在京避難者支援のその後

2014.05.28
原田 眞理

昨年の玉川通信に「今,わたしにできること」として,私が活動している在京避難者支援について少し紹介をした。あれから1 年が経ち,何が変化したのだろうか。
一例として,県外避難者の数をあげてみよう。
福島県と正式に東京臨床心理士会が,県外避難者支援事業を締結したため,2013 年11月よりこころのケア活動を開始した。現在も7,000 名以上の福島県民の方々が東京で避難生活を送っておられ,その生活はもうすぐ3年が経過する。こころの疲れもかなり蓄積しているのである。
震災直後はさまざまなイベントが企画され,災害や危機管理,トラウマなどへの興味関心が高まっていたが,残念ながら最近はその数もめっきり減っている。継続することがいかに難しいかという現れである。私が震災後から継続的にかかわっている「ふんばろう東日本」のなかのイベントに「ふくしま避難者の集い」がある。数日前に行った芋煮会について今回は紹介してみたい。芋煮会は,青森を除く東北地方で親睦を深める行事として秋に河原などで行われるそうだ。その地方によって,味も中味も違うようであり,今回私がいただいたのは福島浜通りの芋煮であった(写真参照)。福島の芋煮は,豚肉を使用するところが特徴だそうで,里芋,にんじん,大根,ごぼう,こんにゃく,しめじ,ねぎなどが入り,味噌で味付けをしてあった。山形は牛肉を使用し,醤油味らしい。この日参加された福島県からの参加者は「美味しい」とおっしゃる一方で「これは豚汁で芋煮じゃない」「福島は味噌をいれない」などふるさとの味についてさまざまに話が盛り上がっていた。ふるさとから離れても,つながりを求める参加者の方々と,共に大笑いしたり,帰村についての暗く不安な気持ちを傾聴したりしながら,私自身もさまざまなことを考えさせられる。月1回ではあるが,継続して会い続けることが,わたしにも生きる力を与えてくれている。

プロフィール

  • 通信教育部 教育学部教育学科 教授
  • 東京大学大学院医学系研究科(心身医学講座) 博士(保健学)
    日本臨床心理士資格認定協会臨床心理士
    日本精神分析学会認定心理療法士
    私立中高スクールカウンセラー
  • 専門は精神分析、臨床心理学、教育相談、医療心理学。また、東京臨床心理士会3・11震災支援プロジェクト委員として、特に福島からの在京避難者支援を行っている。
  • 東京大学医学部付属病院分院心療内科、虎の門病院心理療法室、聖心女子大学学生部学生相談室主任カウンセラーなどを経て現職。
  • 著書:『子どものこころ―教室や子育てに役立つカウンセリングの考え方』『学級経営論』『女子大生がカウンセリングを求めるとき』『カウンセラーのためのガイダンス』など(含共著)
  • 学会活動:日本心身医学会代議員、日本精神分析学会・日本心理臨床学会、日本教育心理学会 会員