卒業課題研究(卒業論文)について

2020.08.12
湯藤 定宗

教育課程表にある「卒業課題研究」の存在を皆さんは、ご存知でしょうか。通信教育課程を卒業することを目的とした学生が「卒業課題研究」を選択できることになっています。「卒業課題研究」ガイダンスを受講し、エントリーシートを提出し、面接指導を定期的に受けながら、10,000字以上の、いわゆる卒業論文(以下卒論)を執筆し、しかも最後に面接試問まであります。4単位という単位数を考えたら、割に合わないと考えてしまうかもしれません。しかし、毎年度学生からの「卒業課題研究」の履修希望があります。その理由は、1対1で文章添削も含めて卒論指導を受けることができることに期待する学生もいるからだと思っています。

現在私は、「卒業課題研究」を履修している学生の卒論指導を月に1回程度行っています。Aさんは「教育の機会均等に資する公教育と地域との連携に関する研究」、Bさんは「フィンランドと日本の教員養成制度の比較研究」、Cさんは「外国にルーツを持つ子どもに対する教育支援に関する研究」を、それぞれ精力的に進めており、3名とも今年度中に卒論を書き上げる予定です。

「卒業課題研究」を履修しようか悩んでいる学生が知りたい情報は、卒論指導の方法や実態だと思われますので、私の卒論指導の進め方について簡単に説明します。

私自身の研究履歴としては、主として日本教育経営学会での発表や投稿を通して、アメリカのチャータースクール、日本の学校評価や学校と地域との連携を課題として研究を行ってきました。しかし、既述した3 名の学生のテーマは多様です。それぞれのテーマに関する内容については、3名は私よりも知識や経験も豊富ですので、私にできるのは、卒論の内容指導というよりも卒論(研究)の進め方の指導が主になっています。

まず、各人の卒論では「何を」「どのように」明らかにするかを考えてもらいます。「何を」の部分が研究目的で、「どのように」が研究方法になります。次に、設定した研究目的が現実的に卒論として妥当かについて考えてもらいます。あるいは明らかにしたいことが既に研究されているかもしれませんので、先行研究の調べ方を指導します。研究者の世界では、先行研究のレビューと言いますが、これを行うことによって、卒論(研究)の意義づけを行うことが可能になります。また、研究方法についても、研究目的を達成するための適切な研究方法をご自身で考えてもらいます。

実際の指導ですが、これまでは面接指導をしていましたが、新型コロナウイルスの影響もあり、Zoom 等を使っての遠隔指導が主になっていますが、学生には好評です。

最後に、この研究室だよりが卒論を書こうか悩んでいる学生の背中を押すことができることを願っています。

プロフィール

  • 教育学部教育学科 通信教育課程 教授
  • 広島大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。教育学修士。
  • 専門は、教育経営学・教育行政学・教育制度学
  • 趣味:野菜づくりと読書、そして我が子たちと遊ぶこと
  • 編著書に『学びたい beyond』(編著、デザインエッグ社、2020年)、『教育課程編成論【新訂版】』(共著、玉川大学出版部、2019年)、『子どものために「ともに」歩む学校,「ともに」歩む教師を考える』(共著、あいり出版、2019年)、『講座現代の教育経営1 現代教育改革と教育経営』(共著、学文社、2018年)、『公教育の問いをひらく』(共著、デザインエッグ社、2018年)、『学びたい Unlearn』(編著、デザインエッグ社、2018年)、『学校教育制度概論【第二版】』(編著、玉川大学出版部、2017年)。主要論文として「教育経営研究の有用性と教育経営研究者の役割」(単著、日本教育経営学会論文誌、60号、2018年)などがある。
  • 学会活動:日本教育経営学会(理事)、日本教育行政学会、日本教育制度学会、関西教育行政学会、アメリカ教育学会、中国四国教育学会 会員