科学するTAMAGAWA "使える"だけではなく、"人間教育"に資する英語教育を

2012.03.25

グローバル化が進む現代社会に必須の英語教育。
しかし、“どんな英語教育”が必須なのでしょうか。
全人教育を理念として掲げる玉川大学では、
人間教育に資する英語教育こそ、重要であると考えています。

全人教育に資する英語教育とは

教育信条の一つに「国際教育」を掲げる玉川学園にとって、英語教育は欠かすことのできない重大な使命です。ただしそれは、“英語が使えるようになればいい”ということではありません。では、「全人教育」をめざす玉川学園が取り組む英語教育とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

今回は、玉川大学の英語教育を牽引する文学部の取り組みを中心に、理事(高等教育担当)でもある高橋貞雄教授(写真右)と、比較文化学科主任・日臺滋之(ひだい しげゆき)教授(写真左)のお二人にお話を伺いました。

真の英語教育にふさわしい教科書

高橋教授と日臺教授は、玉川大学の英語教育、特に英語教師をめざす教職課程の学生の指導に力を注いでいます。その一方で、中学校の文部科学省検定済英語教科書NEW CROWN ENGLISH SERIESの編集にも携わっています。「私はもう20年以上NEW CROWNの編集に携わっています」と語るのは、現在、代表著作者を務めている高橋教授。その教科書編集の根幹には、玉川学園の「全人教育」に通じる理念があるといいます。

「教科書の編集で重要視しているのは、“人間教育”に資するという理念です。近年はグローバル化が進み、必然的に英語が“使える”ことが求められています。もちろん、使える英語を学ぶことは大切ですが、それだけでは“教育”としては不十分です。英語を使って“誰に”“何を”伝えるのか。その中身がなければ、本当の教育とはいえません。そのためには、英語の授業の中で何かを感じたり、考えさせられたり、心を揺さぶられたりする体験が必要なのです」。

それを可能にするのが、理念に基づいた「題材」の設定であると高橋教授はいいます。「私は日頃、教職をめざす大学生の指導をしていますが、ときどき学生に『中学校の英語の授業で何を覚えていますか』と質問してみます。しかし、多くの学生は何も答えられない。それは中学生のときに、自分の心を動かすものが授業の中になかったからでしょう。そこで、例えば現在の中学1年生の教科書には、アメリカの子どもたちが学校で何を習っているのか、どんな生活をしているのかを題材として取り上げたレッスンがあります。そこには、給食ではなくカフェテリアでお昼を食べるとか、英語の代わりにスペイン語などの言語を学んでいるといった、英語を習う中学生にとって身近な話題が書かれていて、自然に異文化に興味が持てるよう配慮されています。あるいは、キング牧師のスピーチを題材に取り上げ、アメリカの人種問題やそれに対するキング牧師の考え方に触れられるようなレッスンもあります。こうした題材の設定によって、子どもたちは授業の中で異文化について知り、考え、心を動かされ、人間として成長できるのです」。

NEW CROWNの理念は大学教育にも通じる

また、日臺教授は「題材を受け止める感性は、中学生も大学生もさほど変わらないのでは」と話します。「私は大学を卒業後、中学校の英語教師として現場にいました。その経験から言っても、教科書の人間教育に果たす役割というのは大きいと感じています。例えば、NEW CROWN の中学2年生の教科書には、狂言の「附子(ぶす)」の“ユーモア”をテーマにした題材と猫がカモメの卵をかえしてひなを育てる童話で、“約束を守る大切さ”をテーマにした題材があるのですが、中学生にそれらのどちらが好きかと聞くと、圧倒的に後者が選ばれます。それは2つの作品を学習した結果、より後者の作品に心を動かされたからでしょう。文学部で英語教師をめざす学生は、NEW CROWN を使って英語の指導方法について学びますが、やはり、後者の題材が心に残る学生が多いようです。
以前、私の研究室のドアの横にある掲示板に学生が心に残った後者の作品の英語の一節を書いたものを見つけ、微笑ましく思ったことがありました。つまり、後者のような人間教育に資する題材は、普遍的に心に残る良さを持っているということです」。

こうしたことから、理念に基づいた題材がいかに大切かがわかる、と日臺教授は続けます。「私は中学校の教育現場で、10数人の外国語指導助手(ALT)とティーム・ティーチングの授業をしましたが、彼らはみんな口をそろえて『NEW CROWN は、英語は易しいけれど内容は深い』といいます。そのような教科書こそ、私たちがめざす“人間教育”に資するものであり、玉川大学の“全人教育”につながるものであると思います」。

そこで、玉川大学ではこうした理念に基づく授業を、英語教師をめざす学生に対して実践していると高橋教授は話します。「私は、授業で学生にNEW CROWN の暗唱をしてもらいますが、必ずその言葉を発する登場人物の気持ちになりなさいと指導しています。例えば『怖い』という言葉なら、ちゃんと怖がっているように声を出す。つまり、ただ英語を読んだり話したりできれば良いのではないのです。英語を使って相手に何かを伝えるということをこそ、重要視しているのです」。

一方、日臺教授は「教育実習に取り組む学生には、『教科書の英文をしっかり頭に入れたうえで教壇に立ってほしい』と言っています。つまり、教科書の英文を覚えてしまうだけでなく、理念を理解して、教科書を自分のものにして授業に臨みなさいということです。それは簡単なことではありませんが、決して不可能なことでもありません。私たち玉川大学が育成をめざす英語教師は、そのような“人間教育”に資するスキルを持った人材であってほしい」と話します。

英語教育をさらに深くもっと広く

こうした“人間教育”に資する英語教育に力を入れている一方で、英語を学ぶシステムの改良や、玉川大学が有するリソースの活用などにも積極的に取り組んでいます。「例えば、e-learningの導入がその一つです」と日臺教授。「大学の授業だけでは、英語に触れる時間はどうしても限られてしまいます。そこで、文学部では学生がいつでもどこでも自分で学びを進められるようにe-learningのシステムを整えています。これは同時にTOEICの対策問題にもなっていて、英語教師をめざす学生はもちろん、企業への就職をめざす学生にとっても大きな武器となるはずです」。

このシステムのメリットは、学生がどれだけ学習に取り組んでいるか、成績がどのように推移しているかを、教員がしっかり把握できることだといいます。「e-learningに取り組んだ結果はすべて記録に残ります。これまでの結果を見ると、e-learningにしっかり取り組んでいる学生とそうでない学生とでは、1年次の段階から大きな差が出ており、このシステムが確かに有効であるということがわかっています。あとは、e-learningに取り組んでいない学生に取り組むことを促したり、がんばっている学生には『よくやってるね』と声をかけたりして、学生のモチベーションを高めることも大切にしています」。

また、玉川大学を卒業し現役の英語教師として働いている人と大学をつなぐネットワーク拠点「ELTama(玉川大学英語教育研究会)」が、2009年に発足しています。「玉川大学には英語教育の伝統があり、優れた英語教師を多数輩出しています。これは大学の貴重なリソースでありながら、今まで十分に活用できていませんでした」と高橋教授。「そこで、大学に卒業生を招き、卒業生同士で悩みや問題点を共有したり、実際に現場で働く英語教師だからこそ持っている最新の教育事情を、我々大学の研究者や学生に伝えてもらえる場として発足したのがELTamaです。現在は年1回のセミナーで講演会やワークショップなどを実施しています」。

日臺教授は、「卒業生と大学院生、学部生がELTamaを通して自然とつながり、卒業生は教員としての力をさらに高める場として、大学院生や学部生にとっては将来めざすべき教師像を見つける場として機能させたいと考えています」と語ります。「ただし、それには年1回のセミナーだけでは足りないし、もっとたくさんの方に関わって欲しいと考えています。そこで、今後は玉川大学の卒業生だけでなく、近隣の学校の英語教師をはじめ、教育関連の出版社の方、教育委員会の方々、学生の保護者の方まで広く参加者を募って多くのセミナーを開催し、玉川大学の英語教育を社会へ発信すると同時に、社会からたくさんの情報が玉川大学に集まるようにしていきたいと考えています」。

玉川大学が考える本気の英語教育

さらに、2012年4月から新しい取り組みも開始すると高橋教授は話します。「それが『EFLプログラム』の導入です。これにより、学部にかかわらず玉川大学の学生全員の到達目標としてTOEIC650点以上の英語力の獲得をめざしています。EFLプログラムはそのための方策です。このプログラムでは、TEFL(注1)やTESOL(注2)といった英語教授法の資格を有する教員による4単位の英語科目をレベル別に用意し、十分な学習時間と学習の質を確保します。学生のみなさんにも覚悟をもって本気で取り組んでもらいたいと思います。2012年4月から文学部比較文化学科と経営学部でスタートし、順次全学部に広めていく予定です。」

これは、玉川学園が2020年までの事業計画として掲げる「TAMAGAWA VISION 2020」の一つであり、全学をあげて取り組む本気の改革だといいます。「玉川大学には英語教育の伝統があり、優れた英語教師を多数輩出してきた実績もある。その伝統や実績に恥じぬよう、我々はできる限りの時間とエネルギーを費やしてこの改革に取り組むつもりです。そして、玉川大学に入学して努力すれば、それだけの学力が必ず身につくということを、学生にも、保護者の方にも証明していきたい」と高橋教授。玉川大学の本気の英語教育に期待が高まります。

  • 1TEFL【テフル】:Teaching English as a Foreign Language
    外国語としての英語教育(教授法)
  • 2TESOL【ティソール】:Teaching English to Speakers of Other Languages
    英語以外の言語を話す人に対する英語教育(教授法)