昆虫の死にまねを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!

2019.10.07

本学大学院農学研究科の佐々木謙教授と農学部生物資源学科の日ノ澤祥悟さん(平成29年度卒業)は、岡山大学大学院環境生命科学研究科の宮竹貴久教授や東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの矢嶋俊介教授らと、“昆虫の死にまね”に関する共同研究を行い、その研究成果の一部を英国科学雑誌「Scientific Reports」 (https://www.nature.com/articles/s41598-019-50440-5) (2019年9月30日掲載、オープンアクセス)に発表しました。

コクヌストモドキ(岡山大学 宮竹貴久教授 撮影)

昆虫には捕食者に出会うと不動になり“死にまね”をする種がいます。これは捕食者の中に動かない昆虫を獲物と認識しないものがいるためで、被食者は“死にまね”によって捕食から逃れることができます。貯穀害虫の一種であるコクヌストモドキも死にまねをする昆虫です。この昆虫の死にまね時間を計測し、時間の短いものどうし、あるいは長いものどうしを同じグループにして継代飼育すると、死にまねを長くしつづける系統と死にまねをしない系統をつくることができます。これらの系統間で発現している遺伝子を網羅的に調べたところ、脳内物質の一つであるドーパミンの合成に影響を与える酵素遺伝子群の発現量が著しく異なることが明らかになりました。その結果、ドーパミンの量が系統間で異なり、死にまね時間に影響を与えることが分かりました。このように動物の行動に関わる遺伝子群がその生理機構も含めて特定されることは少なく、本研究は“死にまね”という捕食を回避する行動の進化を考える上で、とても重要な発見となりました。

論文タイトル

Transcriptomic comparison between beetle strains selected for short and long durations of death feigning.

著者

Hironobu Uchiyama, Ken Sasaki, Shogo Hinosawa, Keisuke Tanaka, Kentatou Matsumura, Shunsuke Yajima, Takahisa Miyatake*

  • 内山博允 
    (東京農業大学生物資源ゲノム解析センター)
  • 佐々木謙 
    (玉川大学大学院農学研究科)
  • 日ノ澤祥悟
    (玉川大学農学部生物資源学科:平成29年度卒業生)
  • 田中啓介 (東京農業大学生物資源ゲノム解析センター)
  • 松村健太郎
    (岡山大学大学院環境生命科学研究科)
  • 矢嶋俊介 
    (東京農業大学生物資源ゲノム解析センター)
  • 宮竹貴久*
     (岡山大学大学院環境生命科学研究科)
  • 責任著者
掲載雑誌

Scientific Reports (2019) vol. 9, article number: 14001, doi: 10.1038/s41598-019-50440-5