科学するTAMAGAWA 科学の粋を集めたICTをさまざまな形で教育の現場に

2011.10.25

メディアと共に生きる子供たちと
子供たちを指導する教員にとって
最善なICT活用教育とは何か?という問いに、
教育現場の現状を踏まえて具体的かつ多角的に取り組む。

教育の現場でICTをどう活用するか

現代の日本は、情報化がますます進展し、情報そのものが生活の中に当たり前にある社会になっています。従来の携帯電話に取って代わる存在となったスマートフォンは、手のひらサイズの情報端末にカメラや電話機能が付加された“超小型パソコン”と見なせるほどの性能を備えています。テレビは、地上デジタル放送への移行に伴い、番組を受信するだけでなく、ニュースや天気予報などのデータ受信、視聴者参加型クイズやアンケートへの参加などが可能になりました。

こうした高度情報化の波は、子供たちが学ぶ教室にも及んでいます。「大型デジタルテレビが導入されている小学校の普通教室は、全国の55%にもなります。そうした機器を使った“子供たちがワクワクする、効果的な教育方法”が現場では求められています。例えば、仮分数や九九などを短時間映し出し、それを繰り返しながら基礎的な知識の定着を図るなど、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)の特性を活かした授業が始まっています。教員と児童・生徒に役立つことを、ICTを使ってどう実現するか、それが私の研究のテーマです」と語る堀田 龍也(ほりた たつや)教授は、小学校教諭の経験もあります。現在は、玉川大学教職大学院や教育学部で、教鞭をとるかたわら、全国各地の小学校や教育委員会を訪れ授業改善や研究にも取り組んでいます。

広く使える教材を入手できるサイトを開設

「この仮分数や九九を映し出す教材は、『フラッシュ型教材』といわれるものです。課題を瞬時に次々と提示し、短時間で集中して反復練習することで、基礎的な知識や技能の定着を図る教材です。『eTeachers(イーティーチャーズ)』という教員向けのサイトで公開し、会員登録するだけでさまざまなタイプの教材が無料でダウンロードできるようになっています。それを授業に活用することはもちろん、自作したフラッシュ型教材を投稿できるようにもなっており、教材数は1万点を超えています」

堀田教授がプロジェクトリーダーとして関わっているこのサイトの登録者数は、全国の教員や教員をめざす学生の約1万4,000人。そうした教員の卵を指導する堀田教授は、「玉川大学教育学部の授業でも、フラッシュ型教材を作成させています。“若い先生だから情報機器を使った授業ができる”という周囲の期待に応えるためにICT活用に関する知識と技術を身につけさせています。実際、文部科学省による新しい学習指導要領では、小学校の段階でICTの操作スキルを指導することになっています。これからは、ICTの操作スキルやその使いこなし方を備えていることが前提の社会となるのでしょうが、今はまだ教える側に十分な指導力を備えた人が少ないのです」と、教育現場の現状を語ります。

楽しみながらスキルを習得するプログラム

堀田教授は、児童のキーボード日本語入力のスキルアップを目的とした無料のサイト『キーボー島アドベンチャー』にもプロジェクトリーダーとして深く関わっています。
「このサイトは、ロール・プレイング・ゲームのような学習ソフトで、楽しみながらキーボード日本語入力のスキル向上を図っています。レベルに応じて30級から初段までの段階を設けています。個々の児童にIDとパスワードを発行していますので、児童はサイトへのアクセスからパスワードの管理といったことまでを体験的に学習することができます。さらに、担任を介して申し込みを受け付けていますので、児童一人ひとりの利用状況や進級度合いなどを担任が確認することが可能です。これがICTの操作スキルに関する教育の導入になるのではないでしょうか。授業を通して便利さがわかれば、さらに使う頻度も高まるでしょう。子供たちの理解が高まるなら……、授業方法の情報があれば……、そう思っている小学校の先生に応える取り組みのひとつです」

「ICTでは、機器の操作法の習得は、最低限の必須条件です。しかし本当に求められているのは、操作法の習得よりも、メディアとの適切なつきあい方です。現代は、学校で学んだことだけでは不十分で、大人になっても学び続けないといけない時代。その学ぶ手段のひとつにICTがあるのです。それを学ぶ子供たちも大変ですが、保護者の悩みも増えています。子供たちが体験・経験を通じて学ぶべきことがある一方で、情報化に対応する力もバランス良く身につけなければならないのですから。また教員には、ICTを有効に活用するティーチング・スキルを身につけていることが、より求められていくでしょう」

ICTは科学の粋であり、進展は秒進分歩

「ICTは科学技術の粋。ハードばかりに目がいきがちですが、頭の中で判断することをソフトと考え、もっと大切にしたいものです。メディア経由で受けたり発信したりする情報をどう判断し、どの情報をどのくらいチョイスするかを自分で決められることが大切なのです。玉川学園は“全人教育”を信条として、体験から学び、人を大切にして、人・社会に貢献できる人材の養成を理念に掲げています。情報化社会においても、情報を発信してこそ、人の役に立てるといえます。いろいろな意見があれば迷うこともありますが、それだけ選択の幅が広がります」と語る堀田教授。メディアが組み込まれた社会に生きる私たちは、たくさんあるメディアチャンネルの中から自然と最適なものを選んでいるのだそうです。その見きわめが重要なのです。

「ICTの進展スピードは日進月歩ならぬ“秒進分歩”。それだけに、深く考えることを奪われているように思います。利便性を高めるために作ったものに振り回されるようになってしまいます。そんな中でも、より質の高い教育を提供していこうと頑張っている教員の熱意に応え、現状を少しでも改善していきたいと思っています。子供たちの教育を担っているのは、学校と保護者です。その両者に、あらゆるチャンネルで現場と関わりながら、小学校の教員だったからこそできるサポートをしていくつもりです」 こうした教員研修コンテンツの提供やICT活用事例の収集・公開、電子黒板等を活用した分かりやすい授業づくり、教員のICT活用指導力の向上など、堀田教授の取り組みは社会的にも高く評価され、平成23年度情報化促進貢献個人部門で文部科学大臣表彰を受賞されました。