フェイクニュースの見分け方
2020.05.22
教育学部 准教授 松山 巌
主としてインターネット上で発信・拡散される嘘の情報,いわゆるフェイクニュースと呼ばれるものがあります。インターネットがなかったときでも,誤った情報が流布することはありましたが,意図的にデマを流そうと思っても,そのような手段や権限を持つ人は限られていました。ところが,インターネット環境の普及によって,より短時間で,より広く拡散できるようになり,さらにSNS の登場で,誰でも発信者になることが可能になりました。つまり,フェイクニュースに接する機会も以前よりはるかに増えているわけです。
国際図書館連盟(IFLA)が2017年に,「フェイクニュースの見分け方」という図解文書で8つのポイントを挙げています。これについては,「一年次セミナー101」のテキストでも紹介しましたが,説明はごく簡単ですし,中にはこの科目を取らない人もいますので,少し補足説明をつけて紹介します。なお,IFLAのサイトには日本語訳もありますが,ここに紹介したものは表現を変えています。
- その情報の出どころはどこか?
気になる情報があったら,出どころも気にしましょう。面白い研究成果のニュースを聞いたら,もとの論文を探してみましょう。 - 見出しだけでなくきちんと本文も読もう
ネット上のニュース的な記事に寄せられるコメントを読んでいると,見出ししか読まずに勘違いしている人がよくいます。中にはわざとミスリーディングな見出しをつけてある記事もあるのでなおさら要注意です。 - 書いた人は誰で,どういう人か?
著者というのは,書かれている文章の背景や意図を知る上で大事な情報です。これまでの著作・発言の内容も分かればなおよい。 - 書かれている内容の裏付けをとろう
あるニュースを知ったら,その内容がほかのサイト等で裏付けられるか確認しましょう。 - いつの情報か?
何年も前のニュースがまるで昨日の出来事かのように突然SNSで流れてきたりします。 - ジョークや皮肉を真に受けないように
- 自分の偏見のために,内容をゆがめて理解していないか?
- プロにきこう
ファクトチェック専用のサイトもありますし,図書館に行って司書にきくのもよい。
私としてはこれに「9 自分の持っている知識を動員して論理的に考えよう」を追加したいところです。たとえば,一時期流布していた「コロナウイルスは熱に弱いので26℃のお湯を飲めば死滅する」という情報は,人間の体温が何℃ぐらいかという知識と,「それで死滅するのなら,それより高い体温を持つ人間が感染するはずがない」という推論で,たちまち嘘だとわかります。ただ,自分の知識には当然限界があります。したがって,知識を日頃から少しずつ蓄えつつ,分からない情報に接したら調べることをいとわない,つまり通大のモットーである「生涯学べ」ということが肝心なのではないでしょうか。
プロフィール
- 通信教育部 教育学部教育学科 准教授
- 東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。
- 中学・高校の理科教諭(地学)を経て現職。
- 専門は図書館情報学(情報資源の組織化を中心に)。
- 著書:『CD-ROMで学ぶ情報検索の演習』『韓国目録規則3.1版日本語訳』(いずれも共著)など。
- 学会活動:日本図書館情報学会、日本図書館研究会、日本地図学会など。
- 関心のある分野は韓国、漢文、フォント、音声学、地質学、確率論など。
- 趣味はカラオケ、地図読み。
- 好きなものは辞典・事典、新聞の号外、計算尺、スコア(総譜)、クリスマスの音楽。