科学するTAMAGAWA 知識を"活用する力"を養う1年生~4年生の教育

2012.06.25

玉川学園1年生~4年生では、
体験的な学習で「学ぶ楽しさ」を味わい、
基礎トレーニングで「学習習慣」を身につけ、
自ら次のステップを切り開いていく力を育てています。

知識を記憶させることだけが学習ではない

「玉川学園が考える学習は、“知識を記憶させること”だけではありません。体験を通して学ぶことの楽しさを味わったり、基本的な学習習慣をしっかり身につけることこそが、重要であると考えています」。そう語るのは、学務主任(1-4年生担当)の後藤健教諭。特に学習を始めたばかりの1年生~4年生の子どもたちが、“学ぶ楽しさ”や“学習習慣”を身につけることは、非常に大切だといいます。

では、“学ぶ楽しさ”や“学習習慣”は、どのような方法によって培うことができるのでしょうか。そして、それはどのような成果につながるのでしょうか。今回は、後藤先生にその具体的な方法と成果について詳しくお話を伺いました。

体験的な学習で学びへの意欲を育てる


学ぶことのおもしろさ、楽しさを味わうための取り組みのひとつとして先生があげるのは、「総合学習」という学習形態です。これは、教科の枠や時間の枠に縛られることなく、柔軟に授業を展開する玉川学園ならではの学習形態であり、創立以来続けられてきた玉川の伝統的取り組みでもあります。

「例えば、1年生では『秋の野山』という学習があります。キャンパス内にたくさんある木々の実を拾ってきて、何の実かを調べたり、観察したりといったことを行います。植物に関する興味や理解を体験的に育む機会になりますが、それだけではありません。例えば、たくさん拾ってきたドングリを10個ずつ束にして100個数えてみれば、1年生で習う算数の「100までの数」の学習の体験的な理解につながりますし、ドングリを車輪にして車を作れば、工作的な体験になります。子どもたちの興味関心を、学びへとつなげるのが、この総合学習の特徴なのです」。

また、2年生では「お米の学習」といって、種籾(種としてまくために選んで取っておくもみ)を選ぶところから始めて、お米を育てて食べるまで、半年以上の時間をかけて行われる学習もあるといいます。「この長期にわたる学習からは、お米作りに多くの時間や手間がかかっていることを体験的に理解し、お米の大切さを知ることができます。さらに、田んぼに住む昆虫やザリガニなどの生き物を観察することで、生物に対する関心も高まりますし、お米がどうやって世の中に流通しているのかを考えるなど、社会科的なアプローチも可能です。子どもたちからも『育てたお米を食べるお茶碗も自分たちで作りたい』という意見が飛び出し、実際に玉川大学芸術学部の協力を得て、陶芸にも挑戦しました」。

「このように、体験的な学習はさまざまな方向に発展させることができるのです」と先生は続けます。「1-4年生エリアから飛び出して、広大な玉川学園キャンパス内を散策し、植物や昆虫を観察する活動を私達は『丘めぐり』と呼んでいます。春にはたくさんの草花が咲き、秋には木々が見事に色づきます。また昆虫や野鳥も身近に観察することができます。1年生~4年生のうちに豊かな自然の中で本物を観察する目を育て、そして観察して感じ、知り、考え、それを表現するという丘めぐりの活動を通し、探究心や好奇心を旺盛にするといったこれらの体験が自ら学ぶ基本となると考えています。
『なぜ、木の実は赤くなるの?』『なぜ赤くなると甘くなるの?』と言った子どもの素朴な問いを出発点として、知りたい、調べたいと言った探究心を刺激し、学びへの意欲を育てることが、総合学習の大きな目的なのです」。

読み・書き・計算のトレーニングを継続

だからといって、机に向かう学習をおろそかにしているというわけではありません。基本的な学習習慣を育むために、「読み」「書き」「計算」のトレーニングを日々実践していると先生は話します。「それが、『朝読書』『100枚日記』『計算チャレンジ』という3つの取り組みです。『朝読書』というのは、毎朝、全校朝会が終わった後に、15分程度の短い時間で各自の好きな物語を読むという学習です。毎日継続的に取り組むことで、読む力と読む習慣が身につきます。朝読書以外の時間でも、玉川学園の1年生~4年生では2教室に1つの図書コーナーを設置しており、休み時間など好きな時間に本を読める環境も整えています」。


また、書く習慣を養う取り組みが、『100枚日記』です。「これは、1年間で日記を100枚書くことを目標に取り組むもの。先生が一人ひとりの日記に目を通してコメントを書き込み、ファイルに保管していきます。100枚という目標を定めてあげることで子どもたちのやる気を引き出します。しかし、ノルマ化することはありません。ですから、1年間で80枚程度の子もいれば、200枚~300枚書く子もいます。あくまでも書くことに慣れてもらうのが目的なのです。また、先生が子どもの状態を把握するためにも有効で、子どもとのコミュニケーションを促すきっかけにもなっています」。

さらに、100枚日記とは別に、1年生の夏休みには『絵日記』の課題もあるといいます。「小学校に入学し、ひらがなの学習から始まり、簡単な文章を書くことを指導した後、じっくり時間をかけて自分の思ったことや考えたことを文章に表現できるようになることが非常に重要だと考えています。学習というのは学校だけで完結するものではなく、家庭学習の習慣を身につけることが非常に大切なのです。保護者の方にそのことを理解していただくためにも、夏休みはお家の方が先生となり絵日記に取り組んでもらっています。夏休みに絵日記を1冊仕上げるだけで、子どもの書く力は驚くほど伸びます。1年生の書いた絵日記を幼稚園に通う子どもの保護者に見せると、『こんなに書けるようになるんですか!』といつも驚かれます」。

そして最後の1つが『計算チャレンジ』。たし算、ひき算、かけ算、わり算の計算を、短い時間でたくさん解けるようにするトレーニングです。例えば4年生では30問を30秒で解くことをめざして週3回実施し、各自が自分の記録を伸ばすことに懸命に取り組みます。「問題数をあまり多くせず、短時間に集中して行うことで、計算が苦手な子どもでもあまり苦手意識を持たずにチャレンジできるのがポイントです。また、脳科学的にも短時間で計算する習慣を養うことが、能力を伸ばすために有効であることが指摘されています。子どもたちも集中して取り組み、新記録が出たときには思わず喜びの声が響くほどです。『できた喜び』を味わうことにより、学ぶ意欲を形成する、その一つとして計算チャレンジは役立っています」。

知識を使って次のステップに進む力を

体験学習を通じて学ぶことのおもしろさ、楽しさを味わい、日々のトレーニングによって基本的な学習習慣を身につけたことを土台に、4年生からは完全な教科担任制が始まるのも玉川学園の特徴です。「高学年になると学びも専門的な部分が次第に増えてきます。そうすると、教員は各教科の授業の準備に時間がかかりますし、児童の質問に応えられる専門的な知識も必要になります。そこで、教科担任制を採用し、それぞれの教科の担当教員が、自分の専門分野の教材研究にじっくり時間をかけて取り組むことができるようにしています」。

さらに、職員室がないのも、玉川学園の特徴だと先生はいいます。「教員は自分が担任をしているクラスの教室や、担当教科の教室に常に待機しているので子どもたちは、授業でわからないことがあれば、いつでも質問することができます。これも、自ら学ぼうとする姿勢を子どもたちに身につけさせるための工夫のひとつなのです。最初にもお伝えしましたが、知識を記憶させることだけが学びではありません。本当に重要なのは、自ら課題を見つけ、身につけた知識を活用して、自分の夢を自ら切り開いていける力です。1年生~4年生では、学ぶことのおもしろさ、楽しさを味わい、基本的な学習習慣を身につけることで自学自律の精神を養い、その力の土台を築いているのです」。

  • 玉川学園の教育システムについて
    玉川学園では、Kindergarten(幼稚部)から12年生(高校3年生)までの、6-3-3の学校システムに縛られない学年進行型の幼小中高一貫教育を実施しています。
    共通の学力観のもと、幼稚園から12年生までの発達段階を考慮し、系統性をもたせながら学習内容とその指導のあり方、生活の仕方を設定しています。現在、低学年校舎には1-4年生が、中学年校舎には5-8年生(小学5年生から中学2年生)が、高学年校舎には9-12年生(中学3年生から高校3年生)が生活しています。これらの校舎を隣接させることで生徒間の交流が活発になるとともに、学校種間の教員の連携も活性化しています。異学年交流の活動は、下級生は先輩である上級生にあこがれて成長し、上級生にとっては下級生との生活の中でリーダーシップをとり自己肯定感や自尊感情を育む大切な機会となっています。
    また、昨今話題になっている、小1プロブレム、中1ギャップ、高1クライシスといった学校間のギャップの解消にもつながっています。