反転授業における予習ビデオの作成

2015.09.14
田畑 忍

反転授業(Flipped Classroom)という言葉をご存知でしょうか。日本では,佐賀県武雄市の実践が有名です。武雄市の実践では,児童は授業の予習ビデオをタブレット端末に入れて持ち帰り,自宅で視聴します。授業では,予習ビデオで学んだ内容について演習問題を解いたり,わかりにくかったところを教えあったりします。反転授業には,「理解度に応じて予習ビデオを繰り返し視聴できる」「授業中により多くの演習時間を確保できる」等のメリットがあります。一方で,「予習ビデオを誰が・どのように作成するのか」「予習をしてこない児童にどう対応するのか」「予算をどうするのか」等の課題があります。私はCAI (computer-assisted instruction)等の教材を利用・作成した経験から,教材は教師自身が作成した方が良いと考えています。「一貫した教え方ができる」「教師の個性に応じた教材になる」というのが主な理由です。100%納得できる教材はなかなか見つかりません。過不足を感じるものです。

図:予習ビデオの一例

ならば,自分で作成する方が結局は早道です。予習ビデオを作成する際,「ビデオの内容と質」に不安を感じるかもしれませんが,予習ビデオの視聴を課す授業を展開する場合,もしも不備があったとしても,授業中に修正すれば良いのではないでしょうか。修正改善を前提に作成すれば良いと思います。
高品質な予習ビデオを作成するには相応の機材が必要ですが,例えば手元を撮る書画カメラがない場合,Web カメラで代用することもできます。マイクについては,1,000 円程度のもので十分です。また,PC 画面を録画するソフトについても,製品版の一部を利用制限した無料版で十分に作成可能ですし,Power Point 2013 のOffice Mix もあります。図は,私が作成したファシリテーションに関する予習ビデオです。詳しい分析は今後進める予定ですが,これを視聴した上で授業に臨んだ方が,授業中に説明していた時と比べてワークを繰り返すことができ,学生のファシリテーションに関する理解が進んだように思います。反転授業を行うにはタブレットの準備等の壁がありますが,作成した予習ビデオは授業中の解説動画として利用することもできます。動画の作成方法に関する本も出版されていますし(例えば,井上博樹『反転授業実践マニュアル』海文堂,2014 年),インターネットで「反転授業」「動画作成」で検索すると,いくつかのサイトが出てきます。まずは興味のある分野の動画を作成してみてはいかがでしょうか。

プロフィール

  • 通信教育部 教育学部教育学科 助教
  • 三重大学大学院 教育学研究科学校教育専攻 修士課程修了。教育学修士。
  • 三重大学大学院 工学研究科システム工学専攻 博士後期課程修了。工学博士。
  • 専門は、教育工学、教育方法学。
  • 皇學館大学・名古屋女子大学非常勤講師などを経て現職。
  • 論文に『ステップごとの解説の作成と相互評価をとり入れた問題づくり授業』『ワークブックを用いた演習を支援するシステム-教師による直接指導と同等の支援を目的とした演習支援システム-』などがある。
  • 学会活動:日本教育工学会、コンピュータ利用教育学会 会員