オンライン授業雑感 -通じ合うために必要なことは?-

2020.11.01
山田 深雪

私は国語教育を通して、人と人がことばを介してどのように通じ合っているか、なぜ通じ合えないのか、そして通じ合うためには何が必要かということについて研究しています。

さて、今年は、新型コロナウイルスの影響により人生初のオンライン授業を行いました。オンラインツールの画面と音声の範囲内という限られた情報の中で、私(授業者)と学生、学生同士がどれだけ通じ合えるか、私自身も迷いを抱えながらのスタートでした。そこで、私の受け持っている授業では、授業後に「学びの振り返り」をUNITAMAポートフォリオに入力してもらうようにしました。

「振り返り」の傾向として、オンライン上でのコミュニケーションについて書いている学生が多く見られました。「国語」の第3回授業の「振り返り」を一部紹介します。 まずは、ポジティブな感想から・・・。

今回の授業は、前でも書いたのですが、ブレイクアウトルームの人たちがとても話しやすい場を一人ひとりから作り出してくれていて、「その意見詳しく聞かせてー!」という言葉を投げてくれる人もいてとてもすごく良い雰囲気でした。自分自身も、これだ!と思えていない意見でもみんなに共有してみて、みんなの意見聞いてみるということもできたのでとても良かったと思っています。

オンライン上では相槌や反応が分かりにくいので、「なるほど。」「確かに。」などと声に出して反応し、自分の意見を言う際には相手の意見に付けたしをすることや、相手の意見に対し自分はこう思ったと反応すると話し合いがより活発になると思いました。

しかし、このような感想も・・・。

今日のグループディスカッションはいつもより話そうと意気込んで臨んだのですが、周りの人が全員知らない人でだいぶ怯えました。(中略)しかも、オンラインのため発言しても相手の表情が大して分からなかったり、その発言に対して無言だったりと、またここでも心が折れました。

オンライン授業開始当初は、対面の時よりも聞き手のリアクションに敏感になる学生が多く、ポジティブ・ネガティブ何れのリアクションを受けたとしても学生の授業イメージの形成に影響を及ぼしていました。そこで、第4回の授業の前半では、「一人一人異なる考えを持っている人が集まって一緒に学んでいる。その『ちがいを力に変える』ためにはどうしたらいいのだろうか?」と学生に問いかけ、授業の進め方やコミュニケーションについてアイデアをもらいました。(効果的だったのは、授業の最初にグループメンバーで「お題」について連詩をつくることでした!)

もちろん「オンラインの方が話しやすい」という学生もいました。対面だと周囲の空気を過剰に読んでしまい「間違ったらいやだな」「みんな聞いているのかな?」という気持ちが強くなるそうですが、オンラインだと余計な空気を感じないのでよいとのことでした。

オンライン授業の経験は、様々なコミュニケーションの問題を示唆してくれました。現在、GIGAスクール構想のもと一人一台端末の整備が急ピッチで進められています。今後は、それを使う人の思いもICTを活用した教育の両輪として大切にしたいものです。

プロフィール
  • 教育学部教育学科 准教授
  • 九州大学大学院/修士(教育学)九州大学
  • 専門:国語教育
  • 職歴:福岡県公立学校教員(小学校)、福岡教育大学附属福岡小学校教諭(国語・総合的な学習の時間)、福岡県教育庁南筑後教育事務所 教育指導室 指導主事
  • 著書:9月刊行『教育実習の手引き』玉川大学 時事通信社(編集委員)、『入門・食育実践集』藤本勇二編 全国学校給食会(分担執筆)、『文学・説明文の授業展開全単元(高学年)』長崎伸仁編 学事出版(分担執筆)、内田洋行「学びの場.com」食と授業「この はしの むこうに」vol.1~4(WEBサイト)
  • 学会活動:全国大学国語教育学会、日本国語教育学会、言語文化教育研究学会、初等教育カリキュラム学会、日本教科教育学会、日本読書学会