国際交流の旅 ─ドイツとイギリスを訪ねて─

2019.03.06
佐久間 裕之

昨年,私は玉川大学の長期研修制度により,8月1日から9月30日までの2カ月間,ドイツとイギリスに滞在しました。研修のテーマは「ヨーロッパにおける新教育運動の歴史的意義と現代教育への示唆―その代表的人物に着目して―」で,とりわけ「新教育」の国際的な組織であるNEF(New EducationFellowship)と,そこで活躍したドイツ・イエナ大学のペーター・ペーターゼンに着目して研修を行いました。
NEFは「子どもの自主性・創造性を尊重し,人間教育の在り方を追求しようとする教育実践家・理論家たちの連帯組織」として,1921年,イギリスのベアトリス・エンソアを中心に創設されました。2年に一度の国際会議と機関誌The New Eraを通じて,NEFは世界の新教育運動を牽引し,国際交流にも貢献しました。
NEFの活動には,世界各地の学校関係者に加えて,著名な教育学者や実践家,心理学者や思想家も関与しました。教育関係だけを拾ってみても,例えばモンテッソーリやデューイをはじめ,サマーヒルのニイル,プロジェクト・メソッドのキルパトリック,IB(国際バカロレア)に影響を与えたクルト・ハーン,ドルトン・プランのパーカースト,そしてイエナ・プランのペーターゼンなど,錚々たる名前が連なります。自由学園の羽仁もと子や玉川学園の小原國芳など,日本の新教育運動を代表する人々も有力なメンバーでした。
NEFは1947年,国連・ユネスコからNGO(非政府機関)としての地位を認められ,1966年にはWEF(World Education Fellowship)と改称し,現在に至っています。本部はロンドンにあり,日本支部(世界新教育学会)の事務局は現在,私の研究室にあります(HPはhttps://wefj.jimdo.com/)。

さて今回ドイツでは,イエナ大学に客員教授として赴くことになりましたが,ラルフ・ケレンツ教授が私の研究環境を整えてくれました。彼はヘルマン・リーツの田園教育塾やイエナ・プラン研究の大家です。偶然にも彼と私は同年齢で,2009年から親しく研究交流を続けています。現在,彼はWEFドイツ支部の代表者の一人です。
さらにドイツでは,リーツが創設した田園教育塾の一つビーバーシュタイン校の求めにより,私は小原國芳と玉川学園の教育について講演をする機会に恵まれました(写真)。
イギリスでは,ケンブリッジ大学とロンドン大学でNEF関係の資料調査を行い,さらに本場のアフタヌーンティーをいただきながらWEFロンドン本部の代表たちと親しく交流しました。
2021年,NEF/WEFは100周年を迎えます。それを記念して,同年9月,玉川大学を会場に国際会議を開催します。テーマは“100Years of New Education: Towards the Futureof the Child”です。子どもたちの未来のために,これからの教育のあり方を世界の人々と語り合いませんか?

プロフィール

  • 所属:教育学部教育学科
  • 役職:教授、教育学部全人教育研究センター長
  • 最終学歴:玉川大学大学院文学研究科教育学専攻博士課程
  • 専門:教育哲学
  • 職歴:横浜美術短期大学助教授を経て、現職
  • 著書:『教育のイデア』(共著、昭和堂、2018年)、Educational Progressivism, Cultural Encounters and Reform in Japan (共著、Routledge、2017年)、『教育学の歴史』(共訳、青土社、2015年)、『教育原理』(編著、玉川大学出版部、2015年)、『親が参画する保育をつくる―国際比較調査を踏まえて』(共著、勁草書房、2014年)、『教職概論』(編著、玉川大学出版部、2012年)ほか
  • 学会活動:世界新教育学会(WEF日本支部)常任理事・事務局長、教育哲学会、教育思想史学会、教育史学会、日本哲学会、西田哲学会 会員 ほか