科学するTAMAGAWA 自由な発想を形にしながら ロボット技術・ノウハウに触れる

2011.09.23

東洋初の人間型ロボット「學天則(がくてんそく)」(1928年製作)を礎に、
今や世界のさまざまな分野で活躍する「ロボット」たち。
そんな「ロボット大国ニッポン」を支える高度な技術の入り口は
玉川学園のロボット部にもあるのかもしれません。

部員5人で始まったロボット部

様々な場面で目にすることが多いロボットは、今では人間と良好な関係にあって、人や動物に近い形状とモデルと同等かそれ以上の機能を備えた自律型の機械として認識されています。玉川学園には、そのロボットを授業の一環として、さらに課外活動として研究しているグループがあります。

「従来までサイエンスクラブの活動のひとつとしてロボットを扱ってきましたが、2011年度に独立し『ロボット部』として新たなスタートを切りました。現在は、5年生から12年生の23名が活動しています。一般に小・中学校や高等学校の普通科にロボット部がある例はあまりありません。「玉川学園には「自由研究」という科目があり、5年生から12年生までがロボットの技術に触れる機会があります」。と語るのは、指導を担当する有川淳(ありかわあつし)教諭。有川教諭は英語科の所属でありながら、12年前のアメリカ海外研修の生徒引率の際に現地で購入した“あるもの”を発端に、わずか5人の部員で活動をスタートさせたのです。

製作も制御も自らの手で行う


「プラスチック製の組み立てブロックの世界的な玩具メーカーLEGO社の『教育用レゴ・マインドストーム』を1箱買って帰ったのです。このマインドストームは、ロボットを組み立てるブロックのほかに頭脳ともいえるマイクロプロセッサー、光センサー、タッチセンサーなどがキットになっています。専用のソフトウエアでプログラミングすることで、組み立てたロボットを動かすことができるのです。このキットを使って生徒たちが最初に作ったのは、光センサーを使ったオルゴールでした」

有川教諭の指導のもと、生徒たちは自由な発想・アイデアを形にするとともに、各種の大会へも積極的に参加し、今年だけで既に表彰状を5枚獲得しています。

「2011年9月18日のWRO(World Robot Olympiad)Japan決勝大会には、6年生と7年生のチームが出場し、6年生チームが第1回プレゼンテーション部門で第1位に輝きました。また、FLL(FIRST LEGO League)の関東大会に8年生のチームが出場し、上位に入れば全国大会、さらには日本代表として世界大会へという道につながります。さらに、2012年2月には玉川学園展で自由研究の成果発表として、自分たちで考案したマインドストームを使った遊びを発表することになっています」。こうした活動で重視していることは、“自分で考えさせること”。今の子どもたちは様々な場面での失敗の経験が少ないとよくいわれますが、物事はすぐにはうまくいかないのが当たり前で、失敗の原因を分析し、人と相談し、次にどうするかを考えることが大切です。それが、柔軟なものの考え方、論理的な思考、新たなアイデアを創出する発想力などにつながっていくという考えの基盤となっていきます。

試行錯誤の連続の先にあるもの

「マインドストームは、組み立てとプログラムの両方の知識と技術を高めながら、イメージしたものを自由に作れるのがいいところです。できることが制限されていないので、想定外の問題に対する想像力・対応力も身につきます。パーツはプラスチックですから、力のかかり具合で歪みや変形が生じますが、それも計算に入れて設計や組み立てを行うなど、実際に動かしながらの作業が多いように思います。私が大学・大学院で研究していたロボットは、金属で組み立てるので、歪みを計算することはなかったので、マインドストームの特徴に驚きました」と語るのは、今年度から、有川教諭とともに生徒たちの指導にあたっている数学科の横山絢美(よこやまあやみ)教諭。横山教諭は、玉川大学工学研究科電子情報工学専攻(修士課程)から大学院工学研究科システム科学専攻(博士課程後期)へ進み、ロボットについて様々な研究を行い、博士号を取得しました。

横山教諭がもうひとつ驚いたのは、生徒たちのロボットに対する愛情や愛着だそうです。「自分の手で一からロボットを作ることで愛着がわき、ロボット同士をぶつけ合うことに発展しないのです。さらに、他の人が作ったロボットに敬意を払うと同時に、その構造に興味津々な様子も見て取れます。生徒が自分たちで試行錯誤しながらロボット製作を進めていく姿に、“こんなことを発想するのだな”と、教師としていろいろなことを気付かされます」。

卒業生の進路も多方面におよぶ

玉川学園展で有終の美を飾ろうとする12年生の雲中慧(くもなかけい)さんは「初めはできるかな?と不安でしたが、そうなるようになるのには、さほど時間はかかりませんでした。ロボットの仕組みを知ることで、電車やエレベーターなど身近にある動くものの仕組みも気になるようになりましたね。今は、低学年の子どもたちが楽しめてマインドストームらしいロボットを考案中です」と語ってくれました。

また、「巨大野球盤」の製作に取りかかり始めた10年生のグループは「パーツは単純なのに、いろいろなものが作れるのがいい」とマインドストームの魅力を話してくれました。

こうしたマインドストームを活用した実践や研究は、次なる興味と関心を抱くことにつながります。卒業生たちの中には、玉川大学工学部や他大学へ進学しロボット研究をさらに深めて、精密機器メーカーや保安器メーカーへ就職したりする者もいます。また、ロボット製作とプログラミングの知識・技術を備えている、少し個性的な小学校教員となるため、玉川大学の教育学部へ進学した者もいます。中には、つい数年前にレゴ・マインドストームの大会に出場した生徒が、今ではスタッフとして大会運営に関わるようになっていたなんてことも少なくないそうです。

大学との連携でさらなる強みを

今後の課題と取り組みについて伺ったところ、「ロボット部には、ぜひ女子生徒も入部してほしいですね。低学年のイベントでは興味を持って触れてくれているので、その意識を継続してもらえるような工夫が必要でしょう。最近では、玉川大学工学部と連携した『TRCP(玉川ロボットチャレンジプロジェクト)』が始動し、ロボット研究イベントやロボット教室を開講しました。また、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)活動の一環としての地域貢献活動もあります。さらに、子どもたち向けだけでなく、学内外の一般の教員向けの講座も積極的に実施したことがあります。」と有川教諭。

横山教諭も、「大学院でロボット工学を専門としている教授陣とのネットワークなどの面でも、さらに高度に密な連携が図れると思います」と力強く語ってくれました。