2016年11月26日(土)、「第9回 玉川大学 国際バカロレア教育フォーラム」を開催しました。

2017.01.18

「第9回 玉川大学 国際バカロレア教育フォーラム」は、主催・玉川大学学術研究所K-16一貫教育研究センター、共催・国際バカロレア機構アジア太平洋地域事務局、後援・文部科学省で開催されました。会場は午前の部の講演会は昨年10月に利用開始となった「University Concert Hall 2016」の大ホールMarble、午後は7つの分科会を玉川学園高学年校舎・サイテックセンターで行いました。午前の部には200名を超える参加者があり、IBプログラムの導入を検討している全国各地の幼稚園から高校・大学、塾や幼児教室、IB保護者、教員志望の大学学部生や大学院生と多彩な方々が熱心に講演に聞き入り、分科会でも活気ある討議が続きました。

認定校の「講演」と「授業づくりの実践」を通して参加者と考えるIBの真髄

今年度のテーマは「学習コミュニティーの構築~一条校における国際バカロレア教育の推進~」です。学習コミュニティーとは、学習者が主体的に学び合う学習共同体であり、児童生徒だけでなく、教員にとっても専門分野の壁を越えて互いに学び合う場を日常的に提供し、新しい知を生み出す可能性をもちます。ただしその実行には、授業の構造化に加え、教員の協働性を長期的に持続させるサポート体制が不可欠となります。国際バカロレア機構は、「バカロレア認定校は、『専門性を高める学びのコミュニティー』が発展するような環境を支えるリーダーシップやマネジメントを奨励しなければならない」としていることから、今年度のテーマは「学習コミュニティーの構築」を中心に据えました。
そこで午前の部では、日本政府としてのIBプログラムへの取り組み、国際バカロレアのPYP、MYP、DPの認定校、IB教員養成の認定機関のそれぞれの取り組みと「学習コミュニティーの構築」に対する考え方について6つの講演から参加者の方々とともに考え、午後の部「IBにおける授業づくりと形成的評価」では各教科の先生方とともに授業づくりを実践しました。

フォーラムは小原芳明玉川大学長の挨拶に続き、文部科学省大臣官房 国際課 国際協力企画室・室長補佐の土田牧氏が挨拶に登壇しました。「本フォーラムの開催が9回目を迎えましたが、その間に日本におけるIBを取り巻く環境が大きく変わりました。2013年6月に閣議決定された『日本再興戦略』の中でIB認定校を2018年までに200校にする目標を立て、さまざまな取り組みを行っています。その成果は2016年11月現在、認定校、候補校などを含めると100校を超えています。これは文科省だけの力ではなく、玉川学園をはじめとした教育機関の先駆的な取り組みが日本中で評価されているからです。文科省としてもこれまでの玉川学園の取り組みに感謝申し上げます」

引き続き、土田氏の講演です。「教育の国際化及び教育改革~一条校におけるバカロレア教育への期待~」をテーマに、3つの目的に挙げた「21世紀の世界で求められている人材とは」、「国際バカロレア導入の目的」、「文部科学省の取り組み紹介」について話しました。「AIやIoT、ロボティクスなどイノベーションが飛躍的に進化する現代社会において、今の子供たちが未来でも活躍するためには、『我が国に永らく続いた学力観を転換し、成熟社会にふさわしい“真の学ぶ力”を育成・評価できるよう、抜本的な意識改革・制度改革を早急に図ることが必要(産業競争力会議資料より)』で、もっともふさわしいツールがIBであると考えます」と説明。国際バカロレア導入の目的は、「グローバル人材の育成」、「IB資格の国際的に通用する大学入学資格・IBスコアが世界共通の成績証明書であることから国内外への進路の多様化に対応できる国際的通用性」、「初等中等教育の質の向上や大学の国際化・活性化」であるとし、文部科学省は「日本語DP(日本語デュアルランゲージ・ディプロマ・プログラム)」、「学習指導要領との対応関係」、「教員の養成と確保」など、円滑かつ迅速な運用を目指して、特例措置等で対処し、今後もIBに関する広報・理解増進を進めて認定校・候補校の拡大に尽力することを強調しました。

PYP、MYP、DP各校の認定までの道のりと課題。玉川大学で実践するIBEC(国際バカロレア教員資格プログラム)とは

次は、岐阜市の「サニーサイドインターナショナルスクール」園長・渡辺寿之氏による「一条校におけるPYPの実践」の講演です。冒頭、「2012年12月に玉川大学で開催されたIBのワークショップに職員とともに参加したことから、本園の国際バカロレアの導入が始まりました」と語りました。少子化の影響による園児の減少など将来への展望が見出せない中、インスピレーションを求めて海外の教育施設を視察したところ、IBにふれ、驚きと感激から導入を決意。しかし、当時はIBへの認知度が低く警戒感から応募者数は半減し、その後も減少を続けて経営困難に。それでも導入に向けて職員のIB研修に費やしたと言います。
その後2013年9月にIB候補校に認定され、2016年1月には、念願かなって国内の幼稚園として初のIBワールドスクールPYP認定校になりました。日本政府主導でグローバル人材育成とIB教育の推進が広まるとともに、2017年度の園児募集では定員を上回り、岐阜県知事からも励ましの言葉があったというエピソードを披露。一条校としての同園の理念に、「日本人らしさを大切にしながら、探究心があり、優しく知的で国際感覚を兼ね備えたライフロングラーナーの育成に努めます」と掲げ、一条校でありながら一斉型・教師主導型では実現できない「個性を伸ばす・尊重する教育の実践」を進めていることを強調しました。現在は園児数約160名、日本人教諭15名、外国人教諭7名で運営。PYPとして大切なことは、「教師の育成・資質向上への惜しみない投資、在園時間中の学びに責任を持ち、園児も教員もともに学ぶLeaning Communityであり、カリキュラムの共同設計をし、保護者・地域・幅広いコミュニティーの中で共に学校教育を作っていくという意識を持ってすれば、より活気が出て楽しいものになるに違いないと考えています」と訴えました。

次は、東京学芸大学附属国際中等教育学校教諭・鮫島朋美氏の「一条校におけるMYPの実践」です。同校は2007年に開校した中高一貫校で、2010年にMYP認定校、2015年にDP認定校を取得。MYP認定校を契機に、2011年ユネスコスクール加盟校、2014年スーパーサイエンスハイスクール指定校、2015年スーパーグローバルハイスクール指定校も相次いで受けていますが、それぞれをつなぐ理念が「探究的で学際的な学び」と「目標・指導・評価の一体化」であるとしています。鮫島氏自身はMYPの理科を担当して9年、2016年度よりDPの化学も担当し、講演では「一教員であり、日々失敗を繰り返しながら生徒とともに学び合っている」と失敗談などを交えながら話しました。
「MYPには、生徒も教員も互いに学び合う場である学習コミュニティー構築のためのしかけがたくさんある」として、「『探究の問い』の設定」では実社会や実生活に関わる問題を取り上げて学習した実例や、「学際的単元の実施」で理科と社会の両面から学習するために「水俣病」を共通テーマとしてコンセプトマップを作成した事例などを紹介しました。

次は、沖縄尚学高等学校国際文化科学コース主任・IBDPコーディネーターのブースクリ悟子氏が登壇。「沖縄尚学高等学校におけるDPの実践」について話しました。同校は2013年5月に一条校における日本語Dual IBDPの紹介で導入を検討、9月候補校申請書提出、2014年3月候補校認定を受け、2015年2月認定校となり、同年4月から国際文化科学コースの希望者がIBDP一期生となって授業を開始。2016年11月には第1回目のIB外部試験を行っています。
「日本語Dual IBDPの導入により、生徒は母国語を基盤に深く学習でき、教師は日本語で授業ができ、教員確保が容易な利点がある一方で、日本語教材の不足や申請書類の英語での提出、IBDPと日本の高校教育課程との整合性のために文科省と密に連絡を取りながら教育課程を作っていく必要性がある」と話しました。また課題として、日本語での授業を増やすべきか減らすべきか、年間行事をどう変えるか、設備充実に向けての投資をどうすべきか、IB World校との交流をどのように行うべきかなどを挙げました。
また、IBDPでの学習コミュニティーの構築については、Group4(理科)における協働作業、TOK(Theory of Knowledge:知の理論)におけるプレゼンテーション、CAS(Creativity/Action/Service:創造性・活動・奉仕)活動について同校での実践例から示しました。

最後に登壇した、玉川大学学術研究所K-16一貫教育研究センターならびに教育研究科IB研究コース担当のカメダ・クインシー講師は、「一条校におけるIBEC(IB Educator Certificate:国際バカロレア教員資格プログラム)の実践」をテーマに話しました。本学は2012年にIBを実践するために「全人的な教員」の養成を始め、2014年にIBECに認定され、現在IBCTL(IB certificate in teaching and learning)プログラムとIBACTLR(IB advanced certificate in teaching and learning research)修士課程コースを開設しています。「IBACTLR修士課程コースでは、大学と同じ敷地内にある玉川学園がMYPとDPの認定校であるため、IB教員志願者はIB環境の研究実践者として教育研究プロセスを理解する機会を得ることができます」と説明しました。
また、本フォーラムにはIB導入を検討している教育機関の関係者の方々が多数参加されており、その方たちに向けて「どんなにすばらしく壮大な構想があっても、最終的な実現には講演者の方々のお話しの通り、大変な努力が必要です。玉川大学では、つねに学び続ける向上心を持ちながら教員という大変な仕事をこなせる人材を育成していくことを大きな目標としています」とまとめました。

午前の部の終了後は、参加者の方々が講演を務めた講師のもとに集まり、熱心に情報交換する様子がみられました。次回は2017年11月25日(土)に開催を予定しております。多くの皆さまのご参加をお待ちしています。