通信教育課程の皆さんへの伝言

2022.03.01
寺本 潔

この度、わたくしは定年退職を迎えることになりました。2009年度から13年間、玉川大学でお世話になりました。主に「生活」や「社会」などのレポート添削や、「教育学特別講義」などの題目で夏のスクーリングを担当しました。2012年度から2年間は通信教育部長も拝命され、本学の通信教育課程の充実に尽力しました。思い出はつきないのですが、通信教育課程に属している皆さんへ、三つの伝言を述べさせて頂きたく記してみました。

  • 孤独な学びに打ち勝つ
    通信教育による学びは、孤独です。日中、仕事をやりながら、深夜や土日、長期休暇を活かして学習しなくてはならず、とても負担が大きいことでしょう。ときには、くじけそうになったこともあるでしょう。でも、何のために通信教育課程に入学したのか、の原点に立ち返り、孤独に打ち勝ってください。コロナ禍の中で、ますます孤独にさいなまれている方々は増えています。でも、オンラインで友人と語らったり、雑談でいろんな情報をメールでやり取りしたりする機会は格段に増えたのではないでしょうか。オンラインでは対面と異なり、友人が作りにくい側面もありますが、会う機会をオンラインだからこそ手軽に増やせます。対面機会が職場でも減り、精神的にも孤独感や無力感を感じられている方も多いかと思いますが、激増したSNSでのつながりを逆手に取り、新しいネットワークを広げてください。
  • スクーリングで会話する喜び
    コロナ禍の中でも貴重な対面の機会がスクーリングです。でも、静かに講義を聴くだけの態度では、仲間もできません。疑問に感じたことは、人前でも積極的に授業中でも発言し、自分がどういった意見を持っている人間であるかを先生にだけでなく、受講生にも知ってもらうことで、休み時間に受講生同士の会話が始まるのではないでしょうか。授業中にグループワークが課せられた場合には、まさに会話のチャンスです。大いに、同世代や異世代の受講生と語り合って下さい。人は、同じ目的で前を向いている同士でつながりたくなるものです。全国各地から受講に参集されていますから、結構話題は面白いのではないでしょうか。談話できたチャンスには「どこから来たんですか?」「わたしは〇〇県からスクーリングに来ましたよ。」「△△が特産品で地元には絶景もありますよ。」とお国自慢で話を切り出すのも一案です。
  • 学びのポートフォリオを携帯しておく
    手帳や携帯に自分の興味あるテーマや趣味、これまで学んできた成果・作品等を写真付きで貼り付け、一種のポートフォリオのような履歴で自分紹介できるコンパクトな資料を作成しておくといいですよ。知り合いを増やすためにも、自分がどんな学びを励んでいるか、趣味は何かを相手に知ってもらうことって大事です。ひょっとしたら、「あの授業は私も受講していました。〇〇について、あの先生に解説は面白かったね。」「わたしも△△に興味あるんだけれど、あなたのコレクションはすごいですね。」などといった共感が得られたら、知り合いから友達に一歩近付きます。対人関係を磨くのが苦手な人ほど、ポートフォリオの携帯は必要なのではないでしょうか。

玉川大学は、教員養成では優れた視座を持っています。玉川モットーや小原國芳先生の言葉も大事にしてください。普遍的な価値や教訓が感じられるからです。不確実で答えなき時代を生きていく上で、学び続ける姿勢こそ本当の学力と言えるかもしれません。自信をなくしくじけそうになる瞬間が誰にでもあります。でも、何のために通信教育課程に入学したのか、の原点に立ち返り、自分を律することを続けてください。

プロフィール

  • 教育学部教授
  • 筑波大学大学院修了。教育学修士。
  • 専門は、社会科教育、生活科教育、人文地理学、環境教育論など。
  • 愛知教育大学教授を経て現職。
  • 著書:『子どもの初航海―遊び空間と探検行動の地理学』(古今書院)、『思考力が育つ地図&地球儀の活用』(教育出版)などがある。
  • ⽇本社会科教育学会評議員、日本地理教育学会常任委員など