研究知見の共有と学会への参加

2019.07.30
湯藤 定宗

皆さんは学会にどのようなイメージを持たれていますか。私が初めて参加した学会は,日本教育経営学会(以下同学会)でした。四半世紀前になりますが,1994年に広島大学大学院修士課程1年生の時に,私が参加した同学会の大会シンポジウムの登壇者の一人は,岡東壽隆(おかとうとしたか)先生でした。自分の指導教官であるにも関わらず,発言されている内容を十分に理解できなかった記憶が残っています。
12年後の2006年にも岡東先生は同学会の課題研究「『教育改革』に揺れる学校現場」において登壇者として発言されています。そのときは自分なりではありますが,内容を理解でき,共感したことを覚えています。十数年の間で,同学会で大会に参加し研究発表をしたり,また研究成果の投稿等を通して,同学会が有する研究知見を共有することにより,上記の理解につながったのだと思います。
同学会に限らず,教育学関連の学会は,教育を少しでも良くしたいと強く願う大学教員や教育現場・教育行政の関係者が集い,研究知見の発信等を積極的に行っている,と私は認識しています。しかし,それらの研究活動や研究知見がどの程度教育現場に理解され,役に立っているのかについては,「『学校経営研究のどこが役に立つのか』という批判に反論できる教育経営研究の蓄積がなされているとは必ずしも言えない」と言及しました。
このような事態は,どうして生じるのでしょうか。理由の一つは,同学会において共有されている研究知見が教育現場では十分には共有されていないことが挙げられます。共有されない理由は,専門的な研究知見を理解するには,冒頭の私の経験から考えても,一定期間のアカデミック・トレーニングが必要になるからです。同学会が有する研究知見の多くが,教育現場に理解されないどころか,届きさえしていないという現実が,残念ながら今も続いています。
というわけで,このような事態を改善する具体的な提案を二つしたいと思います。一つ目は,研究知見の共有です。同学会は昨年度創立60周年を迎え,60周年記念書籍「講座現代の教育経営」シリーズ(全5巻)を2018年に出版しました。興味がある論文からで結構なので,まずは手に取ってもらいたいと思います。ちなみに本学大学図書館にも所蔵されています。
二つ目の提案は,学会大会への参加です。あまり知られていないかもしれませんが,学会員でない場合も臨時会員として大会には参加できます。また,同学会もそうですが,シンポジウムは公開で参加費も無料です。勇気を出して,それぞれが,自分の興味・関心のある学会の大会に参加しませんか。

【注】
  • 拙稿「日本教育経営学会に期待する二つの『つながり』と核としての子ども中心主義」『日本教育経営学会紀要』第一法規,第50 号,2008 年,119-122 頁
  • 拙稿「教育経営研究の有用性と教育経営研究者の役割-学校と地域との連携に焦点を当てて-」第一法規,第60 号,2018 年,71-83 頁

プロフィール

  • 教育学部教育学科 通信教育課程 教授
  • 広島大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。教育学修士。
  • 専門は、教育経営学・教育行政学・教育制度学
  • 趣味:野菜づくりと読書、そして我が子たちと遊ぶこと
  • 著書に『なぜからはじめる教育原理』(共著、建帛社、2015年)『新・教育制度論』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『教職概論』(共著、協同出版、2014年)、『新教職概論(改訂版)』(共著、学文社、2014年)、『教育制度と教育の経営(改訂版)』(共著、あいり出版、2014年)、『学校評価システムの展開に関する実証的研究』(共著、2013年、玉川大学出版部)、主要論文として『米国チャータースクールにおけるスポンサーによる学校評価に関する研究』(単著、日本教育経営学会論文誌(52))などがある。
  • 学会活動:日本教育経営学会(紀要編集委員)、日本教育行政学会、日本教育制度学会、関西教育行政学会、アメリカ教育学会、中国四国教育学会 会員