大学教員も「生涯学べ」

2018.05.01
教育学部教育学科 通信教育課程 准教授  松山 巌

みなさんはFDという略語を聞いたことがありますか。「ああ、昔のコンピュータで使ってた……」いえいえ、フロッピーディスクではなくて、ファカルティ・デヴェロップメント(faculty development)の略です。ファカルティとは大学教員のことですので、直訳すると「大学教員の向上・改善」となります。
では、教員の何を向上・改善させるのかというと、「授業の内容および方法」とされています。2007年以降、大学ではそのための「組織的な研修及び研究」が義務づけられており、さまざまな取り組みが行われています。
ところで、具体的に何をするかというと、文部科学省は「極めて広範にわたるが」とした上で「教員相互の授業参観の実施、授業方法についての研究会の開催、新任教員のための研修会の開催」を例として挙げています。
この例をみて、なあんだと思った人も多いのではないでしょうか。高校までの学校では、教員のこういった活動はかなり一般的といってよく、わざわざ横文字を使って義務づけるほどのものではありません。
しかし、大学の教員になるのに免許は要りませんので、教職課程のようなものはありません。基本的には、どのような研究をしてどのような論文を書いているかのみが問われ、授業をする力は問われない時代が長かったのです(最近は変わりつつありますが)。そのため、塾の講師も家庭教師もせず、およそ他人に教えたという経験のない人が、いきなり教壇に立って戸惑うという話も聞きます。
実際、授業改善のために努力するかどうかは個人に任されていて、私が学生の頃は、たまにびっくりするような授業をされる教授もいました。ある先生はプリントも板書もなく、ひたすら自身の著書を毎回朗読していました。

さて、京都地域の大学が毎年2~3月に「FDフォーラム」というものを開いており、数年前から毎年参加しています。
今年の初日のシンポジウムでは、授業改善に関わる様々な実践報告や提案が出されました。「小中高と同様に、教授能力を資格化しては」「新人教員に一定時間の研修を義務化する」「高校までの理科指導法のように、大学の科目に対応する何々学指導法とかがあってもよい」等々。また、将来大学教員になる人の比率が高い一部の大学院では、教職課程の大学教員版のような、「プレFD」を既に実施しているのですが、受講している院生の指導教員が「そんなのに出る暇があったら論文の1つでも読め」「実験の1つでもしろ」などと邪魔してくるのが悩みの種だとか。
FDフォーラムに参加すると、さまざまな学問分野の先生方に会います。大学の規模も、学生の様子も、まちまちです。そこで出会い、話すことによって、単なる授業改善のための方法論にとどまらず、幅広い刺激を与えてくれるのです。また、自分の大学を外側から相対化して見つめる機会にもなります。通大のモットーに「生涯学べ」とあるように、これからも学び続けていきたいと、気持ちを新たにして東京に帰ってきました。

2018年度の会場となった京都産業大学の校舎の一つ
初日のシンポジウムの模様