環境変化に伴う学び

2021.04.01
魚崎 祐子

昨年度は新型コロナウィルスの影響で、多くの方にとって思いもかけない大きな変化を伴う1年になったことと思われます。大学の授業も大きな影響を受けました。

教室での対面授業は制限され、オンラインで授業を行うこととなりました。幸いなことに私の場合、オンラインでの授業が初めてというわけではありませんでした。玉川大学に着任する前のこととなりますが、15年ほど前から大学におけるeラーニングに関わる機会がありましたし、通信教育課程で2017年度より開講しているブレンディッドスクーリングも担当しています。そのため、オンラインで授業を行うということが決定した際にまず参考にしたのはこれらの経験の中での授業設計でした。そういった意味では動画を作成し、学修者がそれらを用いて個々のペースで進めていくスタイルの授業はイメージしやすかったといえます。

ただ、これまでに経験してきたのはいずれもオンデマンド型であったのですが、同時双方向型の授業にも取り組むこととなりました。1年前までZoomというツールの名前を聞いたことはあっても積極的に使おうなどと考えたことはありませんでしたし、Teamsについては存在も知りませんでした。もともとパソコンスキルに自信のない私はリアルタイムでそのようなツールを用いて授業をおこなうにあたり、うまく進められるのか大きな不安がありました。そこで、複数のパソコンを立ち上げて1人で会議を開き、自分がどのような動きをすれば相手の画面ではどのように見えるのかを確認したり、大学教員の集まるSNSで情報収集をしたりしながら、授業プランを練りました。

おそらくこのような変化に対応しようと必死になったのは学生の皆さんも同様だったと思われます。人によってはレポート作成をする時ぐらいしかパソコンを触らないという方もおられたことでしょう。そのような状況で急にオンラインで授業を受けなければならなくなったのは、授業の内容理解以外の部分においても負担が大きかったことと推察します。

様々な紆余曲折を経て、私たちの生活の中でオンラインでのコミュニケーションの機会は増えました。やむを得ずという状況ではあったものの、結果的にICTスキルが向上した方も少なくないのではないでしょうか。私もZoomやTeamsの使い方、動画編集などのスキルが上がるとともに、1年前よりは多少自信を持って取り組めるようになりました。またオンラインでできる授業内容と取り入れにくい授業内容について整理をすることもできたと思います。このように、世の中の変化を通じて様々な学習をした1年であったと捉えることもできるでしょう。

また、この状況は大学以外の学校現場でもICT環境が整えられる契機となったようです。息子たちの学校でも学習成果を発表する場がオンラインになり、先生方が教室から配信してくださるものを保護者は自宅で視聴する機会がありました。1年前には想像できなかったスタイルです。思わぬ困難による産物ですが、この1年の中でせっかく増えた教え方や学び方の選択肢をどのように生かしていけるのか、あらためて考えていく必要がありそうです。

プロフィール

  • 教育学部教育学科 通信教育課程 准教授
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 博士後期課程修了
    博士(人間科学)
  • 専門は学習心理学、教育心理学
  • 早稲田大学助手などを経て現職。
  • 著書に『Dünyada Mentorluk Uygulamaları』(共著、Pegem Akademi Yayıncılık、2012年)、『テキスト読解場面における下線ひき行動に関する研究』(単著、風間書房、2016年)、『研究と実践をつなぐ教育研究』(共著、株式会社ERP、2017年)、主要論文に『配布資料の有無が授業中のノートテイキングおよび講義内容の説明に与える影響』(単著、日本教育工学会論文誌(39)、2016年)、『短期大学生のノートテイキングと講義内容の再生との関係−教育心理学の一講義を対象として−』(単著、日本教育会論文誌(38)、2014年)などがある。
  • 学会活動:日本教育工学会、日本教育心理学会、日本教授学習心理学会、日本発達心理学会 会員