研究成果の提供と社会発展への寄与

2018.09.01
湯藤 定宗

大学教員の仕事の一つは研究である。学校教育法第83 条にも「大学は,(中略)深く専門の学芸を教授研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。大学は,その目的を実現するための教育研究を行い,その成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与する」とある。
研究にもよるが,一般的に研究にはそれ相応の費用がかかる。したがって,大学によって額は異なるが,大学教員には研究費が与えられる。加えて,採択率は2 割程度であるが,科学研究費補助金(「以下,科研費」)等の外部資金を獲得し,さらに研究を進めることもできる。科研費については,平成29 年度から3 年間,研究分担者として「災害復興に資する社会関係資本を核とした公教育の役割と地域再生モデルの国際比較研究」,「 学校における危機管理体制構築に関する組織文化論的アプローチによる開発的研究」,「 教員評価における成果報酬に連動した勤務評定に対する『納得度』の向上策に関する研究(以下,教員評価研究)」,また平成30 年度から3 年間は研究代表者として「米国チャータースクールにおける管理運営組織の支援による効果的学校経営モデルの開発」が採択されている。研究者として,どの程度研究成果を広く社会に提供できているのかが問われている。
研究成果を提供する方法は,多様である。第一に,大学・大学院の授業で使用するテキストを執筆したり,授業を通して学生に研究成果を提供する。一例として,通信教育課程の授業「学校制度と社会/ 教育の制度と経営」で使用しているテキスト『学校教育制度概論』の編集,及び執筆(第7・8 章)をしている。
第二に,自分が所属する学会・研究会で研究発表をする。直近の研究発表としては,平成30 年6 月の日本教育経営学会第58 回大会において,上記科研費研究の「教員評価研究」に関する共同研究発表を行った。
第三に,学会・大学の紀要や書籍によって研究成果を提供する。学会紀要としては『日本教育経営学会紀要』第60 号(平成30 年6月)特集〈教育経営研究の課題と展望〉において「教育経営研究の有用性と教育経営研究者の役割―学校と地域との連携に焦点を当てて―」を執筆した。また,大学の紀要としては共同執筆者として「教員評価制度における成果報酬に連動した勤務評価の特徴」(広島大学大学院教育学研究科『学習開発研究』第11 号,2018 年)を執筆した。加えて,書籍としては「教育をひらく研究会」編『公教育の問いをひらく』(平成30 年2 月,デザインエッグ社)において「第1 章 教育課程を地域にひらく」と題し,大阪府富田林市立高辺台小学校を事例とした「たかべ・みそ汁・元気いっぱい」プロジェクトについて執筆した。
それぞれのテーマに関して,微力ながら研究成果を広く社会に提供することに努めたつもりではあるが,上記の研究成果は,僅かでも「社会の発展に寄与」することができたのであろうか。研究者としてそのことを自問し,今後も研究活動を継続していく所存である。

プロフィール

  • 教育学部教育学科 通信教育課程 准教授
  • 広島大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。教育学修士。
  • 専門は、教育経営学・教育行政学・教育制度学
  • 趣味:野菜づくりと読書、そして我が子たちと遊ぶこと
  • 著書に『なぜからはじめる教育原理』(共著、建帛社、2015年)『新・教育制度論』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『教職概論』(共著、協同出版、2014年)、『新教職概論(改訂版)』(共著、学文社、2014年)、『教育制度と教育の経営(改訂版)』(共著、あいり出版、2014年)、『学校評価システムの展開に関する実証的研究』(共著、2013年、玉川大学出版部)、主要論文として『米国チャータースクールにおけるスポンサーによる学校評価に関する研究』(単著、日本教育経営学会論文誌(52))などがある。
  • 学会活動:日本教育経営学会(紀要編集委員)、日本教育行政学会、日本教育制度学会、関西教育行政学会、アメリカ教育学会、中国四国教育学会 会員