スクーリングで気づかされること
2025.03.01
久保 紘子
2024年4月に教育学部教育学科准教授に着任いたしました久保紘子と申します。これまでもレポート添削、夏期スクーリングで「教科音楽」「音楽科指導法」を担当してまいりました。引き続きレポート添削、スクーリングを担当いたしますのでよろしくお願いいたします。
夏期スクーリングの授業は年1回、私にとって特別な授業です。社会経験が豊富で、人生の先輩が受講生に多くいらっしゃる授業はとても緊張します。まだスクーリングを担当しはじめの頃、息子は小学校1年生でした。息子には小学校に併設されている子育て支援施設に行ってもらうのですが、私の朝出る時間が早すぎて支援施設は開いていません。施設が開くまでの時間、息子は近所の同じ支援施設に行く同級生のお宅に預かっていただいていました。本当にありがたく、この仕事は決して自分の力だけではできない、とスクーリング授業内でお話したことがありました。すると、その話を大きく頷きながら聞いている受講生がいらっしゃいました。あとから、子育てがひと段落して教職を目指している方、お子さんを預けて勉強に励んでいる方がたくさんいることを知り、その姿に大きく励まされると同時に、気が引き締まったのを覚えています。
夏期スクーリングではせっかく対面で集まった受講生ですので日頃の通信教育では味わえないことをしていただきたく、毎年ボディーパーカッションのグループ発表を課題にしています。「ちょっと難しい」レベルの曲に挑戦していただくので、この課題を発表すると教室に緊張が走ります。初めて会って年齢も出身もバラバラ、音楽の知識もバラバラの8名ほどのグループに分かれて最終日の発表に向けて毎日練習をします。最初こそぎこちないコミュニケーションですが、自然とリーダーが生まれ、助け合いが始まります。教室に早く来て自主練習に励む姿、グループメンバーを誘って練習する姿、普段は交流することが少ないであろう親子ほど年の離れた方たちが一緒に頭を抱えて取り組んでいる姿がみられるようになります。そして練習中や休み時間に音楽の課題以外の会話も増えていき、わずか数日間で私が入れないほどのチームの輪をどのグループも築いていきます。
音楽はずっと人類とともにありました。その理由の一つを目の当たりにしているように皆さんの姿を見ていつも感じています。わずか6日前までは知らなかった人たちが出身、年齢、性別、何もかも関係なく1つの音楽をつくることに熱中し、集団の力を強めていく。音楽の持つ力の一つです。
会社員生活をしてから、親になってから、子育てがひと段落してから、教職を目指すことは素晴らしいことですが、その道が平坦でないことも想像に難くありません。お仕事が終わってから、お子さんを寝かしつけてから、勉強に励んでおられるのかと思うと頭が下がります。でもだからこそ、教職に就かれたときに出来ることがたくさんあるのだろう、とも思います。
夏期スクーリングを終えて全国各地に戻って教職を目指している方々のことを思いながら、私も皆さまの想いに恥じぬよう、学校音楽教育の未来が明るくなるよう研究を努めて参ります。
プロフィール

- 教育学部教育学科 准教授
- 最終学歴:国立音楽大学大学院音楽研究科声楽専攻オペラコース修了 修士(音楽学)
- 専門: 声楽
- 職歴:
・立教新座中学校高等学校特別任用講師
・立教池袋中学校高等学校非常勤講師
・聖園女学院中学校高等学校教諭
・慶應義塾湘南藤沢中等部高等部非常勤講師
・玉川大学教育学部非常勤講師
・玉川大学教育学部准教授 - 著書:
・『小学校指導法「音楽」』(共著)第2章、第7章執筆 玉川大学出版部
・『誰でもすぐ弾けるピアノ伴奏』(共著)kmp出版
・『続・誰でもすぐ弾けるピアノ伴奏』(共著)kmp出版 - 学会活動:
・全国大学音楽教育学会
・日本児童学会