学修支援の拠点として

場の提供だけでなく、学生のあらゆる学修を支援する拠点に

eエデュケーションセンター長 橋本順一

図書館のリニューアルにあたり、“建物を変えるだけではなく、従来の図書館を学修の場にシフトする”という考え方が、構想初期段階から変わらぬメインコンセプトです。これまでの図書館はともすれば、暗くて静かにしていなければならない雰囲気と思われていました。学修の場へのシフトにあたって、「リソースを使って学修するところであり、それを活性化する場」の実現には、単なる場所の提供だけでなく、学修支援が重要です。そのためには、新たな発想と機能が必要でした。

サポートカウンター(完成イメージ)

学修の場としてはラーニング・コモンズ(グループ学修や討論などさまざまな学修形態に対応する総合的な自主学修のための環境)を用意すると同時に、個人でじっくりと学修する環境も確保する。媒体を問わずさまざまな情報に触れる環境を整備する。これが新しい「大学教育棟 2014」の姿です。これらをベースに、eエデュケーションセンターとしては、ICTによる学修環境の強化はもちろんのこと、PCの貸し出しや利用可能な場所の提供だけでなく、使いこなすための支援を提供します。個々の学生がノートPCをネットワークに接続できる「My PCネットワーク」はすでに学内に整備されていますので、それを使って何をするか、という一歩踏み込んだ支援に変わります。また、学んだことは成果として形にすることも多いため、論文を印刷したり、ポスターとして制作したりということができるDTP(Desk Top Publishing=原稿作成や編集、デザイン、レイアウトなどの作業をコンピュータで行い、データを印刷所に持ち込んで出版する)と連動できる環境を用意します。さらに、スタジオ機能を持たせ、教室で行われた講義を収録した映像を編集し、インターネットで配信することも考えています。授業の復習や欠席してしまった学生へのフォローにも役立てられるでしょう。

3階:アクティブ・ラーニング・エリア(完成イメージ)

時代とともに刻々変化する社会情勢やそれに伴う大学の教育システムを考えると、2015年4月の開館時点だけでなく、そこから5年後、10年後の学修形態を予見し、そのときの使い方に対応できるものでなければなりません。現在は、教室で授業を受け、出された課題を教室外でこなすという授業方式が主流ですが、自宅や図書館など教室外で学修したことを授業で発展させる「反転授業」がトレンドになりつつあります。しかし、反転授業という考え方は3〜4年前ですらまだありませんでした。そうした意味でも、これからの大学における教育環境には汎用性や自由度の高さというフレキシビリティを備えている必要があります。予見性ということであると、インターネット網の整備は必須ですが、PCをそこかしこに設置するということは必要ないと判断しています。タブレットやスマートフォンなどの携帯型端末の利用率がさらに高まると考えているからです。

授業も、学修スタイルも、教員の意識も、すべてが変わる

アクティブ・ラーニング・エリア(完成イメージ)

この大学教育棟の運用に伴い、多くのものが変わるだろうと予測しています。まずは授業のスタイルです。講義を聴いてノートに書き残すといった受動的なものではなく、自分の考えや相手の考えを整理してまとめたうえで授業に臨むようなことが増えていくでしょう。「どう考えるのか?」が問われるとともに、それをどう表現するかも求められます。「知識の蓄積」と「知識の活用」が、必要なのです。じつはこの能力は社会に出たときに求められるものなのですが、その手本となるものが少ないのが現状です。

アクティブ・ラーニング・エリア(完成イメージ)

さらに、協同学修、グループワーク形式の授業が増えるでしょう。大学教育棟が、そのためのラーニング・コモンズの場として活用されることになります。といっても場所だけあっても最初からスムーズに運ぶものではありません。初めは慣れないグループワークであっても、やがて各自がその場に応じた方法を見つけ、役割を分担して議論を進めていくような進化が生まれるでしょう。さらに授業時間以外の自主的で自由な議論が広がってほしいと思っています。実はこれも社会人は無意識のうちにやっていることで、それを学生のうちから身に付けてほしいのです。このような授業スタイルの変化は、教員の意識改革も必要ですし、教員間の連携と意識の統一も必要でしょう。

アクティブ・ラーニング・エリア(完成イメージ)

学び方のスタイルは、

  1. 授業を受ける
  2. 知らないことに出会う
  3. それを理解するために調べ、知識として蓄積する
  4. その知識を基に討論、議論する
  5. 討論・議論から見えてきた結論をさらに授業で固めていく

といった学びのサイクルで知識を深めていくようになるのではないでしょうか。

プレゼンテーションスペース(完成イメージ)

アメリカでは、年1回、“TED Conference*”というプレゼンテーションの世界大会が開催されています。自分の考えや体験を聴衆を前に語る……こうした経験を玉川の学生にもしてもらいたい。人に聴いてもらうためには、プレゼンテーションの技術も必要とされますが、それができる場もなくてはなりません。アクティブ・ラーニング・フロアにそうした機能も持たせ、そこに居合わせた人にプレゼンテーションする機会が提供できればと思っています。古来、そもそも物事の真理を追求した大学という機関がスタートしたときには、自由な議論の場とそれを発表する機会が今よりもふんだんにあったのではないでしょうか。この理想に少しでも近づくように、ラーニング・コモンズは、グループワークのスペースを区切るパーティションを固定せず、そのときの人数に応じて机や椅子の数や並びを自由にレイアウトできるようにしています。しかしどれだけ環境を整えても利用されなければ意味はありません。日々の授業や学修のしくみの中にどう組み込んでいくかなど、各学部学科の教科や科目と連携することが重要であり、並行してそれを促進する支援を充実させていきます。

  • TED(=Technology Entertainment Design):カリフォルニア州のロングビーチで4日間にわたって開催されるプレゼンテーション大会を主催しているグループ。だれもが知る著名人から一般の人まで幅広い講演者が、自分の考えを聴衆に訴えかけている。