優れた体育授業の実践者を目指し

2021.02.01
教育学部准教授 南島 永衣子

「皆さんは、良い体育の授業とは、どのような授業のことだと思いますか?」学生に質問をすると真っ先にあがってくるのが、「楽しい授業!」という返答です。「では、『楽しい』とはどういうことですか?」と追質問をすると「自分たちの好きなことをさせてくれる。」、「ゲームや試合をたくさんさせてくれる。」等、学生たちのこれまでの経験から様々な意見が上がってきます。

さて、我が国では、日本国憲法及び教育基本法の精神に基づいて、教育の機会均等の基本的な考え方を学校制度に具体化するために学校教育法があります。今日の学校教育の基盤がこれに提示されており、学校教育の目的・目標を達成するために適切な教育課程を編成し、それに基づいて各教科の指導計画を作成し授業を行わなければなりません。また、学校教育法の規定に従い、学校教育法施行規則(以下、施行規則とする)が省令され、この施行規則によって、教育課程の基準(教育課程の編成、各教科の目標及び内容、授業時数の取り扱い、各教科等の指導計画作成の配慮事項など)を示す事項として、学習指導要領(以下、要領とする)が位置付けられています。 教育は、一定の教育目標に向かって行われる計画的・意図的営みが求められます。つまり、各教科では教育の一般目標を達成するために、教科固有の目標が設定され、その目標達成に向けて授業が行われます。これは、体育科・保健体育科(以下、体育科とする)においても同様です。このように、日本国内のどこにいても一定の教育水準を全ての子どもたちに保障するために要領が位置付けられています。

では「楽しい」体育の授業とは何か。これは、体育科の目標論と関連してきます。体育の教科内容領域として、「運動技能に関する学習」「認識に関わる学習」「社会的行動に関する学習」「情意に関わる学習」の4つがあります。

例えば、今までできなかったことが出来るようになったから楽しい!わかるようになったから楽しい!友達との教え合いによって、できるようなった!わかるようになった!更には、仲間と協力して達成できた!など、仲間と関わることによって構築される楽しさなどです。これらの4つの学習を経験できる体育授業こそが優れた体育授業の一歩といえるでしょう。

もっとも近年では、「何を学ぶか」、「何ができるようになるか」、「どのように学ぶか」を重視して一層生きる力を確実に育むことが重視されています。ここでは、詳しい内容は割愛させていただきますが、各教科等で身に付けて行く力と教科横断的に見に付けて行く力を相互に関連付けながら育成していくことが、今後の学校教育で求められていきます。優れた体育授業実践者を目指し、これから一緒に学習していきましょう。

参考文献

  • Crum,B.(1992)Critical-Constructive Movement Socialization Concept: Its Rational and Its Practical Consequence, International Journal of Physical Education,29(1):9-17.
  • 高橋健夫(1994)体育の授業を創る.大修館書店.p.10-24.
  • 友添秀則(2010)「体育の目標と内容」高橋健夫他編著新版体育科教育学入門.大修館書店.p.35

プロフィール

  • 教育学部准教授
  • 経歴:筑波大学 大学院 修士課程 体育研究科 体育方法学専攻 修了
    体育大学卒業後、母校の高校へ保健体育教員として3年間勤務したのち、退職して筑波大学 大学院へ進学。修士課程修了後、静岡県の公立中学校へ1年勤務し、その後、愛媛女子短期大学で2年間専任講師として勤務。2009年~2014年まではびわこ成蹊スポーツ大学に勤務。2012~2016年までは立命館大学スポーツ健康科学部非常勤講師として勤務し、2016年4月より本学着任。
  • 著書:新版 体育科教育学入門『第4部体育の単元づくり・授業づくり「Practice12ベースボール型ゲームの教材づくり・授業づくり」』大修館書店(2010,pp.210-218.)、『教養としての健康・スポーツ』玉川大学出版(2017,pp.128-136.)
  • 学会活動:日本体育学会、日本スポーツ教育学会、日本体育科教育学会、教育目標・評価学会
  • 賞罰:日本スポーツ教育学会 奨励賞 (共著)分担者:南島永衣子,高橋健夫.
    『教材活用の仕方や指導行動が学習成果に及ぼす影響について-特に開脚跳びのできない児童に対する学習指導を中心に-.』 スポーツ教育学研究27(1):21-35.