子供の学びを考えた教育活動を目指しましょう

2026.01.01
余郷 和敏

 教職歴が長くなると、新規採用教員や若手教員の指導に当たることが多くなります。ある程度の教職経験になると学校現場では教育実習生の指導の機会も増えます。また、リサーチセンターに着任してからは、担当する学部生や通信教育課程生の教育実習に当たり指導校訪問で年に何度も教育実習校に授業参観に伺っています。
 学校訪問では教育実習生の国語科の授業を拝見する機会も多いのですが、活動の始めによく行われるものとして「一文交代読み」(いわゆる丸読みと称されるもの)があります。授業でこの活動を見る度に実習生には「活動で取り入れた一文交代読みは効果がありましたか」「何のために一文交代読みをしたのですか」と問いますが、その答えとしてよく返ってくるのが「これまで自分が経験してきたから」「いろいろな児童に声に出して本文を読ませたかった」「順番に読むことで緊張感を持って本文に向かい合えるから」というものです。しかし、実際の児童は「自分の順番を数えて、読む場所を探している」「あと何人目だと緊張して自分の番が来るのを待っている」ということが意識の中心となり、教師が期待している「教材文と向き合う」「教材文の内容を把握する」という視点から外れた活動をしています。実際に読む際には読み間違ってしまい、そのことを教師や周囲の児童から指摘されて読むこととは違う感情をもったり、無事読み終わったので緊張はほぐれてほっとしたりした状態になっているということもあります。
 さらに、「一斉読み」という教室の児童が一斉に声を揃えて教材文を読む活動を見ることもありますが、「一斉読み」は「自分は読まなくても教室全体の音読は進んでいくので読まないで済ませられる」や「一斉読み特有の適切ではない読み癖が出る」などの悪しき特性が出てきて、教師は読ませた気になっていても、児童は適切に音読できていないので、「音読として読みを深める効果がほとんど出ない」「教師だけが納得している音読になる」ことが多いのです。
 教材文に向き合い、内容をきちんと把握させたいならば「教師が範読をして」正しい読み方の見本を示していくことが重要になりますし、自己内対話を促すためならば「微音読」で自分の声を自分の耳で聞いて理解を図ることが必要になります。
 丸読みや一斉読みは、「ルールに従い集団で活動するための方法を指導する」ためには効果のある方法の一つにもなりますが、国語科の求める「読み」を深めるための指導としては効果が無いといってもいいでしょう。
 教育活動は計画的で実践的であること必要ですが、計画を立てる段階でその活動がどのような教育的な効果があるのかを考えていかなくてはいけません。教師のこれまでの経験をそのままなぞるのではなく、「この教育活動ではこの活動を行うことでこのような効果が期待できる」としっかり精査・分析して、適切な活動を行っていく必要があります。これまでの既知のものや既習のものを、無批判に惰性で取り入れることは、児童の学習を充実させていくものはなりません。
 教育実習の指導校訪問で授業を拝見した後で実習生と振り返りの時間をもって授業反省と授業評価をすることがありますが、その時によく実習生に問うのが「○○の活動の目的は何かな」ということです。国語科では様々な活動を行いますが、その一つ一つに意味があり、その活動を通した教育効果が期待できなければなりません。単なる自分の経験を再生するのではなく、「この活動を通して○○の力をつけていきたい」と教師は願い続けて教育指導の計画を立案して欲しいと思います。

プロフィール

  • 所属:教師教育リサーチセンター教職サポートルーム
  • 役職:客員教授
  • 最終学歴:東京学芸大学初等教育教員養成課程国語専修(教育学士)
  • 専門:国語教育、教育管理職研修
  • 職歴:
    ・東京都公立小学校教諭
    ・東京学芸大学附属竹早小学校教諭
    ・東京都公立小学校主幹教諭
    ・東京都公立小学校副校長
    ・東京都公立小学校校長
    ・大田区適応指導教室「つばさ」教育相談員
    ・玉川大学教師教育リサーチセンター 客員教授
  • 著書:
    ・これからの働き方を変える! できる教頭・副校長の仕事のワザ102(教育開発研究所 2025)
    ・教頭・副校長 1年目のあなたに伝えたいこと(教育開発研究所 2022)
    ・働き方が変わる! できる教頭・副校長の仕事ワザ97(教育開発研究所 2019)
    ・学びを創る国語教室2(三省堂 2001 共著)
    ・子ども文化と国語教室(三省堂 1997 共著)
    ・子供が生きる学習活動の開発(明治図書 1995 共著)
  • 学会活動:
    ・東京学芸大学国語教育学会(会員)
    ・東京都国語教育研究会(事務局長)