玉川大学では世界最先端の実用的な暗号「Y-00」の研究開発を行っています。本学では世界に先駆けて量子情報および量子通信の基礎理論を1980年代から研究し、2011年4月に量子情報科学研究所(所長:広田 修教授)を開設しました。「Y-00」は数式を用いる暗号とは異なり、安全性の保証に物理現象を利用します。数式に依存する暗号は一見安全に見えても計算方法が考案されると解読されてしまいますが、物理現象は一定なので安全性を保証できることになります。「Y-00」は、毎秒10ギガビットを400㎞先に伝送可能です。たとえば光ファイバー通信の途中でデータをコピーされたとしても、この暗号は1000年間のデータを収集し、世界中の全ての計算機で並列処理しても解読不能なのです。2012年アメリカ国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は数理暗号に代わる物理暗号の研究開発プロジェクトに着手しました。「Y-00」は現在、DARPA開発プロジェクトの目標性能を達成できる唯一の暗号とされています。
本学では、2014年に毎秒100ギガビットの光通信回線の物理暗号化の実証実験に成功し、その成果を論文や国際会議で発表しました。さらに2014年より新たに量子情報科学研究所の量子ミニマックス定理と呼ばれる数学理論に基づく量子レーダーの開発も開始。いかなる天候下でも対象物を認識でき、例えばクルマの自動運転用センサーなど、幅広い分野での応用が期待されています。これからも本学では、より安心・安全な社会の実現に向けて「Y-00」の実用化に向けた研究を進めていきます。