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体験型SSH特別講義 『顔認証技術の最前線 ~ 企業研究の現場から』を行いました

2017.02.01

2008(平成20)年度からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されている玉川学園。恵まれた教育環境と柔軟なプログラムで、SSHの理念・目的である「先進的な理数教育・科学技術教育を通じた将来の科学者の育成」の実現に向け、さまざまな取り組みを行っています。その一環として、企業の最先端技術に触れる体験型特別講義を毎年開催しています。今年度は、昨年12月2日(金)、日経サイエンス誌とセコム株式会社の協力で実施しました。

社会の動きとともに変化する”求められる先端技術”

当初50人の募集予定も、100人近く参加

この日の特別講義のテーマは「顔認証技術の最前線~企業研究の現場から」。セコム株式会社が開発した独自の顔認証技術を学びました。
高学年校舎多目的室には9年生から12年生の生徒100人近くが集まり、教室は熱気にあふれました。
まずはセコム株式会社の概要とともに、警備会社と最先端技術との関わりを学びました。セコム株式会社は、前回の東京オリンピック(1964年)の2年前に設立し、要人警護などオリンピックとともに成長した警備会社です。社会の情報化、高齢化が進む現在では、防犯面だけでなく人々の暮らしの安全安心が、防災や医療など多岐にわたって求められています。今回の顔認証技術というテーマもセコム株式会社が目指す「安全・安心に包まれた快適な社会」の実現に寄与する研究のひとつです。

1枚の顔画像から立体的な認証データを読み取る

講師の高田直幸さん

次にいよいよ顔認証技術について学びます。講師はセコム株式会社IS 研究所、ビジョンインテリジェンスディビジョンの研究員の高田直幸さんです。

「簡単に言うと、防犯カメラの画像を使って、誰がどこで何をしているかをセンシングする研究をしています。今日紹介するのは、この『誰が』を顔の画像を使って認証をする技術で、さまざまなサービスにも連携しています」。

セコム株式会社の顔認証システムはウォークスルーが特徴です。これまでの多くの顔認証システムは、カメラの前で一人ずつ立ち止まって認証しましたが、このシステムでは画面に映る人物すべてを、カメラの前で立ち止まることなく、歩いたままで一分間に60人を順次認証できます。そのため、オートロックの解除のための認証もスムーズです。
しかし、その認証には顔のさまざまな角度のデータが必要になります。

カメラでとらえた画像から
生徒の性別や特徴をコンピュータが判断
こちらのコーナーでは顔認証用の個人データを作成

セコム株式会社はカメラで撮影した顔画像から影の部分を読み取り、数式化することで、平面の顔画像からさまざまな角度の顔の画像データを登録する方法を開発しました。スクリーンには実際に正面を向いた講師の高田さんの顔の画像から、この方法で求められた違った角度の高田さんの顔が35通りも映し出されました。

教室の後方には、2つのデモンストレーションのコーナーが設けられました。「認識した顔の画像から、その人の性別や特徴を判断」し、その後「顔の画像を登録して、実際に顔認証」をします。生徒は自分の顔データを研究スタッフに登録してもらいます。そして、認証用のカメラに向かって歩いて行くと、「お疲れさまです。◎◎さん、××さん、△△さん。お入りください」とコンピュータが声をかけます。

教室の向かい側から歩いてくると手前のカメラで顔の画像を登録して、パソコンで認証。
「◎◎さん、お入りください」と音声が流れます。

認証され、自分の名前が呼ばれると、歓声をあげる生徒たち。
デモンストレーションの前に講師の高田さんは「新しいサービスを実現したり、人々の暮らしを豊かにするには、一つの技術、一人の力では難しく、技術や人の連携は不可欠です。画像監視技術にもプライバシーを守る技術にも、それぞれに専門家がいますが、連携してこそ人々に安心して使ってもらえるセキュリティーサービスが実現します」とチームワークの大切を語りました。そして自分の分野だけではなく、他の分野への好奇心、興味が新しい技術を生み出すと、話してくれました。

企業の先端研究から社会につながる何かを感じてほしい

SSHの担当主任であり、高学年の理科の担当でもある森研堂教諭は、「学校内で企業の生きた研究に接する機会は多くありません。この特別授業は、日常の基礎研究がどう社会に結びついているかを知るきっかけになると考えています」と、この特別講義の意義を説明します。

「2014年4月にオバマ前アメリカ大統領に面会した玉川ロボットチャレンジプロジェクトの生徒のひとりは、昨年のSSH特別講義の経験をきっかけに介護ロボットに興味を持ち、理工学部へ進学します。生徒には企業の先端技術や社会の変化に触れて、その中でいろいろ感じ、考えてもらいたいです。そして引き出しを増やしてほしいと願っています」。

デモ体験で身近になった最先端技術

「施設も恵まれていますが生徒さんも進んでいますね。開発言語の質問をされびっくりしました」と研究スタッフの皆さん

参加した生徒に特別授業の感想を聞いてみました。

「入国審査や海外のドラマで顔認証は知っていましたが、今日初めてその仕組みを知って、身近に感じることができました」(10年生女子)

「1枚の画像データから立体感のあるデータが生まれることに驚きました。顔認証は携帯電話にもあるので知っていましたが、自分の顔を実際にデータにしてもらい、さらに身近に感じました」(10年生女子)

「友達が住んでいるマンションのオートロックが目の虹彩で認証するので、こういう技術があることは知っていました。ウォークスルーの認証技術で、すぐに反応してくれるので便利だとは思いましたが、いつも居場所が分かってしまう可能性があることには、恐さを感じました」(10年生女子)

「僕は大学に進学して顔認証を研究したいと思っているので、今日のテーマには興味がありました。顔のデータを立体的に認識する方法では、自分の予想していた『影』が正解だったので、うれしかったです」(12年生男子)

技術への関心が芽生えた生徒、自分の持っている疑問を解決した生徒。顔認証技術に対する生徒たちの関心もさまざまですが、実際にデモンストレーションを体験して得た知識が、生徒たちの記憶に刻まれ、将来を考える選択肢やものごとへの取り組みの姿勢を知る手だてとなることを期待しています。

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