2016年10月23日(日)、「教師教育フォーラム」が開催されました

2016.12.22

本学の「教師教育リサーチセンター」と「教育学研究科教職大学院」の共催による「教師教育フォーラム」は今回で5回目を迎えます。午前の部は講演とショートレクチャー、シンポジウムが行われ、午後の部は8つのテーマで分科会が開かれました。休日にも関わらず大勢の教育関係者や教職をめざす学生が集い、「教員養成」の課題について考えました。

多数の教育関係者や教職志望の学生が注視した、「教師教育フォーラム」の講演・ショートレクチャー・シンポジウム

教員養成の現状と今後の課題について理解を深めるためのフォーラムを、毎年10月に開催しています。教育界で活躍されている方々をお招きし、教員養成に関する講演やシンポジウム、分科会を行い、教育界だけでなく広く一般に向けても提言を行っています。2016年10月23日開催の「教師教育フォーラム」のメインテーマは、「教職課程の質保証と実践的指導力の向上」。

午前の部は、文部科学省 初等中等教育局長の藤原誠氏による講演「3つの中教審答申と今後の教員養成」で始まりました。2015年12月の中央教育審議会の3つの答申の実現を強力に推進するための「『次世代の学校・地域』創生プラン(概要)」についての説明。さらに、子供たちが社会を生き抜くために必要な資質・能力を確実に備えることのできる学校教育を実現するための「新学習指導要領」のポイントと現状をふまえた3つの答申の具現化に向けての対応を話されました。

次は、小原芳明学長によるショートレクチャー「教員の資質能力の向上(答申)に向けた大学の教員養成」です。「学校教育が社会の変化とともに変化するように、その重要な柱を担う教員を養成する大学の教育改革も必要」とし、「教員養成を実践する私立大学として『教職課程のコアカリキュラム策定』『教員養成課程の可視化』が最重要課題」と話しました。

休憩をはさんで行われたのがシンポジウムで、テーマは「3つの答申をふまえた教員養成大学の果たす役割――養成・採用・研修の各段階との連携――」。シンポジスト、コーディネーターは以下の各氏です。

シンポジスト:
独立行政法人 教員研修センター理事・髙口努氏、千葉大学 特任教授・天笠茂氏、文部科学省 初等中等教育局教職員課長・佐藤光次郎氏、玉川大学教師教育リサーチセンター長 玉川大学大学院教育学研究科教授 教育学部教授・森山賢一
コーディネーター:
一般財団法人 学校教育研究所代表理事長・若月秀夫氏

若月秀夫氏

まず若月氏よりシンポジウムのスタートに先立ち、「昨年度末の答申をめぐり、いろいろな意見がある。その根底にあるのが社会の変化に対応していくために、学校はどのように準備をしなければならないのかと言うこと。社会との接点を持ちつつ、心理や福祉などの専門機関と連携するには『チーム学校』の発想が必要です。そのうえで教員にはどのような資質、能力が求められるか、それぞれの立場からお話をいただきます」とシンポジストの先生方に投げかけました。

髙口努氏

最初に、髙口努氏が教員研修に携わる立場として、「今後の教員に求められる資質・能力とは、『子どもの成長に関わる高度の専門性』と、『組織的対応力』であり、教員養成を実践する大学と自治体の教育委員会との連携・協働の深化が必要となる」と話し、「玉川大学と東京都稲城市教育委員会との先進的な取り組み」を例に挙げて語りました。まとめに大学と教育委員会とのさらなる連携・協働に向けて「養成・採用・研修の融合、授業研究をベースとした研修プログラムの作成・推進、データを基にした現状・課題の分析と改善方策の検討、管理職・ミドルリーダー等の養成」を提案しました。

次に、天笠茂氏は「教員養成・教職大学院のカリキュラム開発」をテーマに、個人的感想と前置きして「答申等から考える提言は、古くて新しい、新しくて古いテーマであり、どう前進させていくかが重要」と語り、「一つの起点となるのが、教職大学院のカリキュラム開発でこれを核にした教員育成、現職教員の研修の改革」としました。

佐藤氏は、行政側の立場から将来の学校教育を担う教員の資質能力の向上について、改革のポイントをキャリアステージから話をしました。その主なポイントに、「養成段階での学校インターンシップの導入、採用段階での県域を越えた共同採用選考に向けた研究開発、中堅段階ではミドルリーダー育成にシフト」を挙げました。また、国や県が整備することとして、教員育成指針・指標の作成、教職員定数の拡充、教員の資質向上に係る仕組みの整備に対しては指導教諭や指導主事の配置の充実などを挙げました。

天笠茂氏
佐藤光次郎氏
森山賢一(玉川大学)

そして、森山(玉川大学)からは、「教員養成の質向上に向けた玉川大学の取り組み」と題して、現在の玉川大学の取り組みを中心に「教員養成における単位の実質化への取り組み」「4年間を通した教職課程指導・支援体制」「教員養成の質保証に向けた教職課程の全学体制による組織の運営」の3点について話をしました。なかでも「4年間を通した~」については、学部・学科によっては教職課程の受講が2年次からであることが多く、1年間の空白はモチベーションの低下につながることから、4年間でのトータルな教職課程受講支援プログラムを構築し、実践していることを報告しました。また、「教員養成の質保証に向けた~」では、「教師教育リサーチセンターによる「全学の学生支援」と「教師教育学の研究活動」の両輪で運営していることを紹介しました。さらには、学外・学部内での教員養成評価への取り組み、大学院での教職課程の充実と課題を取り上げました。

最後にコーディネーターの若月氏が、養成に絞って養成機関への期待を先生方に求めました。「カリキュラムマネジメント力の育成を期待したい」(髙口氏)、「理論と実践の往還という言葉の実質化を追求すべき。とくに教職大学院における研究と実践の乖離は課題」(天笠氏)、「教員の資質向上に関する育成指標を議論する協議会で法改正がなされると各都道府県、政令都市の設置義務になる。養成サイドの大学と採用サイドの教育委員会とが一緒になった育成コミュニティで議論いただきたい。さらに研修については、共通理解のもとに研修計画に反映していけると望ましい」(佐藤氏)、「理論と実践の往還が一番大きなポイント。大学と教育委員会と各学校、つまり養成段階と研修段階とに図式化される。研究と研修を結合していくことで、大学の果たす役割は大きい」(玉川大学 森山)。そして、「理論と実践の往還に向けて、我々は努力をしていく必要がある」と若月氏が結び、シンポジウムは閉会となりました。

教科ごとに分科会を開催。ゲストスピーカーを中心にさまざまな形で実践的な取り組みについて交流する場となりました。

午後から、8つのテーマで分科会が開催されました。分科会のテーマは以下の通りです。

国語教育 「読みの交流 新時代」 道徳教育 「道徳の教科化は教員養成に何を求めるか?――学校における道徳教育の充実を目指して――」 理科 「生徒の興味と関心を引き出す理科実験の実践的指導法」 数学 「これからのプログラミング教育のあり方」 体育 「子どもの体力低下問題を解決する 学校体育の取り組み」 幼児教育 「幼児期の『考える』を考える」 美術 「美術教育における鑑賞と表現――子供の感性を引き出す言語活動を取り入れた焼きもの制作の事例紹介――」 国語 「グローバル社会における国語教育」

各分科会では、ゲストスピーカーによる話題提供、講話、ラウンドテーブルディスカッション、グループワークなど、さまざまな形で熱心な討議がなされ、実践的な指導力向上の場としてたいへん有意義な時間となりました。