玉川豆知識 No.06

サイハイラン(采配蘭)

2014.10.08
農学部生物資源学科 教授 山﨑 旬

初夏の日本の野山には、エビネやキンランなど、可憐で美しいランが見られます。しかし、野生のランは多種多様で、人の目から見てあまり美しいとはいえないようなランも存在します。
サイハイランは、一見、ランとは思えないような細長い奇妙な形の花をつけます。が、よく見れば、ラン科に特有の唇弁や蕊柱(ずいちゅう)(雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)が合着した器官)が確認できます。葉も変わった性質をもっています。夏のお盆を過ぎる頃に1芽から1~2枚を展葉し、冬を越して翌年初夏の開花期頃に落葉しますが、ときに2年間もつ葉もあります(半落葉性)。
また、ラン科としては異色で、地下部の球根は食べられるため、かつては救荒植物あるいは薬用植物として、重宝された歴史をもちます。かつて筆者も食したことがありますが、加熱すると雑味が少なく、デンプン質で腹持ちが良さそうな印象でした。ただ、粘り気が非常に強く、歯にべったりくっつくのには閉口しました()。
残念ながら、人目に付く道路沿いや植栽整備された場所では見られません。普段あまり人が入らず、薄暗く湿った林の中にひっそりと生えています。
(*)現在は、いくつかの自治体で絶滅危惧種に指定されているため、注意が必要です(2014年5月現在)

サイハイラン(采配蘭) 学名:Cremastra appendiculata  ラン科サイハイラン属

サハリン南部、南千島から九州、朝鮮半島南部、中国、タイにかけて、東アジアに広く分布する。名前の由来は、花序(花が茎に付いた全体を示す語)の姿が、武将が軍勢を指揮するときに手にした「采配」に似ているため。