SDGsへの取り組み

閉鎖循環式陸上養殖システムでアワビ養殖に挑む、農学部「アクア・アグリステーション」での取り組み

2021.05.13

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人口増加による食料不足は、世界的な課題です。十分な量の食料を生産するためには、生産性を高めるか、より多くの場所で食料生産をできるようにするしかありません。環境に配慮しつつ、より多くの食料を確保できる生産技術の確立は喫緊の課題です。特に海洋資源は、自然災害や乱獲による個体数の減少、養殖では病原体の侵入による漁獲高の減少や餌の散布による海洋汚染といった問題を抱えています。2016年3月、玉川大学では、水を入れ替えずにポンプで循環させ、人の手で水質を制御するアクア・アグリステーションを設置。農学部先端食農学科を中心に陸上での閉鎖環境による水産資源養殖の研究を始めました。

海洋資源に関する諸問題を解決する方策の1つが水の浄化です。アクア・アグリステーションでは『ゴミを水流で巻き上げて物理的に取り除く技術』『排泄物などに含まれるアンモニア態窒素を、微生物を使って取り除く技術』『水が黄色く濁る原因となる難分解性の高分子物質を、電気分解で取り除く技術』を導入し、ほとんど水を入れ替えることなく、水質を維持することに成功しました。

このサスティナブルな水質浄化技術を活用し、2016年よりアワビの養殖をスタート。導入当初は約20,000個のアワビ(稚貝)を投入。2年間の成長を経て、2018年に初めて「玉川の丘アワビ」として加賀料理の大志満(株式会社大志満)のお節の食材として約1,700個出荷しました。
「玉川の丘アワビ」は、うまみ成分として知られているグルタミン酸含有量が他のアワビと比較し2-5倍という結果も出ており、養殖ならではの付加価値を数値としても出すことができました。

この施設は大学での研究活動での活用はもちろんのこと、幼稚園から大学院までワンキャンパスにある玉川学園の特性を生かし、児童・生徒の教育活動にも活用しています。2016年のアワビ導入式では、児童・生徒・学生の代表者がアワビの収容を学長とともに実施し、稚貝にナンバータグをつける作業も体験しました。

アクア・アグリステーションでの海洋資源に関する研究はアワビだけにとどまらず、トラウトサーモンの養殖も実験中。貝類だけでなく、魚類にも活用の可能性を広げています。今後も閉鎖環境での海洋資源生産を確立し、海から遠く離れた国や地域で展開できる「新しい水産業のかたち」を模索していきます。

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