも肯定、感謝する」「逃げずに目の前のことを一所懸命にやる」「即時処理と後始末で時間を味方につける」などのルールが書かれています。わかりやすい言葉で、1 ルール2 ページで書かれていますので、読書が苦手な子どもにも読みやすい本になっていると思います。

その中に「徳こそ人間の値打ち」というルールがあります。本文を引用すると、…私は、正しい人間性、「徳」にこそ、人間の値打ちがあると思います。学歴は、徳に比べると、重要なことではないと断言できます。…(中略)…もちろん私自身も、大学を出ていますし、学歴を否定しているのではありません。ただ、それよりも大切な「しつけ」や「徳」をまず学んでから、勉学に励んでほしいと思っているのです。

教師は子どもたちの成長に大きな影響を与えます。それは、私たち教師がさまざまな機会をとおして、子どもたちに語りかける存在だからです。また、社会人の見本として見られる存在だからです。だからこそ、私たちは人間性を磨かなければならないのです。『13 歳からのシンプルな生き方哲学』には身に付けるべきルールが示されていますが、例えば私たち教師が「しっかり計画を立てて実行すること」「面倒なことからやり終えようとすること」「期日をしっかり守ること」などを身に付けていれば、私たちの自然な振る舞いの中から子どもたちはそれらのことを学ぶ可能性が高くなります。もちろん、その逆もまた然りです。

福本教授のお話は私にとって、教師であるとはどういうことかを見つめ直す機会になりました。レポートや採用試験に向けた勉強などで忙しいとは思いますが、今だからこそ少し
立ち止まって、通信教育で学ぼうと決めたわけを思い出してみてはいかがでしょうか? 

(「玉川通信」2013年8月号をベースに加筆修正)

プロフィール

  • 通信教育部 教育学部教育学科 助教
  • 三重大学大学院 教育学研究科学校教育専攻 修士課程修了。教育学修士。
  • 三重大学大学院 工学研究科システム工学専攻 博士後期課程修了。工学博士。
  • 専門は、教育工学、教育方法、授業評価など。
  • 皇學館大学・名古屋女子大学非常勤講師などを経て現職。
  • 論文に『ステップごとの解説の作成と相互評価をとり入れた問題づくり授業』『ワークブックを用いた演習を支援するシステム-教師による直接指導と同等の支援を目的とした演習支援システム-』などがある。
  • 学会活動:日本教育工学会,大学教育学会,コンピュータ利用教育学会 会員