巨人軍の寮長として選手を指導。その経験を生かし、玉川大学硬式野球部監督を務めている樋澤良信氏の保護者向け講演会が開催されました。

2016.12.22

玉川学園では保護者の皆様を対象とした「K-12 父母教養講座」を開催しています。10月17日(月)には、玉川大学硬式野球部監督の樋澤良信氏をお招きし、「巨人軍寮長式 伸びる子の育て方」と題した講演会が行われました。樋澤監督は、元プロ野球選手。東北高校を卒業後、日本電信電話公社東北支社(現・NTT東日本宮城支店)に就職し、社会人野球の世界で活躍。そして1971年にドラフト4位で読売ジャイアンツに入団しました。引退後は巨人のフロントに入り、2006年からの5年間、ジャイアンツ寮の寮長として若手の育成を支援してきました。その後、2014年3月に玉川大学硬式野球部監督に就任したのです。
今回の講演会では、野球界でトップレベルの才能があり、豊かな個性も備えたジャイアンツの新人選手たちをまとめ上げ、現在は硬式野球部を強いチームへと育ている樋澤監督の経験を通して、いかにして子供の良い部分を見つけ、伸ばしていくのかを語っていただきました。

野球選手を引退した後、ジャイアンツのフロントに入ることになった樋澤監督。当時は選手が球団のフロントとして再雇用されることが非常に珍しく、注目を集めたそうです。その後、守備走塁のコーチやチーフスコアラーなどを経て、独身若手選手を預かる「ジャイアンツ寮」の寮長に就任します。「根が心配性なので、選手のケガやなにか問題が起きてないかなど、常に気になって、当時は夜もおちおち眠れませんでした」。就任当時は育成枠の選手が一気に入団してきた時期でもあり、多くの選手を預かる責任を常に感じていたそうです。

巨人軍コーチ時代の樋澤氏

「そうした中で気を配ったのが栄養管理、特に朝食です。若い選手たちは1分でも長く寝ていたいのか、朝はなかなか食堂へやって来ません。けれども練習に耐える身体を作るためには、栄養摂取が必要です。そこで部屋まで起こしに行き、ヨーグルトでもフルーツでもいいからとにかく食べさせました」。そうした努力の甲斐もあり、半年も経つと自ら進んで朝食を摂る選手が増えたそうです。「栄養士もいるので、何を食べるべきか相談する選手も出てきました。私自身、寮の食事の質を高めるよう球団に直訴したこともあります。選手のために何をするのかが、寮長の一番の仕事ですから」。こうやって樋澤監督が当時育てた選手たちが、坂本勇人選手を筆頭に、現在のジャイアンツの中心として活躍しているそうです。
また、辛かったのはドラフトの時期だと語る樋澤監督。「新人選手が何名か入団すれば、同程度の人数の選手を辞めさせなければいけません。プロの世界はそうした厳しさがあります。私自身、選手時代はそうした状況に身を置いていたので、その辛さは痛いほど分かります。中には1年で去っていった選手もいました」。父親のような気分で、去っていく選手の将来を気にかけたそうです。「だから、常日頃から選手を集めてはセカンドキャリアについて語りました。どの選手も、ユニフォームを脱いでからの人生のほうが長いのです。ジャイアンツに入団するような選手は、野球中心の人生を歩んできた者ばかりですから、そのことはよく話しましたね」。

「そして2010年に定年退職になった私に硬式野球部の監督をやってくれないかと声をかけてくれたのが、玉川大学だったのです」。こうして2014年から玉川大学の硬式野球部監督として指導することになりました。
「最初は、なかなか勝つことができませんでした。1年目は1勝11敗で、2部リーグの最下位という結果でした」。そうした中、2年目は在籍部員よりも多い人数の部員が入部。80名という大所帯になりました。練習では筋肉、パワー、スピードといった身体作りを徹底して行いました。「すると、徐々に勝てるようになり、成績も上がっていきました。2年目に6勝することができ、3年目の今年は、秋季リーグを終えて2部リーグの4位です。まだまだ勝負どころで勝ち切れないところはありますが、経験を積めばもっともっと強くなれるはずです」。

寮長時代の樋澤氏

講演の最後では、前もって寄せられた質問に対して樋澤監督が答えてくれました。「選手の私生活で気をつけていることは?」という質問に対して、「やはり翌日の練習が休みとなれば、気が緩むこともあると思います。そんなときには、行動に責任を持つように選手には伝えています」と語る樋澤監督。「部員の指導では、当たり前のようですが、礼儀、感謝、時間の厳守を徹底しています。一人ひとりが野球部を、玉川大学を背負っています。何か不祥事を起こせば、硬式野球部が解散することになるかもしれません。練習を離れても考えて大人として行動するように、選手たちには話しています」。
また、日頃の練習についての質問に対しては、私がよく部員に話すのは、“オフも練習のうち”ということです。一週間酷使してきた身体をどのようにケアするのか、そして次の一週間にどのようにつなげるのか。もちろん身体を休めるだけがすべてではなく、気持ちをリラックスさせてもいいんです。何を選ぶかは君次第だと伝えています」。
「監督としてまずやることは?」という質問には、「名前を覚えることです。現在は120名の部員を抱えるまでになりましたが、全員の名前を練習が始まるまでに覚えます。指示を送る際にも名前で呼ぶことが大事です。監督が自分の名前を知っているというのは、部員の励みになります。そうしたことが、実は選手を伸ばすポイントだったりするんです」。
「子供の得意なところを伸ばすのと、不得意なところを克服するのではどちらを優先したらよいでしょうか?」という質問には「もちろん、得意なところを伸ばすことが大切です。得意なところを伸ばしているといつのまにか不得意なところを克服しているものです」。また、「子供の性格によっては不向きなこともありますから、コミュニケーションをとってそれを見つけてあげることが大事」とも語ってくれました。
寮長時代の出来事や玉川大学硬式野球部での指導法だけでなく、学生時代や選手時代の思い出など、なかなか聞くことのできないエピソードを聞くことができた今回の講演会。普段の子育てにも役立ちそうなヒントがたくさんありました。