シンク・ペア・シェア+α

2024.07.01
田畑 忍

議論を進める方法はいくつもありますが、私の担当する授業では、「シンク・ペア・シェア」を大切にしてもらっています。シンク(=一人で考え)、ペア(=ペアで話し合い)、シェア(=グループまたは全体で意見を共有する)というものです。

一人で考える(=シンクを大切にする)理由は、(明確にならなくても、まずは)自分なりの意見(考え)を持つことが大切だからです。
意見を持たずに議論に参加すれば、メンバーの意見を聴くだけで終わってしまうかもしれません。なぜならば、メンバーは(変な意味ではなく)良い感じの意見を言ってくれるからです。
しかし、(明確ではなくても)自分の意見を持っていたらどうでしょう。
メンバーの意見を聴いた時、「この部分は似ているな」「そんな視点もあるのか…」「考えが少しはっきりしてきたぞ」「私とは反対だな」など、自分の意見をもとにメンバーの意見を聴くことができます。
そのためにも、まずは自分の意見を持つことが大切だと思うのです。

ペアで話し合う(=ペアを大切にする)理由は、不安の少ない状況で、自分の意見を言ってみることができるからです。
みなさんは、(頭の中で)考えていたことをいざ話そうとした時、うまく話すことができなかったという経験はないでしょうか。私は、そのような経験を何度もしました。その結果、人前で話すことが嫌になった時期もありました。(実は、今もアドリブは苦手です)
ペアですので(相手と自分だけですので)、自分の意見を言ってみる(発信してみる)というハードルは少し下がります。
また、実際に言葉にしてみることで、自分の意見(考え)を整理することができたりします。
そのような時間を持つためにも、ペアで話し合うことが大切だと思うのです。

グループまたは全体で意見を共有する(=シェアを大切にする)理由は、さまざまな意見に触れられるからです。
シェアでは人の意見を聴くだけではなく、自分の意見を多くの人に発信する時もあります。それが自信につながったり、さまざまなコメント(フィードバック)を得ることができたりするというメリットもあります。
そのような経験してもらうためにも、グループまたは全体での意見の共有は大切だと思うのです。

私たちは他者(の意見など)から多くのことを学びます。
上ではシンク・ペア・シェアを紹介しましたが、どのような方法であっても、議論の後に大切にしてほしいのが「再考」です。
(シンク・ペア・シェアの場合は)「一人で考え、ペアに話して意見(考え)を整理して、さまざまな意見を聴いて…その結果、どう思うようになった?」という部分です。
この時、それまでの意見が揺れ動いていても良いと思います。(シンクで考えた意見が)変わっても良いですし、より強くなっても良いと思います。
議論の結果、(その時点で)どう考えるようになったのかを確認することが大切だと思うのです。
スクーリングなどの議論の場面では、学びを深めるためにもぜひ、議論後の「再考」(+α)を大切にしてみてください。

プロフィール

  • 教育学部教育学科 通信教育課程 教授
  • 三重大学大学院 教育学研究科学校教育専攻 修士課程修了。教育学修士。
  • 三重大学大学院 工学研究科システム工学専攻 博士後期課程修了。工学博士。
  • 専門は、教育工学、教育方法学。
  • 皇學館大学・名古屋女子大学非常勤講師などを経て現職。
  • 論文に『ステップごとの解説の作成と相互評価をとり入れた問題づくり授業』『ワークブックを用いた演習を支援するシステム-教師による直接指導と同等の支援を目的とした演習支援システム-』などがある。
  • 学会活動:日本教育工学会、コンピュータ利用教育学会、日本協同教育学会、大学教育学会 会員