PowerPoint とKP 法

2016.09.08
田畑 忍

私は担当する授業で,「KP 法( 以下,KP)」というものを説明することがあります。図は,2016 年度の春期スクーリング「教育の方法と技術」に参加した学生が作成したものです。この時の課題は,「子どもの学力低下問題に関連して,学ぶ意欲が低くなっていることが懸念されています。子どもの学ぶ意欲を高め,確かな学力を身につけさせるために,学級担任としてどのような指導を行っていきますか。あなたの考えを述べなさい」というものでした。2009 年に神奈川県の教員採用試験に出題されたものです。KP では,B5~A4 サイズの用紙に,1 枚につき10 文字× 3 行程度で要点を示します。1 つのプレゼンテーションで15 枚程度の用紙を使い,用紙を貼りながら説明します。
プレゼンテーションといえばPowerPoint(以下,PP)が有名です。PP もKP も情報を発信する際に利用するものですが,それぞれにメリットとデメリットがあります。表に代表的なものを挙げました。表にはありませんが,「板書を減らすことにより,教員が児童・生徒を見る機会が増える」「修正改善が容易である」という共通のメリットもあります。板書には,「授業の流れを示す」「授業内容の理解に必要な情報を示す」等の目的があります。ある大学の授業評価アンケートでは,「黒板を消すのが早すぎる」という苦情が多いため,「学生が内容を理解し,必要ならノートを取るために充分な時間,板書・プレゼンテーションの内容が提示されていること」が大切だとしています。
この状況を改善する一方法として,私はKP とPP を組み合わせたものを試みています。KP の用紙に示す情報量によっては文字が見えにくいという新たな課題も出てきましたが,「用紙に示す内容を吟味する」「必要に応じて用紙のサイズを変更する」「板書を工夫する」等を行えば,両方のメリットを活かすことができる可能性があると考えています。

  メリットデメリット
PowerPoint ・映像等,多くの情報を提供することができる
・アニメーションで児童生徒の注意をひくことができる
・スライドが進むと,以前の情報が消えてしまう(=必要に応じて,各自で振り返ることができない)
KP 法 話の軌跡が見える(=必要に応じて,各自で振り返ることができる) ・アニメーションや映像等,視聴覚に訴えることができない
表:PowerPoint とKP 法のメリット・デメリット

【参考文献】
川嶋直「KP 法 シンプルに伝える紙芝居プレゼンテーション」みくに出版,2013
帯広畜産大学大学教育センター「授業における板書・プレゼンテーションの留意点」
http://www.obihiro.ac.jp/~cea/bansyo.html

プロフィール

  • 通信教育部 教育学部教育学科 助教
  • 三重大学大学院 教育学研究科学校教育専攻 修士課程修了。教育学修士。
  • 三重大学大学院 工学研究科システム工学専攻 博士後期課程修了。工学博士。
  • 専門は、教育工学、教育方法学。
  • 皇學館大学・名古屋女子大学非常勤講師などを経て現職。
  • 論文に『ステップごとの解説の作成と相互評価をとり入れた問題づくり授業』『ワークブックを用いた演習を支援するシステム-教師による直接指導と同等の支援を目的とした演習支援システム-』などがある。
  • 学会活動:日本教育工学会、コンピュータ利用教育学会 会員