玉川豆知識 No.04

素晴らしい自然の摂理 -生態系と物質の循環-

2014.10.08
農学部生物環境システム学科 教授 南 佳典

1.物質の循環を担う生態系要素

森林と海洋の間の物質の流れ

生物が生息する生態系は、さまざまな物質が循環することで維持されています。物質が循環する際に経由する要素もさまざまで、生物であったり、ある時には物理的要素であることもあります。生態系で重要となる物質は通常、“水”を介して重力にしたがって下方に流れていきますが、その逆(還流)も起こります。

2.還流の担い手

遡上してきたサケを捕食するヒグマ

サケのように河川と海洋を回遊するサカナは、海洋中の豊富な栄養を十分に補給し、生まれた河川上流部に遡上します。
上流部で産卵後、ほとんどのサケは、死んでしまうので死体が分解されてしまうと下流に流されて海洋に戻ってしまいます。しかし、ヒグマに捕食された場合にはサケが蓄えた栄養はヒグマに移動し、食べ残しや糞は周辺の森林にもたらされることになります。

3.素晴らしい自然の摂理

山間部の森林で形成された栄養は河川で下流に流され海洋まで到達します。それは豊富なプランクトンを育み、栄養段階の上位に位置するサケの増加を促します。そのサケが河川を遡上し、ヒグマなどの動物を介して森林に栄養が戻る、つまり物質が循環しているというわけです。
サケとヒグマは長距離にわたる還流の例として北米で研究が進みました。この循環経路にある森林では巨木が生育し、豊かな森林が形成されています。オオアオサギのような大きな鳥も、子育ての際に集団で営巣し、海から餌を採ってきてヒナに与えるため、距離は短いですが海からの栄養を陸地に運ぶ機能を担っています。
しかし、物質が循環する経路は、道路やダムなどの建設によって分断され、物質が十分に循環しなくなっているところがあります。その結果、生態系は不安定になり、多様性の減少や最悪の場合には生態系自体が機能しなくなってしまいます。各生物が生態系においてどのような機能を担っているかを適切に理解し、保全を進めていく必要があるでしょう。

オオアオサギの集団営巣コロニー
豊富な降水量と栄養に支えられて生育するDouglas-firの巨木
コロニー直下の林床では、糞などの影響で栄養塩濃度が高くなります。
写真の右下にみえるパイプは土壌水を採取するための井戸で、栄養塩濃度などの分析を行います。