SDGsへの取り組み

Society 5.0時代の産業基盤に不可欠な暗号通信技術(光通信量子暗号)の開発

2021.05.13

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Society 5.0に代表されるこれからの超スマート社会では、IoTにより身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながり、金融決済や個人情報等の多くの重要な情報がやり取りされます。そしてこの仕組みを基盤として支えるのが世界中に張り巡らされている光ファイバを用いた通信システムです。より安全・安心な通信インフラの実現に向けて、光ファイバ通信のセキュリティ向上は重要な課題です。
そのような課題に対し、通信回線を守る究極の暗号技術として開発されたのがY-00光通信量子暗号です。玉川大学ではそのファウンダーとしてY-00光通信量子暗号の研究に基礎理論の確立から応用展開まで一貫して取り組んでいます。

70年代半ばから初代量子情報科学研究所長を務めた廣田修教授(現名誉教授)が量子通信の基礎研究を開始。本学の研究活動の中心的役割を果たしながら、量子通信分野の研究発展に寄与してきました。
1990年、玉川大学が量子情報に関する世界最大の量子通信国際会議を創設。20年にわたりその運営を行い、2008年に国際運営委員会を設立し、その運営を同委員会に委譲しました。この会議を通して量子情報科学の基礎的な学問が急速に発展し、幾つかの魅力的な技術が出現しました。特に量子暗号は今日のネットワークの安心・安全を実現する基幹技術となり得るものと期待されています。

Y-00光通信量子暗号では、通信文を暗号用の数学によって設計された通信装置で暗号化します。さらに、その暗号文が物理現象である量子雑音によって隠されます(物理的暗号化)。その暗号文が量子雑音によって完全に隠されたとき、暗号文ですら復元することが不可能となります。一方で、正規の受信者は通信文を正しく復号できます。まさに”謎”の暗号なのです。

量子情報科学研究所ではこの技術の実用化に向けて、研究活動を展開しています。
2016年、世界で初めて、ランダム化機構を組み込んだギガビットイーサネット(GbE)対応の量子エニグマ暗号トランシーバ(TU Cipher-0)の開発に成功。それ以降このトランシーバを用いた実証実験に注力してきました。
2020年3月にはY-00光通信量子暗号をマイクロ波通信への応用に成功。同年12月には、Y-00光通信量子暗号を用いた光ファイバ通信で太平洋横断級の10000km超の安全な通信に成功し、実用化は目の前に来ています。

玉川大学量子情報科学研究所では、量子情報理論とそれらから導き出される新原理の実証実験を行う量子情報数理研究センターと、実証された新原理の社会実装を目標に国内外の企業と積極的に共同研究を行い、試作から製品化まで一貫した研究開発を実施する超高速量子通信研究センターを設置しております。このように基礎研究と実用の両輪を備えた研究体制が整って、これからも安全・安心な通信技術の確立に向けてY-00光通信量子暗号の確立と実用化に向けて研究を展開し続けます。

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