外国につながる子供たちの指導を現場から学ぶあーすぷらざの出張授業。

2016.12.09

教育学部の専攻科目「教職実践演習」は4年間に学んだ教職課程の集大成として、玉川大学の求める教師像を確認し、自分の目指す教師像を明確にする科目です。教師として必要な知識や技術を把握し、他者の意見を取り入れながら、課題を解決する方法を学びます。10月28日の授業では、神奈川県立地球市民かながわプラザ(通称:あーすぷらざ)の皆さんによる出張講義で、言葉や文化の壁を乗り越えて、外国につながる子供たちを教室でどのように支援するかを学びました。

外国につながる生徒たちの教育相談を実践する「あーすぷらざ」

グローバル化が進む社会の中で、外国籍の児童や日本国籍でありながら外国で育った児童など、外国につながる子供たちの数は、日本の小中学校でも増加し、教師にはこうした子供たちを指導する機会も増えています。教職実践演習では毎年、外国籍住民や支援者のサポートの一環として、外国につながる生徒たちの教育相談を行うあーすぷらざの出張授業を行っています。
この日は、学校や教育委員会と連携し外国につながる子どもたちの教育相談にあたるコーディネーター徳野早苗さんと、鹿児島出身の祖父を持ち、1990年、13歳の時にペルーから来日し、公立小学校、中学校卒業後、就職、結婚、子育ての経験を生かして、あーすぷらざのスペイン語サポーターをする西之原愛子さんをゲストスピーカーに招きました。

中高一貫校や小学校の教師を経て、JICAの日系青年ボランティアとしてパラグアイで日本語の指導していた経験もある徳野早苗さん
子育てと並行して通信制高校を3年間で卒業。「まだまだ学びたいことは多いけれど、子育ても大切にしたい」と二児のお母さん、西之原愛子さん

子供たちが異なる言語や生活習慣を乗り越えるために

あーすぷらざや教育相談の紹介に続いて、西之原さんから日本に来た当時の体験を聞きました。
「当時、教室では外国人は珍しく、初めて入った時はみんながわっと湧いて、いろいろなことを聞かれ、毎日ドキドキしながら学校に通いました。外国につながる子供たちはすごく不安を感じています」
具体的な事例についての考察に移ります。

日本では両手で丸を作れば“OK”でも、ペルーでは通じません。文化が違うとボディランゲージもなかなか通用しません

「ペルーでは中休みに飲食をしてもいいので、教室でサンドイッチやコーラを出して、食べようとしました」。「気づいた先生は、辞書を引いて、『学校では食べ物はいけない』と、簡単なスペイン語で書いてくれました」。西之原さんは先生の対応を振り返ります。
「食習慣の違いから、西之原さんは給食が食べられません。さて、どうしたでしょう」
「実際に日本食は食べられませんでした。最初は様子を見ていましたが、先生が心配して、パンの日はおかずを、ご飯の日はお弁当を持って来ました」。しかし、母親になった西之原さんは自分の子供が給食で日本食に慣れていく様子を目の当たりにして、食べる努力も必要なことを今、感じました。

ワークシートとグループワークで主体的に考える

用意された設問にそれぞれ考えて、ワークシートに記入する学生
ワークシートに記入した考えをベースにグループ・ディスカッション

続いて、学生にワークシートが配られました。個々に考え、さらに3〜4人のグループでディスカッションをします。
「最初はクラスメイトが話し掛けてくれたけれど、そのうち話し掛けられなくなった」。1つ目の設問に、学生からは「特別活動の時にその国の特徴的な文化を学んだり、一緒に登下校できるように、家が近い児童を先生がつなぐ」「クラスでその国の言語を学び、あいさつに使ったり、みんなで話したり、積極的にコミュニケーションできる環境を先生が提供する」という意見が出ました。
「仲のいい友達が、私に代わって先生に私の気持ちや希望を伝えてくれました。頼れる友達が一人でもいると安心して学校に通え、とても楽になります」。西之原さんは経験を語ります。
「皆さんの発表は居場所となる学級環境をつくることに当てはまります。先生がその国の文化や事情を知っていれば、児童の行動が見えてくると思います」。徳野さんが補足します。
次は保護者に関する問題。「子供の学校での様子や学校の中のことを教えてほしい」
「日頃から写真や映像を撮影して、それを保護者に見せながらコミュニケーションを取る。文章を読むのが難しいなら、その内容を保護者に電子データで送れば、いろいろな方法に使えます」
「写真や映像を使うことは私たちも思いつきませんでした」と徳野さんは学生の意見に感心します。「当時は今のように映像もなく、両親は日本語が分からず、先生が連絡帳に『今日はどうだった』とか、易しい日本語をローマ字で書いてくれました。そのうちスペイン語ができる人を探して、週一回、一週間分をまとめてスペイン語に訳してもらいました」
「保護者の不安は、学校生活が分からないからです。写真で分かる保護者用の手引き書の利用ややさしい日本語表現も大切です。例えば、写真と一緒に『道は車でいっぱいです』と伝えれば、道路渋滞も理解できます。やさしい日本語で伝えることは皆さんもできる方法の一つです」
3つ目の問いは「算数の授業でサイコロの4の目の裏の数が分からない」です。「サイコロ自体を知らなかった」当時の西之原さん。学生が導き出した意見は「実際にサイコロを用意して全員に配り、クラス全員で一緒に学ぶ」。「あの時にそうして欲しかったです。その方法はいいですね」と西之原さんの共感も得られました。

「保護者には写真や映像で学校生活の様子を説明する」とグループ・ディスカッションの内容を発表
サイコロの問いには「実際のサイコロを全員に配る」ことで、クラス全員が一緒に学ぶことで解決を図ります

日本で最初に出会った先生が一番大切

外国につながる子供たちやその保護者とのコミュニケーションに役立つ資料やウェブサイトを紹介
「相手の立場に立つことは、教師となってからのことだけではなく、日々の取り組みが大切」と大谷准教授
西之原さんの苦労と前向きな取り組みに学生も感動。「涙が出てきました」

「外国につながる子供には、日本に来て最初に出会った先生がすごく大切です。私が困らないように、先生が優しく、一生懸命教えてくれました。それがあったから、今の私があります。皆さんも心を込めて対応できる先生になってください」
「今日考えたことは、どれが正解とかではありません。考えることが大切なのです。皆さんもいろいろ考えて、引き出しを増やしてください」
最後に、西之原さん、徳野さんから、大切なポイントが伝えられました。

学生に授業の感想を聞きました。
「教員採用試験に合格し、4月から教員になります。私自身もアメリカ留学でつらかった経験があり、共感する部分がありましたが、児童ならなおさらです。留学時の経験を生かして指導したいと思います。また、学校では視点がつい児童に偏りがちですが、保護者も学校生活に不安があることも知りました。今日は教員に必要な視点を学ぶことができました」(男子学生)
「私はもともと教員志望でしたが、3年の時のアクティブ・ラーニングでの共同研究がきっかけで企業に就職することになりました。でも、内定した企業では多文化共生でいろいろな国籍の人が関わっているので、今日の授業は役に立ちます。文化や価値観の違う人々の話は知見が広がるだけでなく、もっと他の国へと興味も湧いてきます」(女子学生)
「西之原さん自身の来日時の経験に加え、保護者はどう考えるか、両面から考えることができました。僕は去年「日本語パートナーズ」に応募して、一年間、タイで日本語を教えてきましたが、そこは日本人が自分だけで、マイノリティーの気持ちを体験しました。教員になれば必ず担任を持つと思いますが、個々の環境で児童を考え、どこがマッチングしないのか考えていきたいです。外国につながる生徒に限らず、支援が必要な児童一人ひとりにしっかり向き合いたいです」(男子学生)

「『相手の立場に立つ』。皆さんには西之原さんの言葉が心に染みたと思います。『相手の立場に立つ』ことは、”多様な視点から物事を考える”ということです。これは、皆さんに常に意識してほしいです。大学4年の最後の学期だからこそ、一つひとつの授業から最大限を学べるように自分の殻を破っていってほしいです。そして、教師になってからは、目の前の子供たちに対して、『その子にとって自分が最初で最後の先生になるかもしれない』と考えてみてください。そうすると、その子供や保護者に対してのアクションが変わると思います」
大谷准教授はこの出張授業の求めるものを学生たちに問いかけました。

神奈川県立地球市民かながわプラザ(通称:あーすぷらざ)

あーすぷらざは、日本語を母語としない児童生徒の支援として、学校や教員のサポートを行ったり、外国人向けの相談窓口を開設しています。また、多言語で書かれた絵本、多学校の書類の雛形、教材、本など、日本語を母語としない大人や子どもだけでなく、そういう人達を支援する学校の教員や支援員にとっても役立つ資料を集めた図書館や情報のリソースセンターもあります。