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玉川豆知識 No.02

河畔林をとりまく環境- 河畔林は生物多様性を実現し水の浄化もする林 -

2014.10.08
農学部生物環境システム学科 技術指導員 金井秀明

1.河畔林の働き

玉川大学北海道弟子屈農場の敷地に沿って釧路川が流れ、その両脇には豊かな自然を残す河畔林が広がっています。河畔林とは河川の脇に繁茂する森林の事を言います。洪水や浸食などの影響を受け、場所によって植生は異なりますが、シダやコケ、草本や木本など多くの植物がみられます。
多様な植物が存在するという事は、植物を餌や住処にする、昆虫や鳥類そして哺乳類などの多くの動物も生息しています。川岸に目をやると、枝や葉が川の上を覆っています。これが非常に重要な働きをします。落葉や落下昆虫がまず水棲生物の餌となり、それを餌とする小さな魚が集まり、小魚を狙う大型魚や鳥そして哺乳類と食物連鎖の基盤となります。
木陰や倒木の下は、魚の逃げ場所や越冬場所として利用されます。食物連鎖の過程で食べられた個体は糞となり、河畔林に還元されます。ヨシなどの抽水植物(根を水底に張り、体半分が水の中で生活できる植物)は窒素やリンなどの栄養塩類を吸収し、水の浄化をしてくれます。まさに河畔林は生物多様性を実現し、水の浄化もする林と言えるでしょう。

1981年頃の北海道弟子屈農場全景

2.河畔林で見られる植物

釧路川は屈斜路湖という大きな湖からいきなり流れ出すので、渓流を伴う上流域は無く、ゆったりとした流れの中流域のような河畔林から始まります。では河畔林に早速入ってみましょう。
湿地林である事が多いので、ぬかるみには十分注意が必要です。まず目に付くのはハンノキやヤナギなどの落葉広葉樹です。シラカンバやオニグルミ、カツラ、ヤチダモなどの背の高い木があります。低木のボザキシモツケが川岸に繁茂しています。川岸に近づくにしたがって、冠水に強い樹種になります。冠水とは、茎や根が雪解け時や、大雨の後に浸水してしまう事を言います。地表には高さ10cm程のフッキソウが群落を形成しています。また、ヨシ、ミゾソバやミズバショウ、スゲの仲間など多くの草本類が見られます。食べられる植物もたくさん有り、調査に行く事は、自炊する学生の食材さがしでもあります。

カブスゲが谷地坊主を形成する、手前はエゾイラクサ
左岸にヨシの群落が見える、右岸はハンノキが川面を覆う
シラカンバ、ハンノキや、ミズバショウ、バイケイソウなど多くの植物が見られる
ミズナラ、ハルニレなどの高木も見られる
カツラやハンノキ、ヤナギ類が川面を覆う

3.河畔林で見られる動物

多くの生物がいる河畔林でも簡単には動物を見ることはできません。しかし多くの動物の痕跡を確認する事ができます。それは糞や、草木の食痕、食べられた動物や昆虫の残骸、抜け落ちた毛、足跡などです。冬は雪原の上に1本道になったキタキツネの足跡や、馬跳びを連想させるエゾユキウサギの足跡、前足で雪を掘って草を食べるエゾシカの足跡などを確認する事が出来ます。これらを見ることにより、そこに実体は無いのですが、動物の姿を想像することが出来ます。
糞も色々な事を教えてくれる貴重な情報源です。糞の形で大まかな種の特定や、糞の内容物で食生活が草食か肉食かなどが解ります。木道を歩いているとトガリネズミ類の死骸を拾うことが有ります。口吻の尖った非常に小さな哺乳類で、一番大きいオオアシトガリネズミはモグラと間違われます。しかし北海道にモグラはいません。警戒心が強かったり、夜行性だったりする哺乳動物の姿を目撃する事はなかなかできません。
そこで最近は動物観察に、LEDフラッシュ搭載自動撮影カメラを使用しています。そこには生き生きとした動物の世界が映しだされています。エゾクロテンがミンク用の箱ワナの餌が欲しく、うろうろする姿、夜行性のエゾタヌキがフラッシュに驚く姿などが記録されています。ヒグマも撮影されました。足跡から居ることはわかっていたのですが、画像をチェックしていた学生から「先生の歩いた30分後にヒグマが歩いていました」と耳打ちされるのは、あまり気持ちのいいものではありません。

調査の為に自動撮影カメラを木道に設置する農学部4年生
水質調査を行う農学部2年生
雪の上に残されたヒグマの足跡(成獣)
餌を求めてキタキツネが歩く
フラッシュに驚くエゾタヌキ
アメリカミンク用の捕獲ワナに捕まったエゾクロテン
外来種のアメリカミンク、毛皮用として日本に持ち込まれた
木道の上を歩くヒグマ(推定年齢1歳半の小熊)

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