科学するTAMAGAWA 世界で活躍する人材を育てる「IBクラス」

2012.05.25

国際的教育プログラムを取り入れている玉川学園「IBクラス」。
言語を問わないコミュニケーション能力と、
自ら考え、調べ、学んでいくことのできる力を育成し、
グローバル社会で活躍できる人材の輩出をめざしています。

国際的な教育プログラムで学ぶIBクラス

インターナショナルスクールの卒業生に、国際的に認められる大学入学資格を与える世界共通の教育プログラム「国際バカロレア(IB)プログラム」という制度をご存じでしょうか。玉川学園では、2007年4月よりこのIBプログラムを取り入れ、7年生(中学1年生)から専用のクラス「IBクラス」を設置しています。

IBクラスでは、国語・音楽・体育といった一部の例外を除いて、授業は原則英語で行われます。また、授業の方法も通常のクラスとは異なり、教員の話を聞いて覚えるだけではなく、自ら考え、調べ、それを相手に伝えることを重視した授業が行われています。

では、IBクラスがめざす教育のあり方とは一体どのようなものなのでしょうか。そして、この教育を受けた生徒たちは、一体どのような力を獲得することができるのでしょうか。IB担当シニアスタッフの髙島健造教諭に、お話を伺いました。

コミュニケーションツールとして英語を使いこなす

「第一に、日本の英語教育とはまったく異なるアプローチをしていることが、IBクラスの特徴です」と高島教諭は話します。「英語というのはもちろん言語であり、コミュニケーションのための道具です。ということは、教室の中で単語や文法を覚えるだけでは“英語ができるようになった”とはいえません。英語を使って考え、考えたことを誰かに伝えることができてはじめて、英語が使えたことになります。つまり、教科のひとつとして英語を学ぶのではなく、生活の中で使える道具として英語を学ぶことが重要なのです。そのために、ほぼすべての教科を英語で行い、英語をコミュニケーションの道具として使える力を養っています」。

もちろん、IBクラスでも英語の授業は行われます。しかし、その方法は、通常のクラスとは大きく異なっていると髙島教諭は続けます。「教科書は使用しますが、それはあくまで教材のひとつ。自らが疑問に感じたことを自ら解決するために課題を探します。例えば、インターネットを使って海外のサイトから情報を得たり、英語の文献にあたって調べたりすることを家庭学習の課題とし、授業中はディスカッションを中心に英語を使ったコミュニケーション力を養うといった工夫をしています」。

「IBクラスには、海外生活が長かったり、外国籍であったりする生徒もいますが、小学校まで日本で通常の教育を受けてきた生徒も大勢います。しかし、どんな経歴の生徒でもこうした教育を受け、本人の努力によって9年生(中学3年生)までに英検2級レベルの英語力を身につけることができています」と髙島教諭。もちろん、誰でも最初から英語力があるわけではないため、早朝や放課後に補習を実施したり、さらに細かく課題や家庭学習についての指示を出したりするなど、きめ細かい配慮も行っているということです。

グローバル社会で求められる力を養う

では、英語以外の学習はどのように行われているのでしょうか。髙島教諭はここでも「コミュニケーション力」が重要だと説明します。「英語は覚えるだけでなく使えるようになることが重要だと説明しましたが、それは他の知識も同様で、獲得しただけでは役に立ちません。獲得した知識を使って何ができるのかを自ら考え、理解し、発展させ、社会に役立てることこそ求められているはずです」。

そうした力を身につけるために大切なのが、コミュニケーション力だと髙島教諭はいいます。「私たちは“コミュニケーション力”と聞くと、つい“自分の思っていることを主張すること”だと考えがちですが、それだけではないはずです。“相手の言っていることをきちんと聴くこと”や“自分の考えが間違っていた場合にそれを変える勇気”も重要なコミュニケーション力です。言い換えれば、さまざまな考え方に触れ、自らの知識を発展させていくことができることこそコミュニケーション力であり、そうすることではじめて、知識は社会で役立てられるのです。そしてそれは、さまざまな価値観が交錯するこれからのグローバルな社会に必ず必要とされる力なのです」。

こうした力を培う取り組みとしてとりわけ特徴的なのが、「知識の理論(Theory of Knowledge:TOK)」という授業です。これは、どの教科にも属さないIBクラス独自の授業で、教員からの問いかけや、生徒同士のディスカッションによって、知識を得たり、得た知識を発展させるもの。例えば、この日行われた11年生のTOKでは、トリックアートを生徒たちに見せ、それがどう見えたか、なぜそう見えるのかといったことを話し合っていました。髙島教諭は「この授業の目的は、教科の学習のように答えを得ることではありません。同席している仲間(教員も含む)とのコミュニケーションの中で、自分とは違うものの見方や考え方に触れ、疑問を持ってもらうことが重要。そうすることで、自ら調べたり考えたりといった、生徒の自発的な知識獲得への興味を引き出すことにつながるのです」と仰っていました。

もう一つ特徴的なのが、課題論文の作成です。各生徒が自分の興味あるテーマに焦点を当て、さまざまな文献やインターネットなどを駆使して書き上げます。「普段ダンスが好きな生徒であれば、それを基に論文を書くということもあり得ます。自分で振り付けを考えてその意味を分析し、文献にあたって検証した上で、論理的にまとめるといった具合です。ダンスというと、一見“あそび”のようなテーマと思うかも知れませんが、大切なのは、目的を達成するために自分で考え、調べ、論理的に相手に伝える力を育成すること。なぜなら、それは社会に出てどんな仕事に就いたとしても、必ず重要視される力であるからです」。

IBクラスを支える教員のたゆまぬ努力

こうした学びを学校の授業として成立させるためには、教員の大変な努力と常に学び続ける姿勢が欠かせないと髙島教諭は話します。「ディスカッションを重視するといっても、ただやらせれば良いというわけではありません。そのクラスの生徒たちの学習進度がどの程度なのか、その生徒たちに適した題材、分量、タイミングなどはどういうものかを考え、教材や授業の進め方を決める必要があるからです。また、専門教科のことだけわかっていれば良いというわけにもいきません。生徒が興味を持ちそうなことや、ディスカッションの中で生まれた生徒の疑問に応えるためにも、幅広い知識を身につけている必要があります。ですから、1回50分の授業を行うために、教員は何倍もの時間をかけて準備をすることがほとんどです」。

また、国際バカロレア機構が開催するワークショップへの参加も、IBクラスを担当する教員には欠かせないといいます。「ワークショップは数日から1週間程度、年間10回以上世界各地で開催されています。玉川学園のIBクラスの教員は、全員がそのいくつかのワークショップに参加し、世界の教育現場の声を自分の中に取り入れるとともに、IBプログラムの理念の理解に励んでいます。こうした教員の努力があるからこそ、高い教育効果を生むIBプログラムの提供が可能なのです」。

初の卒業生誕生とIBプログラムの今後

玉川学園がIBプログラムを導入し、7年生(中学1年生)のクラスを編成したのが2007年4月。つまり、今年度始めてIBクラスの卒業生が輩出されることになります。「現時点では、IBクラスの12年生(高校3年生)7名のうち、4名がアメリカの理系および芸術系の大学へ、3名が日本の国際教養系の大学へ進学を希望しています。IBクラスは海外の大学への進学を視野に入れた教育を提供してはいますが、それが目的ではありません。日本では、自分の学力レベルと大学の偏差値を照らし合わせて進路を選ぶということがしばしば行われていますが、そうではなく、自分の興味がある研究分野や学んでみたいことを最優先し、それが実現できる大学を世界規模で選択できることが、IBクラスで学ぶ理由のひとつなのです」と髙島教諭。

最後に、IBプログラムの今後について伺うと、髙島教諭は次のように答えてくれました。「日本でIBプログラムを導入している学校はまだ少なく、一般的な認知度も高くはありません。ですが、これからの社会で求められる効果的な教育プログラムであると確信しており、玉川学園でしっかりとした成果を残すことができれば、一般の学校にも普及が進むと考えています。ですから、今年度玉川学園から飛び立つIBクラスの卒業生の活躍には、大きな期待を寄せています。彼らがどんな進路に進むのか、そして、10年後、20年後、どんな社会人として新しいことに挑戦してくれるのか、それが今から楽しみです」。

  • 国際バカロレア(IB)認定校
    国際バカロレアに認定されている学校数は、2012年5月現在、世界141カ国で3,441校であり、その内、日本における認定校の数は23校です。一条校(学校教育法第1条に規定されている学校)で認定を受けている学校は、本学園を含めて6校のみとなっています。文部科学省は、世界の大学が採用する共通の大学入学資格取得に必要な教育課程「国際バカロレア(IB)」の国内認定校の拡大を目指しています。今後5年間で、IBに準じた教育を行う高校を計200校にする計画があるとのことです。