通信教育部

2013.11.11

「すぐれた教師が日本の教育を支える」、教育学分野で初の通信教育部が誕生

「殆んど自学だった私は、職を持ちながら勉強せねばならない諸君の苦しい境遇に対して聊かでも理解と同情が出来る。通信大学をはじめた大きな理由である。」-『玉川教育』昭和35(1960)年-。貧しい家庭の子弟にも教育の機会を与えたい、働きながら最高学府の教育まで受けさせたいという創立者小原國芳の思いが通信教育部の開設につながる。そして、今日、発展した玉川大学通信教育部(教育学部教育学科)は収容定員6,000人の規模を有して教育活動を展開している。

1.通信教育部設立の背景

夏期スクーリング開講式
昭和32(1957)年7月

昭和20(1945)年以降は戦後の混乱期にあって、日本中で教員が不足していた。とりわけ深刻だったのが小学校。教員免許を持たない者を教壇に立たせなければならない場合も多くあった。教員免許を取得したいという希望を持っていても、大学に通う金銭的・時間的余裕のない若者が多かった時代である。そんな時代にあって、教育立国論を獅子吼(ししく)して全国各地を講演行脚していた國芳は、教員の再教育の必要性を痛感し、旧制玉川大学や玉川工業専門学校の教授陣による「教育大学」を開設した。そして、昭和22(1947)年5月10日、玉川学園礼拝堂において「教育大学」の入学式が執り行われた。これは、わが国の教員養成史上、全く類例のない画期的な構想であった。

この玉川の教育展開とは別に、文部省は通信による教育をアメリカから移入し、制度化を検討していた。玉川でも通信教育の研究が進められ、昭和23(1948)年4月には「通信教育部」が設置されている。そして、教育大学の充実のため、各地分校での出張講義とともに、教科書にもとづく通信指導が行われるようになった。

2.通信教育部の設置認可

第1回スクーリング 受講者400人
昭和25(1950)年7月

昭和25(1950)年3月14日、通信による教育が日本で初めて文部省により正式に認可された。認可されたのは、玉川をはじめ、慶應義塾、中央、日本、日本女子、法政の6大学の通信教育部。その後通信教育部を設置する大学は徐々に増加していくが、特に平成12(2000)年以降急激に増え、平成24(2012)年度には45大学を数えるに至っている。

通信教育部が設置された昭和25(1950)年は、前述のとおり、まだ戦争の傷跡が色濃く残っている時代で、学校教員が圧倒的に不足していた。國芳の「すぐれた教師が日本の教育を支える」という信念の下、玉川大学は日本初の小学校教員免許を取得できる通信教育部をスタートさせた。

3.開設期の通信教育部

第1回卒業式
昭和29(1954)年3月29日
スクーリング中、図書館で自習
昭和25(1950)年7月頃

『玉川の丘-玉川大学通信教育部 部報』第1号(1950年8月24日発刊)によれば、開設時の学生は7月31日の時点で正科生914人、特修生417人、スクーリング参加者は8月2日の時点で368人であった。そして昭和29(1954)年3月、第1回の卒業生を世に送り出した。

『玉川の丘』第5号(1951年5月)によれば、第1回目の科目試験は同年5月に、第2回目はスクーリング中の8月に、いずれも本学にて実施された。地方試験は同年10月20日、21日の両日に青森県浅虫小学校においてスタートした。また、初期のスクーリングは授業としての音楽と体育のほかに、毎日、音楽と体操が課外として行われ、早朝の礼拝と正規の時間割に組み込まれた3回の礼拝および2回の労作が課され、一般教育では外国語と自然科学実験に力が注がれた。スクーリング参加者は昭和26(1951)年518人、翌年1300人、さらに次の年は1560人と、急激に増加していった。

4.開花期の通信教育部

玉川大学通信教育部は「卒業がむずかしい」という世評とともに、卒業生の実力がしだいに高く評価されていくようになっていく。『玉川教育』(昭和35年)で國芳学長は次のように述べている。「玉川の通信大学は殊の外きびしい。すまぬ。我慢してくれ。これは諸君に、よりよき教師になってもらいたい親心からでもある。また、お国への義務感でもある。ホントに、玉川の門は狭い、玉川の丘はきびしい。が、どうぞ、大哲スピノザが『難きが故に尊いのだ』と教えてくれた千古の教訓をカミしめてくれ。単位などは眼中におかないで、人間修行に、学問に、没頭してくれ。」

スクーリングでの小原國芳による講義
昭和27(1952)年

昭和32(1957)年8月28日には、松永東文部大臣が本学に来園。文部大臣が大学通信教育の夏期スクーリングを視察するのはわが国で初めてのことであった。

昭和33(1958)年11月21日には、大学通信教育制度創設10周年記念行事が行われた。この行事にあわせて、大学通信教育協会を組織する慶應義塾、玉川、中央、日本、日本女子、法政の6つの大学が記念誌『大学通信教育-十年の歩み-』を合同で編集し、刊行している。

5.通信教育部の発展

現在の夏期スクーリングの様子

目的やそれぞれの事情に応じた柔軟な学習が可能であることから、在学生のプロフィールは多彩なものとなっている。高校や大学を卒業したばかりの学生はもちろんのこと、社会で働きながら教員を目指す人、すでに中学校などで教員として活躍しながら、さらに小学校の教員免許や学芸員などの資格取得を目指す人、教養を身に付けることを目的に科目等履修生として学ぶ人など。居住地も北海道から沖縄まで日本全国に広がっている。 玉川では通信教育部を「通大」と称しているが、ここで学んだ約25万人の「通大生」が全国の小・中学校をはじめ、幼稚園、図書館、博物館などで活躍している。

平成14(2002)年4月、さらなる充実を図るため、通学課程と同時に、文学部教育学科を教育学部教育学科に改組。教員養成を明確に打ち出した。そして、今なお、玉川は小学校の教員免許が取得できる数少ない通信教育部を設置している大学として高く評価されている。

6.今日の通信教育部の概要

  1. 正科生
    「教育学」を学習する、「幼稚園」「小学校」「社会」「公民」の教員免許を取得する、「学芸員」「司書」「社会教育主事」の資格を取得するといった学生の目的にあわせた8つのコースを設定している。
  2. 科目等履修生
    所有教員免許や教職経験を生かして教員免許などを取得できるよう「教員免許の不足単位のみを充足」「所有教員免許の上級の免許の取得」「所有教員免許とは異なる教科の免許取得」「所有教員免許に隣接する学校種の2種免許の取得」「学校図書館司書教諭資格の取得」「教養・自己研修」といった6つの履修方法を用意している。
  3. 取得可能な教員免許と資格
    取得できる教員免許は、「幼稚園教諭1種」「小学校教諭1種」「中学校教諭1種(社会・数学)」「高等学校教諭1種(公民・数学)」である。ただし、「数学」の教員免許の取得に関しては条件がある。
    取得できる資格は、「図書館司書」「学芸員」「社会教育主事(任用資格)」「学校図書館司書教諭」の4種類である。
  4. スクーリング
    学習効果をあげる、モチベーションを保つ、全国から集まる多くの友との交流を深めるために、「春期」「土日」「夏期」「通学」「冬期」「学外」「学芸員」「2月」といった8種類のスクーリングを設けている。
  5. 学生会と通大祭
    「学生会」は通信教育部に在学する学生で組織され、定期的に学習会や親睦会を開くとともに、夏期スクーリング時には数々の行事や課外活動を展開。全国を「北海道」「東北」「関東」「東京・山梨」「神奈川」「北信越」「東海・近畿」「中国・四国」「九州」の9ブロックに分け、さらにその下に42の支部を設置。夏期スクーリング時に開催される通大祭では、スポーツ競技をはじめダンス(踊り)やバザー(お国自慢市)などを各ブロックごとに準備し交流を深めている。

参考文献
小原國芳編『全人』第18号 玉川大学出版部 1951
玉川学園編『玉川教育: 玉川学園三十年』 玉川学園 1960
玉川大学通信教育部編『玉川の丘-玉川大学通信教育部 部報』第1号 玉川大学通信教育部 1951
玉川大学通信教育部編『玉川の丘-玉川大学通信教育部 部報』第5号 玉川大学通信教育部 1951
玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園50年史(写真編)』 玉川学園 1980
日経BP企画編『玉川学園創立80周年記念誌―そして未来へ』 学校法人玉川学園 2010