地域をつなぐコミュニティラジオ―ラジオパーソナリティとして―

2025.11.01
原田 眞理

本学でも2019年以来久しぶりの避難訓練が11月に行われる予定です。自然災害はいつ来るか予測できず、私たちの当たり前(日常)を容赦なく奪っていきます。そのためにも、なるべく被害を小さくするべく、日頃から防災を考えることがとても大切です。

コミュニティラジオ

防災や災害の対策の一つに、地域のニュースを伝えるコミュニティラジオというものがあります。最近はインターネットやアプリで地域を問わず聴くことができるようになっています。災害の際に非常に有用な情報を流すのがこのコミュニティラジオなのです。たとえば、地震の際の避難所情報、生存者の名前、自衛隊の援助が来る時間など、地域の人にとって非常に大切な情報を24時間で流し続けることができます。それ以外でも、地域のイベントや安売り情報なども提供し、地域に密着し、観光、行政、交通などの情報を流し、日々の生活を支えます。

『コミュニティ放送局は、市区町村内の一部の地域において、地域に密着した情報を提供するため、平成4年1月に制度化された超短波放送局(FM放送局)です。コミュニティ放送局は、地域の特色を生かした番組などを通じて地域のきめ細かな情報を発信する事ができるので、豊かで安全な街づくりに貢献できる放送局です。コミュニティ放送局は、空中線電力が20W以下で必要な放送エリアをカバーできる必要最小限のものとしており、総務大臣の免許を受けて運用される民間の放送局です。コミュニティ放送局はFM放送の周波数帯を利用して放送を行うため、一般に市販されているFMラジオで聴くことができます。』(総務省電波ポータルより引用)

平成4年すなわち1992年1月に開始されて以来、1995年の阪神淡路大震災、それ以外の自然災害の影響もあり、1996年からコミュニティFMは急増し、大規模自然災害が増え続ける中でコミュニティFMの開局を検討する自治体や地域の企業が増えているそうです。2024年12月時点で全国に345局があるそうです。表にコミュニティ放送事業者数を都道府県別で示します(総務省電波利用ポータルより引用)。

マリンFM

マリンFM ハンマーヘッドスタジオにて

その一つに、横浜のマリンFMという局があります。「つながる地域の放送局 マリンFM」をキャッチコピーにしているようですが、『人と人がつながる、人と地域がつながる、つながりがなければ、まち(地域)は活性化しません。』というようにつながりを重視しています。また元々は東日本大震災で福島のコミュニティラジオを知り、横浜にはないことが重大なことと考えた社長笹原氏が7年という年月をかけて開局にこぎつけたそうです。マリンFMは防災ラジオの機能も持っているので、地震や台風などの災害発生時に防災・緊急情報を地域住民に迅速に伝えることを目的の一つとしています。たとえばスタジオの中には地震が起きた時の放送内容が貼ってあります。「地震です。スタジオは揺れてます。落ち着いて、まず身の安全を図ってください。姿勢を低くして、特に頭を守ってください。〜〜〜」という内容です。この辺りに私自身がこれまでしてきた自然災害の支援とつながるものがあり、2020年10月から「ミューズ心の相談室」という30分の番組を担当させていただいております。現在も火曜日12時から(再放送日曜日午前7:30から)、「心理学と音楽を通してこころを身近に感じましょう」というテーマで番組を担当しています。震災などの際に生じるトラウマやPTSDについて、いじめや不登校などの学校内の問題、発達障害や特性を持った子どもについて、保護者の相談などいろいろなテーマでこころを解説しています。平日のお昼ですが、思い出された時に聴いていただき、ご一緒に、目に見えない心を探ってみましょう。そして、これをきっかけに、ご自身のお住まいの地域を知り、防災について改めて考えていただきたいと思います。

プロフィール

  • 教育学部教育学科 通信教育課程 教授
  • 東京大学大学院医学系研究科(心身医学講座) 博士(保健学)
    日本臨床心理士資格認定協会臨床心理士
    公認心理師
    日本精神分析学会認定心理療法
  • 専門は精神分析、臨床心理学、教育相談、医療心理学。災害関係のトラウマについて研究しているが、特に東日本大震災後の在京避難者支援を行っている。
    東京大学医学部付属病院分院心療内科、虎の門病院心理療法室、聖心女子大学学生相談室主任カウンセラーなどを経て現職。
  • 著書:『子どものこころ、大人のこころー先生や保護者が判断を誤らないための手引書』『子どものこころ―教室や子育てに役立つカウンセリングの考え方』『 グローバル化、デジタル化で教育、社会は変わる』『改訂第2版教育相談の理論と方法』『女子大生がカウンセリングを求めるとき』『カウンセラーのためのガイダンス』など(含共著)
  • 学会活動:日本心身医学会、日本精神分析学会、日本心理臨床学会 会員