玉川豆知識 No.05

絶滅危惧種植物の保全(保護・増殖・持続的利用)
/ランの場合

2014.10.08
農学部生物資源学科 教授 山﨑 旬

近年、環境の変化や乱獲によって多くの生物種が絶滅の危機に瀕しています。日本の野生植物の中では、特にラン科に絶滅危惧種が目立ちます。これは、鑑賞のための販売目的の採集(乱獲)をする人が後を絶たないことに加えて、ラン科植物には限られた環境下でしか発芽・成長できないものが多く、自然環境の変化(都市開発など)の影響を直接受けやすいから、と考えられています。
ランというのは、非常にデリケートで、繁殖させるのが難しい植物です。これは「菌」の助けを借りないと発芽できないという、ランの種子が持つ特殊な性質にも起因しています。通常の植物の種子には、発芽の際に使われる栄養分を蓄えた組織「胚乳」または養分で肥大した「子葉」と呼ばれる部分があります。しかし、ランの種子は、胚乳を持たず未成熟な「胚」だけで形成されています。そのため、発芽の際には土の中の特定の菌類から栄養を吸収する必要があるのです。

さらにやっかいなことに、ランの中には「特定の樹木に寄生或いは共生する菌」と密接な関係にあるものが少なくありません。現在、私は「キンラン」というランの増殖・栽培方法を研究していますが、自然界におけるキンランは、ブナ科の樹木(カシやシイ、クヌギなど)の下にのみ見られます。つまり、キンランが生きていくためには、菌だけでなく、菌と共生する樹木の存在も不可欠になってくるわけです。こうした植物の生態を解明し、人為的に発芽繁殖を行うための技術を開発することが、私が指導している「保全生物学・植物繁殖学分野」で学ぶ学生たちの共通研究テーマとなっています。

共生する菌がない状態でランを発芽・生育させるには、無菌培養の手法が有効ですが、発芽しやすいように種を覆う皮(外種皮、内種皮)に傷をつけたり、どんな培地や温度がランの発芽に適しているのかを調査したりと、まだまだ研究の余地は残されています。
また、樹木・菌・ランの「三者共生」のしくみも研究課題のひとつです。キンランと菌と樹木の三者にとって望ましい環境であることが重要で、共生の絶妙なバランスを再現できなくては、持続的な利用は不可能なのです。