理科指導法と教科理科第一分冊レポートの指導法の研究(工夫)

2025.06.01
酒井 浩明

私は、小学校教諭となってすぐに、横浜市小学校理科研究会に所属し、授業実践を通した「理科指導法」(「教科理科」の教材研究も含む)の研究をしてきました。特に、単元の導入に焦点を当て、子どもと問題をつくり実験計画を決めるまでを1・2時間で行う単元開発に取り組んできました。

実践例は、「横浜版学習指導要領 指導資料 理科編」等に、いくつも掲載していますが、2つを示すと、

  • 例①
    小学校3年「電気の通り道」で、演示前に「したいこと」を聞きかせてと言ってから、「獅子舞型のテスター機能をもつ自作おもちゃ」を演示し、問題と単元計画を1時間でつくりあげる。
  • 例②
    小学校4年「季節と生き物」で、窓を開けた教室で、「今日は寒いね。冬だよね。」と、児童の体感温度の差を引き出し、「季節を決めるために温度と動植物調べをする」活動へと導入し、春の観察計画も1時間で立てる。そして、夏の観察の導入は、春の観察の最後に行い、気温の変化に着目させ、子どもたちに夏の観察開始時期の決定を任せる。

です。

現在の私は、玉川大学の通信教育課程で、「TT0462教科理科 第一分冊(物理・化学)のレポート」を担当して3年目となります。ここでは、「レポートの指導法の研究(工夫)」をしています。

このレポートは、4つの課題の中から2つを選び、自宅等で理科実験を行い、実験の様子や実験結果・考察等を、写真や表・グラフを使ってまとめたレポートを提出します。

テキストには、理科(物理・化学)の基本的な内容は書かれていますが、レポートの課題に直接かかわる実験方法や、レポートの具体的なまとめ方などは書かれていません。

このレポートの添削担当となった初年度は、課題の意味の取り違いや、実験をせずに論文のように文のみのレポートも多く見られ、添削前任者の苦労が偲ばれました。

私は、そのようなレポートが提出される原因は、課題の把握の誤りとともに、今までの小・中・高校の理科授業で、教科書を見てその通りに実験をして、板書を写したり、形式を印刷されたプリントを穴埋め式に書いたりしてきたからだと考えました。

そして、正しく課題把握ができるようにするとともに、理科の実験レポートの役割である「その場にいない人に、自分がした実験とその結果がよく伝わるように、レポート内容を構成して書き表す力」を、学生が身に付ける「レポート作成参考資料」が必要ではないかと考えたのです。

そこで、すぐに参考資料をつくりはじめ、2024年4月から「Edu Track」の講義室に資料を掲載し、現在は2025年度版(全6ページ)での事前学修を促しています。

TT0462第一分冊レポートに取り組みは、『急がば回れ』です。
「レポート作成 参考資料」をしっかりと事前学修し、課題を正しく理解してレポート作成計画を立て、効率的に実験を行って結果を整理し、課題に適した考察を楽しく書けるようにしましょう!

プロフィール

  • 所属:教師教育リサーチセンター 教職サポートルーム
  • 役職:客員教授
  • 最終学歴:
    東京学芸大学教育学部初等教育教員養成課程理科専修 卒業(教育学士)
  • 専門:理科教育
  • 職歴:
    ・横浜市立学校 教諭
    ・主幹教諭
    ・横浜市立学校 副校長
    ・横浜市教育員会 指導主事(主任・首席を含む)
    ・横浜市立学校 校長
    ・横浜市理科支援員
    ・玉川大学教師教育リサーチセンター 客員教授
  • 著書等:
    ・「横浜版学習指導要領 理科編」 横浜市教育委員会 (編共著) ぎょうせい(2009)
    ・「横浜版学習指導要領 指導資料 理科編」 横浜市教育委員会(編共著) ぎょうせい(2010)
    ・「横浜版学習指導要領 評価の手引」 横浜市教育委員会 (理科部分編共著) ぎょうせい(2011)
    ・「小中学校理科 安全な観察・実験指導の手引」 横浜市教育委員会(編共著)横浜市立学校配付(2012)
    ・「令和二年度版 小学校理科指導・指導評価計画事例集」(編共著) 横浜市小学校理科研究会(2020)
    ・「はじめての理科」(分担執筆) 東洋館出版社(2025)
  • 学会活動:日本理科教育学会 会員