通大生からの風

2024.02.01
高島 二郎

 私の教職員番号は900×××です。1990年から玉川大学にお世話になっています。2~3年は非常勤での勤務でした。常勤になりすぐに通大の夏期スクーリングで体育実技を担当しました。同時にレポート添削、科目試験の作問、採点を始めました。先日、最後のテキスト履修のシラバスを提出しました。夏期スクーリングは(教科)体育を担当するようになり、ここ数年は教育学演習をやっていました。演習では初日か2日目に必ず教育学術情報図書館の利用ガイダンスを計画します。図書館の森課長に講師をお願いし、図書館の機能や資料の探し方、データの流れなどを教えて頂きました。「通大の学生はガイダンス後、頻繁に図書館を利用していますよ」と報告を受けます。通大生の学習意欲、探求心の高さを実感しています。その結果、5日目、6日目の研究成果発表会はいつも素晴らしい内容です。

 (教科)体育ではよく漫画を教材として使いました。主に『SLAM DUNK』(井上雄彦,ジャンプ・コミックス,集英社,1990-1996.)を用いることが多かったです。身体運動における神経系や筋肉の関わりについて、流川君の「体がおぼえてら」のセリフ、安西先生はなぜ花道に勝ったについて、右の図を使いました。神経系の関与が大きい「調整力」はいったん身につければなかなか忘れないようです。自転車乗り水泳のフォームなど一生ものの財産ですね。見方を替えれば間違ったことも体が覚えてしまいます。箸の使い方、漢字の書き順など正しい方法を教えてあげましょう。ただし修正はききますが。ジャンプの高さに関する考察では、「高い、速い」というセリフを使いました。運動エネルギーが位置エネルギーに変換する。つまりからとなります。ジャンプ力は質量に関係なく、ジャンプ時の初速に関係することが分かります。
 これらはほんの一部です。すると、ある年のスクーリングの授業の時、私より年上の受講生の方から「漫画を授業に使うのはいかがなものか」といった意見を頂きました。全ての授業が終わった後だったので、ゆっくり意見交換ができませんでした。そもそも私が漫画に興味を持ったのは大学生の時の運動生理の授業でした。子どもの顔を描くコツを知っているか?という問いかけでした。目線を顔の半分より下に書くんだよ、と教わりました。観察力の鋭い漫画家さんはちゃんと目線を下に書いているよ、ともおっしゃいました。それ以前にも漫画は好きでしたが、何か学術的に興味深いものはないかという視点で楽しむようになりました。野球漫画、サッカー漫画、女子柔道等、漫画の影響で国際的に強くなったと予測できるスポーツ種目が日本には多いですね。最近は、前述の「SLAM DUNK」でバスケットボール、「ハイキュウ」でバレーボールが強くなっているように思います。誰かこの分野で研究してくれないでしょうか?
 以上のことを考えていたら、大切な漫画を忘れていることに気づきました。大学の同級生で、中央大学教授の市場俊之先生(本人もスポーツ史の視点で出演しています)からきいていた、『ガンバ!Fly high』(森末慎二,菊田洋之,少年サンデーコミックス,小学館,1994-2000)です。体操競技の内村航平選手と金メダルとガンバ!Fly highの関係を、NHKの番組「ぼくらは漫画で強くなった」で紹介しています。2015年放送の番組です。みなさんも機会があったらぜひ視聴してください。
 違う話題になります。ねぎらいの言葉に「おつかれさま」を使いますか。高校生か大学生のころ高校の恩師に「おつかれさま」を使っている所をみつかり、叱られたことがあります。「ご苦労さま」を使うようにとのことでした。玉川でお世話になると多くの方が「おつかれさま」を使います。何故だろうといつも思っていました。「ご苦労さま」が間違いかなとも思いました。2013年頃、ラジオを聴いていたら久米宏さんが、「考証要集-秘伝!NHK時代考証資料-」(大森洋平,文春文庫,2013)を紹介されていました。61頁に「おつかれさま」について「これは日本の一般的伝統的なねぎらいの言葉ではない。(中略)いまでこそ立派に市民権を得ている『おつかれさま』だが、その時分はもっぱら藝会や、水商売の世界で用いられていて、(後略)」とあります。「ごくろうさま」を使ってもよいのだと分かり、ホッとしました。時代によって言葉の使い方、漫画の捉え方が変化するのは仕方ないと思います。しかし、私は「ごくろうさまです」「ご苦労をおかけしました」の方が心地よく感じます。スクーリングで私に「漫画はチョット…」と声をかけてくれた受講生の気持ちがよく分かります。指摘してくれて本当にありがとうございました。

プロフィール
  • 所属:教育学部 教育学科
  • 役職:教授
  • 最終学歴:東京学芸大学大学院修士課程教育学研究科
    保健体育専攻学校保健学専攻
  • 専門: 学校保健、発育発達
  • 職歴:
    ・1993年4月 玉川大学文学部教育学科 講師
    ・2012年4月 玉川大学教育学部乳幼児発達学科 教授
    ・2022年4月 玉川大学教育学部教育学科 教授
  • 著書:
    ・小学校指導法体育,共編著,玉川大学出版部,2022.
    ・玉川百科 子ども博物誌 頭と体のスポーツ,共著,玉川大学出版部,2018.
  • 学会活動:
    ・日本児童学会 理事
    ・日本体力医学会