『ロボカップジャパンオープン2013東京』に向けて

2013.04.25

「ロボカップジャパンオープン2013東京」開催委員会 会長
NPO法人 ロボカップ日本委員会 会長
野田五十樹

より身近な環境でロボットを動かしたい、よりわかりやすい形でロボットや人工知能の技術を評価したい、という思いで始まったロボカップも、はや17年がたち、参加者も競技の数も増えてきました。一方で、2年前の震災や原発事故、あるいは高齢化社会や地球温暖化など多くの課題を抱える現代社会に、科学技術がどう応えられるのか、ということが問われつつあります。ロボカップでは、これらの問題に関連の深い種目を取り上げ、研究者が真摯に取り組み、また、次世代を担う子供たちが主体的に創意工夫を凝らせる場を提供することを目指しています。今回、玉川学園・玉川大学で開催されますジャパンオープン2013東京では、このような参加者たちの真剣な取り組みの意義と楽しさを、一般の皆様と共有していければと考えています。

「ロボカップジャパンオープン2013東京」開催委員会 名誉会長
玉川大学 学長・玉川学園 学園長
小原 芳明

本学では「玉川ロボットチャレンジプロジェクト」において、脳科学研究所、工学部機械情報システム学科でのロボット研究を始めとし、玉川学園低学年の児童までを対象にロボット関連の教育研究活動を展開しています。次世代ロボットは、我が国の少子高齢化による労働力不足への対応や、医療・福祉の現場への活用、安全安心で便利な生活を実現するために役立つことが期待されてはいるものの、まだその市場が確立されているとは言えせん。我が国のロボット産業の競争力強化の観点から次世代ロボット市場を創出、拡大させていくことは大変重要です。産学官が一体となってSTEM(Science, Technology, Engineering, and Mathematics)の教育を推進することが必要です。本大会を本学で開催することで、次代を担う人材の育成はもとより、研究者間および研究者と産業界の交流・マッチングの機会提供に大きく貢献したいと考えています。

科学するTAMAGAWA:SPECIAL TALK

1998年の第1回大会以来、東京では実に14年ぶりの開催となった「ジャパンオープン2013東京」は、シニア・ジュニアが同時開催。サッカー・レスキュー・@ホーム・ダンスの競技に、全国の小学生から大学生・研究者まで約300チームが集結します。

「ロボカップジャパンオープン2013東京」の開催委員会副会長の大森隆司教授(大学院工学研究科長)、開催委員会委員の岡田浩之教授(工学部機械情報システム学科)、玉川学園サイエンスクラブ顧問の田原剛二郎教諭(中学部理科担当)に、今大会の概要や見どころを語ってもらいます。

社会に役立つロボット技術を育成する国際プロジェクト

大森: ロボカップジャパンオープン2013東京」は、玉川学園創立85周年記念事業として、NPO法人ロボカップ日本委員会と共同で開催します。ジュニア競技についてはロボカップ世界大会の地域大会でもあり、世界大会への選抜大会となります。第2回大会以降、関西での開催が多かったため日本国内での認知度はそれほど高くないのですが、世界的なステイタスは高く、昨年のメキシコ大会(第16回世界大会)には35カ国から出場者が集い、連日大勢の人が訪れ、大きな注目を集める大会になっています。

岡田: ロボカップは「2050年にサッカーの世界チャンピオンチームに勝てるロボットチームを作る」という目標を掲げて1997年より毎年開催されています。今ではサッカーだけでなく、阪神淡路大震災をきっかけに発案されたレスキュー、リビングやキッチンなど日常生活の場でのロボット利用を想定した@ホーム、そして子どもたちの探究心を引き出して、ものつくり立国を支え人材を育成する「ロボカップジュニア大会」も同時開催です。レスキュー以外はどの競技も、人の手を借りずに自分で状況を判断して動く自律ロボットを使用しますが、優勝チームや世界大会出場チームのロボットはそのプログラムが公開され、他のチームがそれを開発に役立てることができるようになっています。オープンソース方式になっていることで出場チームの技術が飛躍的にレベルアップしていることもロボカップの大きな特長ですね。

田原: ジュニア競技には、本学からサッカーとレスキューが出場します。ジュニアは、全国各地での地区予選と、北海道から沖縄までの各ブロックで大会があり、そこで勝ちぬいた上位チームがジャパンオープンへ出場してきています。出場チームが非常に多く、各地区予選あわせると1000チーム以上がエントリーしているのではないでしょうか。ジュニア競技では、試合の勝ち負けよりは協同・協力・協調などを理念として重視します。チームで力を合わせてロボットを作り、大会では試合前・試合後にきちんとあいさつをします。世界大会では他の国のチームとペアを組んだり、自分たちが作ったロボットを英語で説明することが求められたりして、教育的な側面を重視するところが「ロボカップジュニア」の特長です。

「ロボットチャレンジプロジェクト」の成果を生かして

ロボカップ2012 メキシコ世界大会

大森: 今回のジャパンオープンに、開催校の玉川大学からは「ロボカップ@ホーム」と「サッカー2Dシミュレーション」と「ロボカップジュニア」にチームが出場します。岡田先生が指揮を執る@ホーム部門のロボットは、過去に世界大会優勝2回(2008年、2010年)、準優勝2回(2009年、2012年)という素晴らしい成績を残しています。世界レベルでのこうした実績に加え、学園全体で「玉川ロボットチャレンジプロジェクト(TRCP)」を推進していることも、今回玉川学園でロボカップジャパンオープンが開催されることになった要因の一つになっています。

工学部の学生が指導し
ロボット製作をする小学4年生

岡田: TRCPは、小学4年生から大学院生まで玉川学園のロボット教育・研究活動の連携を強め、理系分野の基礎能力を高めていこうという活動です。TRCPによって、工学部や大学院工学研究科、さらに脳科学研究所でのロボット研究の成果が玉川学園の教育現場に幅広く展開されています。学園低学年におけるロボット工作体験から、中学年・高学年の部活動等で行われているロボット活動、さらにロボカップをはじめとするロボット競技会への継続的な出場に向けたロボット開発にまで、より高いレベルでの支援が可能になっているのです。


ジュニア・レスキュー競技

田原: TRCPによって、工学部の先生や学生との連携が深まっています。ロボット製作を継続的にサポートしてもらってさまざまなセンサーが使えるようになり、研究のレベルも高くなりました。玉川学園が「ロボカップジュニア」の地区予選に初めて出場したのは、2007年。そのときはスイッチを入れてもまったく動かず、試合になりませんでした。けれども、TRCPによって大学の先生たちや学生からの支援が得られるようになってからは、技術レベルが向上して、2009年に初めて関東ブロック大会に進出。2011年にはジャパンオープンのジュニアの「レスキューB」部門で初優勝、2012年大会でも同部門で3位入賞と、安定した成績を残せるようになってきました。

大森: 今回の公式ロゴや「MIRAI」と命名された公式キャラクターは芸術学部メディア・アーツ学科の学生の作品です。また、大会運営に関するボランティアを大学生にお願いしています。TRCPでは、ロボットを題材とした教育法の開発や体系化も事業の一つに掲げています。今後は、まず教育学部を対象に、レゴを使ったロボット教授法を授業として開講する計画があります。将来先生になる人が多い学部ですので、特に今回の大会はロボット利用の教育について理解を深める貴重な機会になるはずです。人材育成の幅をより拡大していくというTRCPの観点からも、今回のジャパンオープンは玉川学園にとって大きな意義があります。

子どもから大人まで初めて観戦する人にも楽しめる競技会

岡田: 今回のジャパンオープンには海外の強豪チームや世界大会で優勝したチームも参加します。それぞれのチームがどんな技術や戦術で試合をするのか、見どころはいっぱいです。チェスや将棋の世界ではコンピュータが人間と同等レベルで戦えるようになっていますが、ロボットは2050年にサッカーの世界チャンピオンチームに勝てるほどに進化できるのか。私は必ず達成できると考えていますが、各競技に登場するロボットからそんな夢のある未来を想像するのも楽しいことです。私の研究室では“赤ちゃん”の脳の発達過程をロボットの人工知能に応用する研究を行っています。何も教えなくてもひとりで歩いたり話せたりするようになる赤ちゃんは、実用的な人工知能の開発に欠かせない研究対象です。玉川大学の脳科学の研究成果を生かした自律型ロボットによって、「ロボカップ@ホーム」に出場する大学生・大学院生のチームと「ロボカップジュニア」に出場するチームが一緒に世界大会で優勝することが私の悲願です。常に高いところに目標を定めてチャレンジを続けていきます。

田原: 今回出場するジュニアのレスキューチャレンジは、災害現場を想定したフィールド内の迷路を探索して被害者に見立てた発熱している物体を発見するという競技です。昨年のジャパンオープンで3位に入賞したチームが今年も予選を勝ち上がり出場しますので、昨年以上の成績をあげて6月にオランダで開催される世界大会に進みたいですね。今回の「ロボカップジュニア」では、大学生になったOBとの交流戦も企画されています。先輩たちから後輩が何を学び取るのかということも楽しみの一つです。ロボカップでは毎年ルールが改定になって難易度があがりますので、これまでに蓄積された技術をあとに続く生徒たちがしっかりと受け継ぎ、大会に出場しない生徒も含めて全体でレベルアップを図れるようにしています。また、工学部の先生たちと生徒たちが連携してロボット制御に関わる研究を繰り返す中で、センサーの感度や使用方法の工夫をまとめた生徒の研究が、2011年、歴史のある科学コンテストでもある日本学生科学賞の中央審査(全国大会)で賞をいただいきました。先生たちからいろいろなことを教わりながら、同時に自ら考える力も高めていく、この基本姿勢は今後も一貫して継続していきたいと思っています。

サッカー中型機

本学から@ホームリーグで出場するロボット
左:Gwyn(グウィン) 右:Pico(ピコ)

大森: 「ロボカップサッカー」は、いろいろな規格のロボットが実際に競技を行う種目と、コンピュータのスクリーンフィールドでサッカーをする種目、あわせて5リーグで競技を行います。「ロボカップレスキュー」にも実際にロボットが競技を行うリーグと救助戦略を考えるシミュレーションリーグがあります。玉川学園のチームがどんなパフォーマンスを見せるかぜひご注目ください。競技の様子はすべて一般公開され、会場ではマイクで実況解説も行われます。たとえばサッカーの中型機ではボールをフィールドの端から端まですごい勢いでキックしますし、ジュニアのサッカーでは子どもが作ったとは思えないほどの目にもとまらぬスピードでロボットが動きます。こうしたすごいロボットを見るだけでも、子どもから大人まで初めて観戦する人にも、大いに楽しんでもらえると思います。また、東日本大震災で福島の原子炉建屋内に投入された災害対応ロボットの開発者による講演、同型の災害対応ロボットの展示なども行います。3日間ですべて見ることができないほど、いろいろな競技やイベントがあります。ぜひご家族でご来場いただきたいですね。