休養の重要性〜アクティブレスト(積極的休養)のススメ〜

2023.03.01
阿部 隆行

 2022年度より教育学部教育学科に着任しました,阿部隆行と申します。私自身玉川大学出身で,卒業後は,保健体育科教員として中学,高校,特別支援学校,教育委員会などで15年間公教育に携わってまいりました。専門は,体育スポーツ教育学,教師教育学です。特に最近は,子どもや教職員のウェルビーイングについて興味があります。
 さて,コロナ禍における生活の変化,学校のDX化によるデジタル疲れ,座位時間の増加など,大人も子どももこれまでになかった健康リスクを抱えています。特に「座りすぎ」による健康への悪影響は深刻で,座りすぎによって心身に疲労が蓄積して調子を落としたり,健康を害したりする恐れがあります。ちなみに日本人の成人が1日に座っている時間は約7時間で,座位時間が世界一長い国民とも言われています(岡,2017)。
 では,疲労が蓄積している時にはどのような行動を取れば良いのでしょうか?例えば,休日にベッドやソファで横になりながらスマホで動画を観る,家でのんびり過ごすなど,あまり身体活動の少ない休養(消極的休養)も良いですが,逆に休み明けにダルさが増してしまった経験をしたことはありませんか?
 実は,ウォーキング,ジョギング,趣味などで少し体を動かす「積極的休養=アクティブレスト」を行なった方が,単に横になるなどの消極的休養よりも疲労回復が期待でき,より高いパフォーマンス発揮につながるという報告もあります。
 最近では,休養の重要性について様々な角度から探究する「休養学」という学問領域が注目されつつあります。杉田・片野(2021)は「休養モデル」として「休息型」「運動型」「栄養型」「親交型」「娯楽型」「造形・想像型」「転換型」の7つの型を示しています。私は,この休養モデルの中で特に,「運動型」と「親交型」に注目しています。具体的な方法は以下の通りです。
①運動型
 疲労回復を目的とする場合の運動は,時間や強度はあまり気にせず,心地よい汗をかくくらいのウォーキングやジョギング,軽めのストレッチングが効果的です。また,座位時間が続いたら,立ち上がって周囲を少し歩き回ってみたり,その場でストレッチングをしてみたりと気分転換を図ることも重要です。
②親交型
 コロナ禍でコミュニティが分断されてしまいましたが,趣味などのサークル,地域のイベント,ボランティア等に積極的に参加して人や地域との繋がりを持つことも有意義だと思います。また,舗装されていない林間コースなどをランニングしたり,様々な動植物を見たり触れたりして,自然や生き物とのふれあいによる心身リフレッシュを図ることもお勧めです。

 玉川の丘は,自然が豊かで多くの動植物が生息しています。大学でのスクーリング等で座位時間が続いたら,気分転換を兼ねて玉川の丘を散策するなど「アクティブレスト」を実践してみてはいかがでしょうか?

<参考文献>
・『休養学基礎−疲労を防ぐ!健康指導に活かす』杉田正明・片野秀樹編著,メディカ出版
・『疲れたときはカラダを動かす!−アクティブレストのすすめ』山本利春著,岩波書店
・『「座りすぎ」が寿命を縮める』岡浩一郎著,大修館書店

プロフィール

  • 教育学部教育学科 准教授
  • 最終学歴:東京学芸大学大学院修士課程修了、同博士課程単位取得退学、修士(教育学)
  • 専門:体育スポーツ教育学、教師教育学
  • 職歴:
    ・東京都立府中朝日養護学校 教諭(保健体育)
    ・東京都立両国高等学校附属中学校 主任教諭
    ・東京都立永山高等学校 主幹教諭
    ・東京都教育庁指導部高等学校教育指導課 課長代理
    ・東京学芸大学次世代教育研究推進機構 専門研究員
    ・東京国際大学人間社会学部スポーツ科学科 准教授
  • 著書:
    ・『中学校・高校の体育授業づくり入門』(第二版) 学文社 2019年
    ・『子どもの未来を創造する体育の「主体的・対話的で深い学び」』創文企画 2017年
    ・『運動部活動の理論と実践』 大修館書店 2016年
    ・『ジュニアアスリートをサポートするスポーツ医科学ガイドブック』MEDICAL VIEW
    ・『ビジネスのハイパフォーマンスは「体育」が教えてくれる!』大学教育出版 2022年
  • 学会活動:
    ・日本体育・スポーツ・健康学会
    ・日本体育科教育学会
    ・日本スポーツ教育学会
    ・日本教師教育学会