博物館の世界へようこそ!

2022.08.01
宇野 慶

博物館には資料の収集、保存、調査研究、教育活動といった基幹的な役割に加え、本年度(2022)年には博物館法の一部が改正されて文化観光や博物館資料のデジタルアーカイブの取り組みが求められるようになりました。玉川大学の通信教育課程に学芸員コースでは、こうした様々な博物館業務に対応出来るように多様な講師による科目開講やスクーリングが実施されています。本学の学芸員コースでは、本学教員に加え、現職の美術館学芸員の方を講師にお招きするなどして、様々な観点から博物館の知識を伝え、技術を身につけることが出来るように工夫をしております。
実際に学芸員コースの教育活動に関わって気づくことは、様々な立場の受講生の皆さんが高い自覚と目的意識をもっていることです。受講生のなかには、博物館を創設する予定の方、実際に博物館に働いていて学芸員資格取得を目指す方、県庁や市役所に勤務されており博物館と関係する仕事をしている方、これから博物館の就職を目指している方、学校教員の方、企業の広報担当者の方、定年退職されて趣味として博物館の事を学びたい方等、様々な方がおられます。通信教育課程では個別学修が中心となりますが、スクーリングの時には是非とも他の受講生と交流を深め、学びの情報を共有して、お互いに敬意をもつようにして頂けると嬉しいです。
博物館学を学修し、理解を深めるには、理論的な内容ととともに、技術的・実践的な内容も必要です。こうした学修を行なう場がスクーリングです。スクーリングでは実物の土器や美術資料を取り扱い、和装本の修復を行ない、博物館をめぐる様々な課題に対して受講生同士が意見を交わします。全国に在住する様々な受講生がグループをつくって、複数の講師から指導を受けます。スク―リングは普通では体験出来ないようなことをしますので、とても実りある体験になると思います。
皆さんは通信教育課程の学修だけでなく、主体的に博物館見学をすることをお薦めします。といっても、それは展示物を漠然とみることではありません。展示は実物資料のほか、複製資料、ジオラマ、模型、映像、解説パネルや解説シート、音声ガイドといった様々な構成物から成り立っています。展示のストーリー展開(これを展示構成といいます)にも注目してみましょう。資料や解説パネル等も、よく観察すると人が見やすいように工夫されています。照明にも関心を払いましょう。美術作品の展示では会場が暗いことがありますが、なぜなのでしょうか。展示会の付帯事業としてギャラリートークやワークショップにも参加してみましょう。このように受け身の学修ではなく、主体的な意識をもって学ぶことも大切なのです。もちろん、中には優れた展示とはいえないものもあるかもしれませんが、改善すべき点の多い展示も実際に見て、評価することにより、展示のあり方に対する理解が深まるはずです。また、学芸員資格を取得するにあたっては、展示だけでなく、博物館の立地、施設、サービス等、博物館を様々な角度から見学することも大事だと思います。
学びに年齢は関係ありません。さあ、一緒に博物館のことを学びましょう。

プロフィール

  • 教育博物館 教授
  • 最終学歴:上智大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了
  • 専門:宗教史 博物館教育論
  • 著書:柿﨑博孝 宇野慶 高橋愛『博物館教育論』玉川大学出版部、2022年。
  • 通信教育課程では「博物館教育論」。学部では「博物館資料論」を担当。